ティンパニ
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ティンパニ (timpani) は、打楽器の一種。主に銅製であり、半球形の胴体に脚がついた大型の太鼓で、皮が張られた上面を通常2本のマレット(ばち)で叩く。太鼓の一種であるが、通常の太鼓は非整数倍音成分が多く特定の音程を聴き取ることは困難であるのに対し、ティンパニでははっきり音程を聴き取れる点が通常の太鼓と異なる。
目次 |
[編集] 概要
音程の異なる複数個で使用されることが多く、単体で使われることは稀である。このため通常、複数形のtimpaniと呼称される。ちなみに、単数形はtimpanoとなる。なお、ティンパニ(timpani)の表記として、Tympaniと書く楽譜もあるが、これは間違いである。
複数のティンパニを並べて使う時は、それぞれ違う音程にチューニングしたものを用意する。かつては鼓面にネジが6個程度ついていたり、そのネジがチェーンで連動して音程を調節する仕組みだったが、現代のティンパニには大抵ペダルがついており、音程を調節しながら演奏することもできる。比較的編成の大きなオーケストラや吹奏楽で使われることが多い。
馬の胴の両脇に取り付ける楽器として発達し、15世紀のヨーロッパでは、トランペットと共に騎馬軍楽隊の楽器編成の中心に位置づけられた。
演奏の方式には、
- ギヤ方式(音域が一オクターヴだが、操作しにくい)
- クラッチ方式(音域が短7度で、より操作しやすい)
- バランス・アクション方式(音域が短6度程度で、一番操作が簡単だが、音程が狂いやすい)
がある。
ティンパニは、普通4台でS・M・L・LLがある。 セッティングの仕方としてまず、MとLの間に立ち、足を肩幅に開き、手はそのままで腰から上だけを回しSとLLがちょうど自分がたたく位置にくるようにする。最近では、座奏もよく見受けられる。これは、現代曲では多数の音程を必要とするため、音換えが頻繁になるのを合理化するためである。また、奏者の背丈にあわせ演奏しやすい高さにできるということから座奏を好む奏者も少なくない。
鼓面は従来は皮製であり、現在は樹脂製のものも多いが、音質は皮製がより優れている。撥は従来は木製だったが、現在はフェルトなどを巻いた異なる硬さの撥を数種類揃え、曲の表情によって撥を持ち替える事が一般的である。撥の選抜は古典曲では打楽器奏者が、場合によっては指揮者の指示や協議で決定するが、近代以降は「やわらかい撥で」などと作曲者によってすでに指定されていることも多い。
ティンパニ奏者は通常ティンパニのみを担当し、他の打楽器に持ち替えることは基本的にはない。現代音楽でもオーケストラ編成の曲はこれに順ずる用い方が好まれる。一方で室内管弦楽や打楽器アンサンブル編成の曲は、ティンパニ奏者が他の打楽器を持ち替え担当することもある。
2006年フジテレビ系で放送された月9ドラマ「のだめカンタービレ」の中でのキャラクター「奥山真澄」がオーケストラの演奏で使っていた影響で知名度が上がった楽器。
[編集] ティンパニのメーカー
- コールベルク(南ドイツの打楽器の総合メーカーで、主にギヤ方式だが、どんな注文にも応じる)
- ウォルフガング・チュスター(いわゆるウィーン式手締めパウケン)
- プレミア・ティンパニ(イギリスのクラッチ方式で価格が安い)
- ラディック・ティンパニ(アメリカのシカゴのバランス・アクション方式で有名。その傘下にあるギュンター・リンガーのギヤ方式は世界的に定評がある)
- アダムス・ティンパニ(オランダのメーカーで最高級品はギヤ方式)
- ヤマハ(基本的にバランスアクション方式、最高級品のものは、ギヤ方式)
- パール(バランスアクション方式)
- レフィーマ(ドイツの打楽器メーカー、ギヤ方式)
[編集] 譜面上の略記
Timp.(イタリア語) Timb.(フランス語) Pauk., Pk(ドイツ語) ※ケトルドラムと呼ぶ場合もある。
[編集] 特殊奏法
[編集] ティンパニのみを用いるもの
- 鼓面の中心を叩く
- 通常ティンパニ奏者は中心から離れた部分を叩くが、鼓面の中心を叩くことにより押さえ込まれて響きの止まった音が出る。
- 手でティンパニを叩く
- 鈍った野生的な音が得られる。
- スーパーボールでティンパニの鼓面を擦る
スーパーボールは小さなものや半分に切ったものを用い、串やピンを刺しておき、その串の部分を持って擦る。こすると唸り声のような低い連続的な音が鳴り、作曲者によっては「鯨の鳴き声」とも書いてある。このスーパーボールによる特殊奏法はティンパニに限らず大太鼓やタムタムでも可能。それぞれの楽器の共鳴による特殊な音色が得られる。
[編集] 他の打楽器と組み合わせるもの
- マラカスでティンパニを叩く
- 一人の奏者の演奏によりマラカスとティンパニの両方の音が得られる。ティンパニの音は若干鈍くなるが、効果的に使えば有効な奏法である。西村朗の『ティンパニ協奏曲』、『ファゴット協奏曲《タパス(熱)》』など。
- タンブリンをティンパニの上に乗せてティンパニを叩く
- 一人の奏者の演奏によりタンブリンとティンパニの両方の音が得られる。タンブリンには「脚」と呼ばれる突起がついている必要があり、無ければテープまたは絆創膏などで代用する。
- テンプルベル(鈴)やアンティークシンバルをペダル式ティンパニの上に置き、テンプルベルやアンティークシンバルを鳴らしながらティンパニのペダルを踏み替える
- ベルがティンパニの胴に共鳴し、ペダルを踏み替えることにより倍音のフォルマントが変化し非常に澄んだ神秘的な音が鳴る。アンティークシンバルよりもテンプルベルのほうが効果的であり、またどちらも低い音のほうがより豊かな共鳴が得られる。一台のティンパニの上にベルを複数載せることも可能。武満徹の『ウィンター』[1]、湯浅譲二の『相即相入 第二番』などで効果的に使われている。
- ^ 武満徹はティンパニをまったく使わない作曲家であり、ティンパニそのものの音を鳴らすことはほとんど無かった(例外として黒澤明に強制的に使用を求められた乱 (映画)のみ)が、この特殊奏法は気に入っており、小澤征爾との共著「音楽」(新潮文庫)ではメシアンの前でこれを説明したと書いている。
[編集] 打楽器以外の楽器と組み合わせるもの
- 共鳴の手段として用いる
- 声や金管楽器などをティンパニに向けて発音し共鳴させる。きちんとチューニングが合っていないと共鳴しない。
- 奏者がティンパニの中に飛び込む
- マウリシオ・カーゲルの『ティンパニ協奏曲』で使用。あるひとつのティンパニの鼓面をはずして替わりに紙を張り、そのティンパニは置くだけで演奏せず曲の最後に奏者が飛び込む。ある意味ティンパニ奏者にとって究極のパフォーマンスといえる。
[編集] 関連項目
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