歯車
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- 機械要素。本項目で扱う。
- 芥川龍之介の作品名。
歯車(はぐるま)は動力の伝達にもちいられる機械要素である。歯数のちがう歯車を組合せて減速や増速にもちいる。ベルトと異なりすべりが無いのでタイミング機構には不可欠である。歯車と軸をしっかり固定するためのキーを差し込む場所(キー溝)を設けたものがある。
歯数の組み合わせは自由であるが、大きな力を伝達するときや、滑らかさを必要とするときは歯数が互いに素でなければならない。要するに、いつも同じ歯同士が当たると、微小な傷が大きくなったり、特定の箇所で音が発生するからである。もちろん寿命が短くなることは言うまでもない。 互いに素である組み合わせを用いると全体が均一に磨耗し、歯当たりが滑らかになる。これを英語ではharmonic wearという。自動車の歯車、ぜんまい式掛時計の長針短針の関係を作る歯車(日の裏歯車という)を除くすべての歯車はこの組み合わせを採用している。
歯車の材質はなるべく異種の組み合わせが望ましい。同種の組み合わせは摩擦係数が大きいからである。また、小歯車は硬い材料にしておかないと先に磨耗する。
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[編集] 規格
歯車の計算には以下の規格が用いられる
- JGMA規格(社団法人日本歯車工業会)
- JIS規格(財団法人日本規格協会)
- ISO規格(国際標準化機構)
上記、規格は各団体で購入可能(3.は財団法人 日本規格協会でも購入可能)
[編集] 歯車の分類
- 平歯車
- インボリュート歯車
- 斜歯歯車(はす歯歯車)
- 歯が傾斜しているため回転軸方向に延長すると螺旋になる。多くの平歯車を少しずつずらして組み合わせたものと考えることができる。歯当たりが分散されるので音が静かである。
- スラストが発生するので、歯車の組み合わせ方を工夫して歯車装置の内部でスラストが打ち消しあうように設計するのが基本である。減速機構では原動機でのトルクは小さいので傾きを大きく、最終段ではトルクが大きいので傾きを小さくする。
- 山歯歯車
- 斜歯歯車を2ツ組み合わせた形をしている。斜歯歯車のスラストが発生するという問題を逆向きにも同じスラストを発生させ自動で打ち消しあう構造とすることで解決している。
- かさ歯車
- ラック
- ピニオン
- ウォーム歯車
- ねじ歯車(ウォーム)とそれに合うはす歯歯車(ウォームホィール)を組み合わせたもので、1段で大きな減速比が得られる。他の歯車機構に比べてバックラッシも小さくできる。一般的にはウォームの回転により「ウォームホィール」が回転する。しかしその逆も不可能ではない。ウォームのねじり角が安息角(摩擦角)より大きければ逆駆動は可能である。その要件として、
- 1.ウォームの径が小さいこと
- 2.ウォームの条数(ねじ山の本数)が多いこと
- 3.高性能な極圧潤滑材の使用
- ねじ歯車
- ハイボイド歯車
[編集] 歯車装置
歯車を複数用いて装置としたもの。
[編集] 波動歯車装置
もともとはハーモニックドライブシステム社の歯車装置である。サーキュラスプライン、ウェーブジェネレータ、フレックススプラインから構成される歯車装置であり、特徴として高減速比、軽量、コンパクト、バックラッシが少ないなどがある。これらの特徴によりほとんどのロボットに使用されている。
[編集] 関連用語
- ピッチ円:歯車のかみあう位置から、中心までの距離の2倍がピッチ円径である。
- モジュール (歯車):歯車の歯と歯の間の長さをピッチをいう。歯数をかければ、ピッチ円になる。
- クラウニング:歯車同士が噛み合っているとき、全体的になめらかさを出すことで相手の歯をしっかりかみ合わせることができる。このなめらかさを出すことをクラウニングという。
- バックラッシ
- スラスト
- ギアトレーン
[編集] シンボルとしての「歯車」
- さまざまな国家や企業(特に製造業)、団体の旗・記章等において、「工業」あるいは「労働者」を象徴する意匠として歯車が用いられている。
例:ミャンマー、アンゴラの国旗および国章、中国、ベトナム、イタリアの国章、日本共産党の党章、日本の五円硬貨等。
アンゴラの国旗 |
中華人民共和国の国章 |
イタリアの国章 |
五円硬貨の表には、歯車がデザインされている。 |
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- KHK Web Catalog -- 歯車のメーカ、歯車についての技術解説ページがある。