ソーホー (ニューヨーク)
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ソーホー(SoHo)は、ニューヨーク市のマンハッタン島南部(ダウンタウン)にある地域である。芸術家やデザイナーが多く住む町として知られていたが、近年は高感度な高級ブティック・レストラン街となっている。
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[編集] 場所
ソーホーの語源は、ハウストン通り(Houston Street:ヒューストンとは発音しない)の南側に位置する地区(South of Houston Street)、という意味である。(より早くから繁華街として有名だったロンドンのソーホーを意識してもいる。)範囲は、北はハウストン通り、東はバワリー通り、南はキャナル通り、西は六番街といった具合である。
さらに以下の地区と隣接する。
- 北:グリニッジ・ヴィレッジ(単にヴィレッジとも言う)とノーホー(NoHo、ハウストン通りの北にある倉庫街で同じく高級ブティック・レストラン街となった)
- 東:リトル・イタリー、ノリータ(NoLIta、North of Little ITaly), ロウワー・イースト・サイド
- 南:チャイナタウン
[編集] 概要
この地区は芸術家の町として1960年代から1970年代に掛けて知られるようになった。ソーホーには廃業した繊維・衣服工場や倉庫など、19世紀末に建てられたキャストアイアン建築(cast-iron、鋳鉄建築)が多く空いており、あまりにも賃料が安く、さらに天井も高くて窓が大きく明るい中で作品制作ができるため、第二次世界大戦後からお金のない芸術家やデザイナーたちのロフトやアトリエに転換されていった。(ロフトは本来居住目的には使用できず、ソーホーは住居地区でもないため、彼らの居住は本来は違法であった。)さらに彼らの集うレストランやギャラリー、ライブハウスができ、多くの歴史に残る個展や朗読会などが開かれていた。1980年代以降、高感度な地区としてヤッピーたちや観光客が集まるようになり、のどかな雰囲気は急速に失われていく。
ヤッピーや観光客相手の超高級レストランや高級ブランドの路面店が進出してくると、街はにぎやかになる一方喧騒がひどくなり、落ち着いて仕事や美術鑑賞のできる雰囲気ではなくなり、さらに致命的なことに地価が急騰した。やがて芸術家たちもギャラリーも、古くからの貧しい住民たちも、家賃が払えずもっと安い地区に追い出されてしまった。(ギャラリー街は主にチェルシー地区へ、芸術家やデザイナーらはその他ロウワー・イースト・サイド地区・トライベッカ地区・ノーホー地区・ノリータ地区・ハーレム地区へ移り、さらにそれらの地区も高級化してしまい現在はマンハッタンも出てブルックリンにまで移りつつある。)21世紀の今日、世間に広まったイメージに反してソーホーに芸術家はほとんど住んでおらず、金持ち相手のギャラリーやブティック、高いレストラン、若い高給ビジネスマンの住まいばかりの地区となった。
[編集] ジェントリフィケーション
ニューヨークではここ何十年かでおなじみになってしまったことだが、安い地区に若者が集まった後でそこが有名になり、地価が上がり、住民が追い出されて、最後には進出してきた高級店や高級アパートしか残らないといったジェントリフィケーション(高級化現象)が玉突き状に起こっている。
アメリカやヨーロッパにおいて、行政当局による老朽・貧困化したインナーシティの再開発のため、芸術・文化をきっかけにしたジェントリフィケーション(都心部の再生のための高級化)戦略をとることが多いが、往々にして地価高騰で追い出される古くからの住民や新しく住民になっていた移民と摩擦を起こすことが多い。その戦略のモデルや摩擦の原点は、おそらくニューヨークのソーホーにあると思われる。
[編集] 歴史地区
なお、ソーホー地区のグリーン・ストリート(Greene Street)には、1869年から1895年につくられたキャストアイアン建築群があり、市の歴史地区に指定されている。