ノンセクト・ラジカル
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ノンセクト・ラジカルとは、全共闘時代に成立した新左翼系の活動家やグループの名称。
「ノンセクト」は「(既存の)セクトに属していない・無党派」の意。「ラジカル」は「急進的」の意。(本来の意味は、ラディッシュと同語源の「根」から派生する「根底的・根源的」)
1960年代の大学闘争は、新左翼党派(セクト)が主導して進められたが、後半には一般学生を巻き込んで展開された。その過程において、問題意識を持った学生・市民が自発的に結集し、大学闘争を展開するグループが生まれていった。このようなグループはセクトとしては活動せず、全共闘運動として緩やかな結合をしながら運動を展開した。マルクス主義者は比較的少なく、アナキストやコミューン(市民)革命を目指す者が多かった。黒いヘルメットを着用することから、黒ヘルとも呼ばれる。日本共産党と日本民主青年同盟を強く批判するところに共通点があり、その点ではほかの新左翼諸派と変わりはない。
ノンセクト・ラジカル自身が一つの擬似党派化していると言われたり、あるいはリーダーシップの強い人物が指導者になって内部批判が難しいというような批判があった。
本質的には、国家権力はもちろん日本共産党やセクトをも含めた既存の権力に反発する者の集まりである。全共闘が組織横断的に拡大したのは、無党派の立場で運動に参加したノンセクトがセクト間の緩衝材として機能したからであるといえる。しかし、もとよりノンセクトには明確な理論や強固な組織があるわけではなく、中にはお祭り騒ぎ的に参加した者さえも存在する為、全共闘の背景にあるものは一枚岩ではなかった。
学生運動が下火になるにつれて、セクト間の対立が激化すると、既存のセクトに吸収されたり、党派活動家に転化したりする場合もあったが、多くは運動そのものから離れ、ノンセクトの運動は全共闘運動以降、縮小再生産の一途を辿っているといえる。