バイリンガル教育
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バイリンガル教育(ばいりんがるきょういく、英語:Bilingual Education)とは、2つの異なる言語を用いて学校におけるすべての教科を教える教育方法。バイリンガル教育には、複数の形式が見られる。
- 「過渡的バイリンガル教育」は、多くは3年以内で修了する子どもの母語による教育であり、子どもが英語を学習する間に、数学、科学、社会などの教科での遅れが生じないように行われる。過渡的バイリンガル教育は、子どもたちを普通学級に組み入れることを目指している。つまり、できるだけ早急に、子どもを英語だけが用いられる授業を受けられるように教育する。よって英語の習得だけを目標としている。アメリカにおけるバイリンガル教育の圧倒多数を占めるのは、この過渡的な学習計画に基づくものである。
- 「双方向的バイリンガル教育」または「二言語同時バイリンガル教育」は、共通語を母語とする子ども、共通語を母語としない子ども、共に「2つの言語で意思疎通がとれる人間」(バイリンガル)、さらには「2つの言語において教養ある人間」(バイリタレット)となるように支援する。半数が共通語を母語とし、半数が「もう1つの言語(パートナー・ランゲージ)」を母語とする子どもが在籍すれば、理想的な環境と言える。アメリカにおいて、二言語同時教育はそれほど一般的に浸透しているとは言えない。しかしながら、この教育方法が子どもの効果的な英語学習であり、学校で英語を学ぶ子どもの長期的な成果を促進することを明らかにしている研究もある(Center for Applied Linguistics, 2005; Thomas & Collier, 1997; Lindholm-Leary, 2000)。
- 「二言語同時学習」は、バイリンガル教育におけるもっとも効果的な方法の1つである。そこには2つのやり方が存在する。(1)特別な訓練を受けたバイリンガル教師が、子どもの第2言語を用いて教科教育を行う。これを担当する教師は、子どもが彼(女)らの母語で質問しても理解することができるのだが、その回答は子どもの第2言語を用いて行う。(2)母語の読み書き教室を通して、子どもの第1言語における高度な言語運用能力を進歩させる。調査によれば、母語で学習された数多くの技能は、手早く第2言語に転移させることができる。このような教育方法では、母語教室では教科学習を行わない。第2言語を用いた授業では、文法の解説などは行われず、教科内容中心の構成となる。これにより、子どもはすべての教科内容を第2言語で学習することがきできるのである。
- 「長期母語教育(Late-Exit)/母語開発教育的バイリンガル教育」は、英語による指導を活用しながら、子どもの母語を長期的に保持していくことを目的とした教育方法。子どもが「2つの言語で意思疎通がとれる人間」や「2つの言語において教養ある人間」になることを目指す。この方式は、英語を母語としない子どもに有効である。但し、これもまた、アメリカでは、過渡的バイリンガル教育に比べると、一般的なものではない。