井上純弌
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井上 純弌(いのうえ じゅんいち、1970年 - )はイラストレーターとしても活躍するゲームデザイナー。同人活動でのペンネームは希有馬(けうま)。
オタク的サブカルチャーに対して、商業的収益性やトレンドなどの営業的視点に立った考察や作品制作が多く、その論考にも一定の支持がある。
また、近年では玩具プランナーとしての顔もある。同人ベースながらも本格的なフィギュア製作活動を行っており、中国の工場と業務提携して大量生産までしている。
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[編集] 代表作
代表作は『天羅万象』、『アルシャード』、『エンゼルギア』など。近年はファーイースト・アミューズメント・リサーチと組んだテーブルトークRPG(TRPG)のデザインが多い。
天羅万象はRPGマガジン誌上で世界観の紹介やリプレイなどが掲載され、同誌の1990年代中盤から後半にかけての看板作品の一つとなった。TRPGにおけるイラストレーションなどのビジュアル重視デザインの走りと言ってよい作品のひとつである。初代ギア・アンティークやワースブレイドにも似た重厚な画風と評価する声もある。
[編集] 作風
[編集] イラストレイターとして
天羅万象に提供したイラストなど、モンスターイラストと人物イラストの落差が激しく、描き込みの細かい画風を特徴とする。キャラクターを描いたイラストは好悪が二分され、RPGマガジン誌上でもその方向性が攻撃を受けることがあったが、醜怪かつ重厚なモンスターイラストは総じて評価が高い。 1996年から1997年にかけて展開された富士見書房ドラゴンマガジン誌の企画・ソード・ワールドRPGシアターでは連載期間中のイラストレーターを務め、モンスターイラストでのインパクトを見せ付けた。 モンスターイラストへの評価が目立つ井上であるが、キャラクターを描きつつも邪悪さや毒を滲ませることもこなしており、決してキャラクター画が不得意というわけではない。また漫画を描く際要所で止め絵的なコマを作ったり(RPGマガジン天羅セッションリポート漫画中の『地獄マスターとの再会』など)、ブログなどでは一コマ漫画的なイラストを描いて目を引くなど、見せる技法は卓越している。
[編集] ゲームデザイナーとして
ゲームデザイナーとしては、ルールブックのグラフィックデザインを最重要とする側面が強い。「いくら良いルールを作っても、それを伝えるルールブックがデザインされていないと意味がない」ということを持論にしており、自身がイラストレイターということもありグラフィカルなルールブックを作ることが多い。 デビュー作である『天羅万象』はそれが顕著にあらわれていて、「イラストの合間に文章がある」という絵本のような過激な構成をされた製品であった。奇妙奇天烈なガジェットがあふれる『天羅万象』の世界は文章では表現することができないことからの奇策だが、このデザインは功をなし、『天羅万象』のインパクトある世界観をユーザーに広く伝えることができた。
『アルシャード』ではスタンダードRPGを標榜したこともあって、インパクトよりもシンプルで使いやすいエディトリアルデザインを目指した。フォントサイズからミリ単位の文字間隔までこだわったデザインは高く評価され、後の多くのゲームに『アルシャード』のレイアウトが模倣されることになる。
また、ゲームをデザインするときは、アニメや映画の製作のようにイメージボードを多用してスタッフにイメージを伝えていることも特徴的である。
[編集] エピソード
- イベントなどでは、ファンや他の業界人に対して非常に攻撃的で過激な言動をすることで知られている。(もっとも本気で相手を攻撃しているのではなくプロレスのヒール的な役回りを好んで演じているだけなのだが)。井上のヒールとしてのアピールはテーブルトークRPGのファンの中では人気もあるが、人気と同じくらいに嫌っている者も多い。
- かつてはRPGマガジンなどの商業雑誌上でもヒールとしてのアピールを強く行っていた。しかし過激すぎるアピールが原因でF.E.A.R.社の菊池たけしとの間で深刻なトラブルが起こり、井上が菓子折りを持ってF.E.A.R.社に訪問し謝罪まで行うはめになった。
