ハンディキャップ理論
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ハンディキャップ理論(Handicap theory)とは、1975年にイスラエル人の生物学者アモツ・ザハビ(Amotz Zahavi)によって提案された動物の個体が生存の可能性が減少するような形態や行動の理由を述べた理論である。
[編集] 例
典型的な例として挙げられるものとしてガゼルの行動がある。ガゼルが捕食者であるライオンやチータによって脅かされるとき、ガゼルはまず最初にゆっくり走り、非常に高く跳ねる行動を示す。動物学者は捕食者に見つかりやすくなるこの行動の理解に苦しみ、その行動は他のガゼルにチータの存在を知らせているかもしれないと考えていた。
しかし、ザハビは各々のガゼルが示すこの行動は、他の仲間より自分が健康で調子が良い個体であるということを捕食者に示し、捕食者がそれを追うことを避けなければならないようにするために行なっていると主張した。この主張は捕食者が健康な個体を追いかけることは、最終的には実を結ぶことのない追跡となり、無駄なエネルギーを避けようとする捕食者への回避になるというものである。捕食者であるチータは、ガゼルの行動から健康か健康でないかという情報を得て、捕獲する際の難易度を図らなければならないということである。良い調子のガゼルだけがチータにそのような利点を正確に伝えることができて、生き残るための優位性を得ることができると考えた。
この考えはチャールズ・ダーウィンの雌雄淘汰等の自然淘汰の理論の一般化と考えられ、その後、ゲーム理論におけるコンピューターシミュレーションによって証明された。また、生物学上の多くの他の例が提案されている。
進化生物学者であり作家のシャレド・ダイアモンド(Jared Diamond)は、人間の行動においても、例えば習慣性薬物やバンジージャンプがハンディキャップ理論に基づく進化した本能の表現である可能性を指摘している。