バベルの塔
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バベルの塔(ばべるのとう)は『旧約聖書』の『創世記』に出てくる伝説上の巨大な塔。古代メソポタミアの中心都市であったバビロン(アッカド語で「神の門」の意味)にあったといわれ、古代メソポタミアに多くみられたジッグラトという階段状の建造物だとも言われる。
実現不可能な天に届く塔を建設しようとして、崩れてしまったといわれることにちなんで、空想的で実現不可能な計画はバベルの塔ともいわれる。
西洋美術上の題材の一つであり、16世紀の画家ピーテル・ブリューゲルが描いた絵画が有名である。
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[編集] 聖書におけるバベルの塔
バベルの塔の記事は『旧約聖書』の『創世記』11章にあらわれる。位置的にはノアの物語のあとでアブラハムの物語の前に置かれている。そこで語られるのは以下のような物語である。
もともと人々は同じ1つの言葉を話していた。シンアルの野に集まった人々は、れんがとアスファルトを用いて天まで届く塔をつくってシェム(ヘブライ語、慣習で名と訳されている)を高くあげ、全地のおもてに散るのを免れようと考えた(偽典の『ヨベル書』によれば神はノアの息子たちに世界の各地を与え、そこに住むよう命じていた)。神はこの塔を見て、言葉が同じことが原因であると考え、人々に違う言葉を話させるようにした。このため、彼らは混乱し、世界各地へ散っていった(『創世記』の記述には「塔が崩された」などとはまったく書かれていないことに注意)。『創世記』の著者はバベルの塔の名前を、「混乱」を意味するバラルと関係付けて話を締めくくっている。
原初史といわれ、史実とは考えられないアブラハム以前の創世記の物語の中で、バベルの塔の物語は世界にさまざまな言語が存在する理由を説明するための物語であると考えられている。と、同時に人々が「石のかわりにれんがを、しっくいの代わりにアスファルトを」用いたという記述から、古代における技術革新について触れながらも、人間の技術の限界について語る意味があると考えられる。
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[編集] ラビの伝承
ラビ伝承によるとノアの子孫ニムロデ(ニムロド)王が、神に戦いを挑む目的があり、剣を持ち、天を威嚇する像を塔の頂上に建てたという。
[編集] タロットカードにおけるバベルの塔
タロットカードで最も悪い札とされる「XVI 塔」は、このバベルの塔がモチーフになっているという説がある。
[編集] フィクション等
- 1926年エリッヒオ・ポマー製作、フリッツ・ラング監督、ドイツ:ウーファー社の無声映画「メトロポリス」でラング監督は(原作者のテア・フォン・ハルボウはラング夫人)バベルの塔の寓話を象徴的にヒロインのマリアに語らせている。
- 地上と静止衛星との間を強靭な構造材で繋いで、宇宙へ上り下りできる軌道エレベータは、正に現代工学によるバベルの塔である。アーサー・C・クラークの「楽園の噴水(THE FOUNTAINS OF PARADISE)」など多くのフィクションに登場するのに加え、実現に向けて研究が進められている。
- ブラッドジャケット、ブライトライツ・ホーリーランドと続く、古橋秀之のSF小説。バベル型積層都市と呼ばれる、巨大な塔型の都市<ケイオス・ヘキサ>を舞台としている。「神(天)にいたる塔」という暗喩がこめられている。
- 2007年の新春スペシャルのタイトル。冒頭での語りや最後の杉下の話にも登場する。
[編集] 関連項目
- Wikipedia:バベル
- メタウィキメディアにおけるバベルの塔(m:Meta:Babel)はウィキペディアにおけるWikipedia:井戸端にあたる。ただし、多言語である。
- エ・テメン・アン・キ