ノキシノブ
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ノキシノブは、岩などに着生するシダの仲間である。葉はヤナギの葉のような単葉である。
[編集] 特徴
ノキシノブ(Lepisorus thunbergiana (Kasulf.) Ching)というのは、シダ植物門ウラボシ科ノキシノブ属に属するシダの一種である。また、ノキシノブ属の総称としても使われる。いずれも細長い単葉の葉をもつ着生植物である。
茎は短くて横に這って、表面には一面に鱗片があり、多数の細かい根を出して樹皮などに着生する。葉は茎から出て、全体に細長い単葉で、一般のシダの葉とは大きく異なる。形は柳の葉のような線形に近い楕円形。先端は細まり、少しとがる。基部は次第に細くなり、少しだけ葉柄が見られ、葉柄の部分は黒っぽくなって少し鱗片がある。葉は少し肉厚で、黄緑色、表面につやがない。乾燥した時には、葉は左右から裏側に向けて丸まる。
胞子のうは円形の集団となって葉裏にある。葉裏の主脈の両側にそれぞれ一列に並ぶ。丸く盛り上がって、葉からこぼれそうになることもある。
北海道南部以南の日本全土、朝鮮南部、中国、インドシナからフィリピンまで分布する。日本では低山帯の山林から人里までの樹木や岩の上などに着生する。名前は軒シノブで、軒下などにもはえ、シノブのように着生することから。都市でもちょっとした緑地には出現するし、庭木やお寺の石灯籠などにも見られることがよくある。
[編集] 利用
庭木の枝に着いたものや石垣に生えたものなどは風流がられて、駆除されることはないが、たいていは勝手に生えてくるから、あえて栽培されることもない。ただ、まれに葉に深い鋸歯状の突出が出る変異株があり、そのようなものは山野草の分野では珍重され、鉢植えにされる。
[編集] 近縁種
ノキシノブ属には、アジアの熱帯から温帯に約50種、日本には10種ばかり知られているが、皆全体の姿はよく似ている。
- ノキシノブ自身も分布が広くて変異が多く、以下の種はノキシノブに含まれるとも考えられているが、判断が分かれるところである。
- ナガオノキシノブ L. angustatus Ching
- ミカワノキシノブ L. mikawanus Kurata
- ヒロハノキシノブ L. suboligolepidus Ching
- ツクシノキシノブ L. tosaensis (Makino)は、別名をオナガウラボシとも言う。葉は幅が広く、胞子のう群が中肋寄りに着く。紀伊半島から四国、九州に分布し、山林内の渓流周辺に出る。
- ヒメノキシノブ L. onoei (Fr. et Sav.) Chingは、普通はやや小型で、根茎は長く横に這う。また、葉先が丸いのが特徴。北海道南部から九州まで、山林内の樹木などに見られる。
- ミヤマノキシノブ L. ueeuriensis (Regel et Maack) Ching var. distans (Makino) Tagawaは、やや大型で長い葉をもつ。南千島から九州にかけての山地に生育する。
他にも数種があり、ノキシノブの名を持たないコウラボシ(L. uchiyamae (Makino) H. Ito)やホテイシダ(L. annuifrons (Makino) Ching)などもあるが、いずれもよく似たもので、正確な同定には鱗片の様子などを見なければならない。
