ネイピア数
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ネイピア数 (Napier's constant) は数学定数の一つであり、自然対数の底として用いられる。対数の研究を行ったイギリスの数学者ジョン・ネイピアの名がつけられているが、ネイピアが発見したわけではない。文字eによる表記(立体文字)は、オイラーによるものである。オイラーは、eが、導関数がもとの関数と等しくなる特別な指数関数の底であること、かつ、1/xの積分として定義された自然対数の底でもあることを示した。従って一般には自然対数の底と呼ばれることが多い。その値は
- e = 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 …
と続く超越数である。オイラー数と呼ばれることもあるがオイラーの定数と勘違いされる場合もあり注意が必要である。
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[編集] 定義
よく用いられる定義をあげる。
[編集] 基本的な定義
- 右辺は、ヤコブ・ベルヌーイによって複利計算との関連で言及されたものである。オイラーは、導関数がもとの関数と等しい指数関数の底が、下の等式を変形することにより、上の等式の右辺によって求まることを示した。
- 本来 n は自然数として定義されるが、 n を実数としてとった極限も同じであり、適当に変数変換を行ったものを定義とすることもある。
- e = exp 1
- ln x = 1 となる正の実数 x を e と定義する。
- exp x は指数関数、 ln x は自然対数であり、互いに逆関数になっている。これらの関数はネイピア数 e を用いて定義することもあるが、その場合は定義が循環してしまうため上のようにネイピア数の定義に用いることはできない。しかし、これらの関数はネイピア数 e を用いない定義も多く知られており、それらの定義を通して、ネイピア数を定義することができるようになる。
[編集] 定義に用いられる諸公式
ネイピア数を定義するために用いられる指数関数や対数関数の性質・公式を挙げる。
- という初期値問題の解 y(x) によって exp x = y(x) が定義される。
これらの式と e = exp 1 などを組み合わせることでネイピア数が定義される。
[編集] 性質
- (C は積分定数)
となる。また、e を底にとった対数関数 logex (しばしば log x や ln x とも表す)の導関数は
となる。従ってまた
である。
e は無理数であるのみならず超越数でもある(1873年:シャルル・エルミート)。
e の複素冪は指数関数の解析接続によるものであるが、特に純虚数を指数とする冪はオイラーの公式として知られる関係式
- eix = cosx + isinx
を満たす。殊更に x = π (π は円周率)を代入して得られるオイラーの等式
- eiπ + 1 = 0
はネイピアの数を含む基本的な数学定数の間の、直観的にはまったく明らかではない関係を記述するものであり、ファインマンはこれをオイラーの宝石と評した。
- e = [2; 1, 2, 1, 1, 4, 1, 1, 6, 1, 1, 8, 1, 1, 10, ...]
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 数の泉(ネイピア数を100万桁まで掲載しているサイト)