- 上記事件があった後も井上は反省のそぶりをあまり見せず(F.E.A.R.社提供のウェブラジオ「ふぃあ通」では謝罪のときに反省などしていなかったニュアンスを語っている)、F.E.A.R.社全体に対して過激なアピールを見せ始めるようになる。だが、F.E.A.R.社長の鈴吹太郎は井上の自社への批判をただの「ヒールとしてのネタ」としてだけではなく、ある程度の正当性を見出し、井上に強い興味を持つようになる。鈴吹は井上に自社を通じてゲームを出版することを打診し、以後、井上はF.E.A.R.と協力してゲーム製作を行うようになる。
- システムデザイナーの遠藤卓司とは学生時代からのゲーム仲間で、相棒のような存在である。遠藤は天羅万象の発売直後にF.E.A.R.の社員になったため、F.E.A.R.社と井上との関係が劣悪であるように見えた時期では「遠藤がF.E.A.R.に入ったため天羅の展開がもう進むことはない」というのがファンの間での一般的な見解だった。
- 学生時代はアニメの論考をテーマに精力的な同人活動を行っていたが、庵野秀明に論考は向いてないと言われてアニメ論考の同人活動はやめたらしい。しかし現在でも論考と薀蓄が好きなのは変わらないようで、商業誌の記事などで隙あらばペダンチックな論説を打とうとする。
- 同人作家としては「希有馬」のペンネームで活動。所属サークルは「希有馬屋」。現在では男性向け二次創作もの中心である。しかし井上の日常の状況をシニカルに描いた日記漫画もファンには人気がある。近年では自身のブログが彼の得意な日記漫画のノリで書かれることも多い。
- 2000年代に入ってからは同人フィギュアのプランナーとして積極的な活動をするようになった。中国の工場に完全受注生産で大量生産しており希有馬屋は同人フィギュア界では現在は大手サークルの一つである。もともとフィギュアには素人であったことが幸いして(もしくは災いして)、同人フィギュアの常識では考えられないような無茶な企画を立てることが多い。2007年冬には、当時の同人フィギュア界では破格のサイズである1/6スケ-ルで、さらに胸に特殊素材を使い「揉むとやわらかい」というフィギュアを発表し話題となった(なお、1/6スケ-ルでも当初の企画よりも小さめらしい)。同人ベースでは非常識な企画を通すために希有馬屋の同人フィギュア計画は毎回難航し、そのことが自身のブログなどのネタになっている。
- クリスチャンであり、神学に強い関心を持つ。
- 彼の論考好きと神学への傾倒が顕著に現れるのが自作のテーブルトークRPGでの「前書き」においてである。井上はどんなゲームであろうとも、そのゲームのテーマを「神の愛」に結び付けて前書きで熱く語る。中には新興宗教の教祖なみに電波系な内容が含まれてることもあるが、多くのファンはこの前書きを井上の「芸」として受け取っていてあまり本気にしてないようだ(井上自身も本気ではなく狙ってやっていると思われる)。ただ、”井上流”に免疫のない人はこの前書きの時点で激しく引いてしまう人も多い。
- 天敵は声優の小暮英麻。小暮と井上の奇縁はウェブラジオ「ふぃあ通」に井上がゲストで出演したときに、井上がデザインしたゲームである『エンゼルギア』の女性NPCを小暮が演じて愛のセリフを井上にささやいてあげるという超羞恥企画が発端である。このときに不覚にも本気で恥ずかしがってしまった井上に、小暮が蛇のように執拗にからかい続けたことが井上の人生最大の恥辱になってるらしい。当の小暮はそれを承知の上で今でもゲストやイベントなどで出会うたびに井上をいじり倒している。小暮がつけた井上の愛称「じゅんいっちゃん」は今ではファンの間でも広まっている。
[編集] 作品リスト
[編集] テーブルトークRPG
- 天羅万象
- 天羅万象・零
- テラ:ザ・ガンスリンガー
- 天羅WAR
- アルシャード
- アルシャード・フォルティッシモ
- アルシャードガイア(菊池たけしとの共作)
- エンゼルギア
- BEAST BIND 魔獣の絆 R.P.G
- BEAST BIND NEW TESTAMENT 新約・魔獣の絆
[編集] パソコンゲーム
- エンゼル・コア
[編集] リプレイ参加
- ビーストバインドNTリプレイ 別れの日は過ぎて(ビーストバインドNTサプリメント ビーストバインド・エヴァンシェル収録)(レヴィヤたん)
- アルシャードff・リプレイ オーディンの槍(ヴィオレット)
- アルシャードガイア・リプレイ 神薙ぐ御剣(宮沢竜一郎)