ハイカム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハイカムとは通常のカムプロフィールよりもバルブリフト、オーバーラップを大きくしたカムのことである。レース用に用いられる他、市販車においても可変バルブ機構によって通常カム、ハイカムを切り替えられるものもある。
[編集] 概要
4サイクル機関における、エンジンの高出力化を目的とした部品。レースにおいてハイカムの装着はエンジンチューニングでは定番とも言える。通常の公道仕様車のカムプロフィールに比べ、エンジン特性を高回転寄り(ピーキー)な物にする。
一般に装着するとオーバーラップとバルブリフト量の増大により給排気ポートを拡大したのと同等の効果が得られる。低回転域から中回転域でのトルクは弱くなるが、高回転域では性能が向上する。レース用ハイカムにおいてはアイドリングすらしなくなる事もある。この現象は主にシングルスロットル車に270度以上のカムを組み込んだ時に起こりやすい。実はアイドリングがおかしくなってしまうのはオーバーラップが大きすぎ、その関係でサージタンク内にエアが逆流してしまい、それが吸気干渉を引き起こし、トルクカーブが極端に落ち込むことによって起きている。そのため吸気干渉を防げる4連スロットルやキャブレター仕様ではIN側、EX側に288度のカムを装着しても簡単にアイドリングさせることが出来る。
アフターパーツとして各パーツメーカーから販売されているもの、またレーシングパーツとしてバルブスプリングなどをセットして販売しているものがある。
カワサキ・ニンジャZX-12Rの初期モデルのようにハイカムが標準搭載された車種もある(アイドリングするのは奇跡的であるとも言われる)。大出力かつピーキーなエンジン性能は、製造元の川崎重工にですら「万人向けではない」と言われた事もあり、後のモデルチェンジで一般的なカムプロフィールに変更された。
レースベース車ではハイカムはスペア部品と共に標準で装備されている。
[編集] チューニングの点からのハイカム
現在「タービン交換するよりも先に組んだほうが良い」と呼ばれているぐらいにホットな商品になっている。というのも、ここ数年「ノーマルエンジン対応」のハイカムが各社からリリースされたからである。今まではリセス加工済みのピストンにしか対応しない商品が多かったのだが、東名パワードのコンプリートエンジン発売と共にリリースされた「ポンカム」がその低速から立ち上がるトルクカーブ特性、そして専用コンピューターをセットで販売されたので、セッティングもいらないと大ヒット。各社もそれに追随するようにノーマルエンジン対応のハイカムを出すに至った。
もちろんパワー嗜好のユーザー向けにノーマルエンジン非対応の商品もリリースされている。非対応とはいえ、バルブスプリングの交換程度で済むカムもあれば、ピストンがリセス加工済みである事が条件であるもの、究極的にはヘッド側にカムが当たらないように切削加工が必要になるものまである。
基本的にはカム角が大きくなればなるほど高回転高パワー、小さければ低回転高トルクの仕様になると言われているが、ターボ車ではある程度の角度を選ばないと、加給された空気が上手く燃焼室内に入らないため、ブーストアップ~ポン付けタービンレベルでは256~264度がベストマッチだと言われている。