ゲーム理論
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ゲーム理論(ゲームりろん)とは、複数の主体の存在する状況下での意思決定について研究する、20世紀半ばに確立された数学の一分野であり、「理論」の名を冠してはいるが単一の理論ではなく通常学問の分野や研究のアプローチだとされる。経済学、オペレーションズリサーチ、経営学、心理学、生物学、社会学、法学、政治学、論理学などと密接な関わりを持つ。フォン・ノイマンによってミニマックス定理(ミニマックス法)が証明された事、ならびに1944年のフォン・ノイマン・モルゲンシュテルンによる著書『ゲームの理論と経済行動』(Theory of Games and Economic Behavior, 1944)をもって分野の本格的な始まりとすることが多い。
目次 |
[編集] 歴史
ノイマンが頭の中でチェスをしているときに着想したと言われる。理論自体はノイマンがある程度、構築していたが応用はされていなかった、その重要性をモルゲンシュテルンが見抜き共著『ゲームの理論と経済行動』が生まれた。しかしこの時はまだゲーム理論が爆発的に広まるには数学的に難しくそして使い勝手が悪かった、だが一部の慧眼を持つ数学的に洗練された若者であったゼルテン、ジョン・メイナード=スミス、ナッシュ、ハーサニー、オーマン、シェリング、シャプレー、ルービンシュタインなどを引きつけることとなる。これによりゲーム理論は非常に洗練され多くの学問に革命をもたらした。
[編集] 対象・研究
ゲーム理論の分析対象は、次のような状況である。
- 複数の行為主体が存在する
- 各行為主体は、各自の目的をもつ
- 各人の行動は、状況や相手に影響を与える
このような状況の例としては、将棋や囲碁、チェス、オセロなどのように複数のプレイヤーが一定の形式化された(従って数学的に記述可能な)ルールに従って目的達成を目指す遊びがある。ゲーム理論の名はここに由来する。
ゲーム理論の研究の目的には、例えば次のようなものがある。
- 特定の行為主体の最適戦略を探る。
- そのゲームが進行するとどのような帰結がありうるかについて探る。
- ゲームの望ましい帰結はどのようなものかを探る。
- 各行為主体が最適な戦略をとった場合にどのような結果になるかを予測する。
[編集] 分野・関連項目
- 展開型ゲーム
- 標準型ゲーム
- 提携型ゲーム
- 微分ゲーム
- 進化ゲーム
ゲーム理論のトピックス | |
定義 | 協力ゲーム - 非協力ゲーム |
均衡 | ナッシュ均衡 - 部分ゲーム完全均衡 - ベイジアン・ナッシュ均衡 - 逐次均衡 - 完全均衡 - 合理化可能性 - 進化的に安定な戦略 - パレート最適- 戦略的補完性 |
ゲームのクラス | 標準型ゲーム - 展開型ゲーム - 提携型ゲーム - 完全情報ゲーム - 不完全情報 - 繰り返しゲーム - ゼロ和 - 非ゼロ和 - 二人零和有限確定完全情報ゲーム |
ゲーム | 囚人のジレンマ - チキンゲーム - スタグハントゲーム |
理論 | ミニマックス法 - フォーク定理 - コアの極限定理 |
関連項目 | 数学 - 経済学 - 進化論 - 集団遺伝学 - オペレーションズリサーチ - 社会生物学- 環境社会学 |
[編集] ノーベル賞
ゲーム理論は、特に経済学において成功をおさめている。ゲーム理論の分野でノーベル経済学賞を受賞した学者や候補と目される学者は少なくない。
- 1994年にゲーム理論の理論的基礎を築いたとしてジョン・F・ナッシュ、ラインハルト・ゼルテン、ジョン・C・ハーサニーの3名。
- 2005年にゲーム理論の分析を通じて、対立と協力の理解を深めたとしてロバート・オーマンとトーマス・シェリングの2名。
また、ゲーム理論に強い影響を受けた分野としては、情報の非対称性をもつ市場の分析がある。この分野では、ジョージ・アカロフ、マイケル・スペンス、ジョセフ・スティグリッツの3名が、2001年にノーベル賞を受賞した。
[編集] 参考文献
- 岡田章『ゲーム理論』, 1996年, ISBN 4641067945
- 金子守『ゲ-ム理論と蒟蒻問答』, 2003年, ISBN 9784535552883
- Robert Axelrod, The Evolution of Cooperation, 1985, ISBN 0465021212(邦訳『つき合い方の科学』)
- Robert Axelrod, The Complexity of Cooperation: Agent-Based Models of Competition and Collaboration, 1997, ISBN 0691015678 (邦訳『対立と協調の科学』)
- Avinash K. Dixit, Susan Skeath, Games of Strategy, 1999, ISBN 0393974219
- Manfred Eigen, Ruthild Winkler, Das Spiel, 1976, ISBN 3492021514
- Shaun P. Hargreaves Heap, Yanis Varoufakis, Game Theory: A Critical Text, 2004, ISBN 0415250951
- Anthony Kelly, Decision Making Using Game Theory: An Introduction for Managers, 2003, ISBN 0521814626
- Welter Schlee, Einführung in die Spieltheorie, 2004, ISBN 3528032146
- Drew Fudenberg, Jean Tirole: Game Theory, 1991, ISBN 0262061414