ダイレクトドライブ
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ダイレクトドライブ (Direct drive) とは、電動機(モーター)の回転力を間接的機構(ギアボックスなど)を介さずに直接、駆動対象に伝達する方式、または機構である。
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[編集] 利点
- 高効率:損失、特にフリクションロス(ベルト、チェーン、歯車、減速機(ギアボックス)の摩擦による損失)を最小限にすることができる。
- 低騒音:シンプルな機構で、接触部が従来機構よりも減っている。これは、接触や振動を起こす部品が減っていることを意味し、その分の騒音を小さくすることができる。
- 長寿命・高信頼性:動作機構部品が減っているため、メンテナンスや交換の頻度が減り、故障頻度も低くなる。従来の方式、特にゴムベルトを使用しているものは寿命が短く、故障の原因になりがちである。このため、メンテナンスを定期的に行う必要があった。
- 低回転時でも高いトルクを得ることができる。
[編集] 欠点
この方式の主な欠点は、特別なモーターを必要とする点である。通常のモーターは、高回転時(たとえば、1,500-3,000rpm)に最も高いトルクを得られるように設計されており、たとえばファンなどには最適である。
レコードプレーヤーのターンテーブルではダイレクトドライブ方式が主流となりつつあるが、他の機械類と異なり、非常に低い回転速度(33と1/3・45・78rpm)を維持したまま、高いトルクかつ高い精度が必要となる(精度が得られない場合は、ジッタと言い、再生のスピードがぶれてしまう)。低い回転数をコンスタントに保つためのモーターは、高回転モーターに対して、物理的に大きくなってしまう。たとえば、ベルト駆動のターンテーブルに使用するモーターの直径は約2.5cmであるが、ダイレクトドライブ方式のモーターは直径約10cmとなる。
また、ダイレクトドライブ方式は、回転数を精密に制御する機構を必要とする。高回転モーターにおける低めの電圧変動は、従来の機構においては、回転数の変動は間接機構の介在(慣性など)により無視できる程度であるが、ダイレクトドライブ方式では回転速度に直接影響する。用途にもよるが、これを回避するためには、電圧管理を厳しくしたり、回転数センサーの精度を上げてフィードバックを行うなどの工夫が必要となる。
[編集] 用途
ダイレクトドライブ方式は、いくつかの製品で採用されている。
[編集] 高速用途
- ファン:さほど精度は必要ない。回転数はファンの用途(強制空冷や静音化など)によるが、概ね1,000-12,000rpm。
- ハードディスクドライブ:高い精度を必要とする。5,400・7,200・10,000・15,000rpmが主立ったものである。
- ビデオデッキのヘッド:高い精度を必要とする。NTSCでは1,800rpm、PALでは1,500rpm。
[編集] 中程度または回転数変動
- フロッピーディスクドライブや、それに類するステッピングモーターを使用する機器。
- CDプレーヤー:高精度、オーディオ用途では250-500回転まで変化、携帯用途(音飛び防止)やコンピュータ用(高速アクセス)ではもっと高速回転を行う。
- DVDプレーヤー
[編集] 低速用途
- レコードプレーヤー:高精度、33と1/3・45・78rpm。
[編集] その他
上記の他に、色々な分野でダイレクトドライブの採用がなされている。