フィナンシャル・タイムズ
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フィナンシャル・タイムズ (The Financial Times、FT) はイギリスで発行されている日刊新聞である。紙の色がサーモンピンクであることで有名である。出版社などを傘下に持つイギリスの複合メディア企業のピアソン PLCの傘下にある。経済新聞として定評が高く、ニュースの信頼性も高い。
本社はロンドンにあるが発行部数はイギリス国外の方が多い。
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[編集] 歴史
1888年1月9日、資本家で政治家だったホレイショ・ボトムリーによって「ロンドン・フィナンシャル・ガイド」として創刊された。1ヶ月余り経った同年2月13日に名を変え、現在のフィナンシャル・タイムズとなった。「正直な資本家と上品なブローカーの友」を謳い文句に、4ページの構成で発行されていた。その通り初期のFTはシティの金融関係者が主な読者層だった。
同時期、ロンドンではFTよりわずかに早く1884年、フィナンシャル・ニューズという金融情報紙が創刊されていた。フィナンシャル・ニューズは斬新かつ大胆な切り口の報道で知られ、これに対抗すべくFTは正確で信頼性のある「投資家のバイブル」を掲げ差別化を図った。現在でも有名なサーモンピンクの紙面も、この差別化の一貫として導入されたものである。
競合関係にあった2紙だが、1945年に合併し、名前には購買者数で先行していたFTが残った。一方でフィナンシャル・ニューズの多才な執筆陣も加わることとなり、ここで構成は6ページとなった。年を追って読者は増え、かつ多様になり、それに連れて扱うニュースの幅も広がっていった。経済のグローバリゼーションを反映して、世界各国の大都市への記者派遣・駐在を進めていった。
1979年、フランクフルトで初の国外版FTが印刷される。これ以降は単なるイギリスの新聞に留まらない国際的な経済紙としての性格を強め、現在は全世界22都市で発行されている。また、イギリス版の他に国際版として、ヨーロッパ版・アメリカ版・アジア版の3つの紙面が各地で発行されている。
特にヨーロッパ・ユーロ圏では初期からの取材拠点整備の結果、高い情報力とそれに伴う信頼を得ており、ヨーロッパ連合以下各国の政府機関や企業からも主要な情報源として活用されている。
アメリカ版は1997年から発行されているもので、ニューヨーク・シカゴ・ロサンゼルス・サンフランシスコ・ダラス・アトランタ・オーランドと首都ワシントンD.C.で印刷されている。年間発行部数は125,104部(2005年)。
2000年にはイギリスの新聞としては初めて、国内発行部数と海外発行部数が逆転した。同年からドイツ語版を発行しており、発行部数は9万部(2003年)。全世界での総発行部数は年間45万部、140ヶ国に160万人の読者を抱える。
[編集] 紙面
紙面は大きく分けて2つ、前半は国内・海外の社会や政治関係のニュース、後半は経済関係のニュースを掲載する。やはり後半の経済・金融・企業や市場関連のニュースは特に取り扱いが厚い。一方で国際報道も広く手がけ、在籍する475人の記者のうち110人は海外駐在である。
経済紙であるため、政治的には概ね中道であり、社説などの論調について左派・右派と言った指摘は特にはなされない。ただ、同じ経済紙のカテゴリーでは、グローバル資本主義や新自由主義を積極的に唱えるウォールストリート・ジャーナルに比べて左翼的だと見る向きもある。
マーガレット・サッチャー政権時代にはその主要な支持メディアであったが、労働党政権が自由経済を安定的に引き継いでいる近年はむしろ労働党寄りになってきている。特に最近は次期首相候補筆頭のゴードン・ブラウン財務相が贔屓であると言われる。
ヨーロッパ連合の拡大については肯定的な見方を示している。
[編集] FTグループ
週刊経済誌「エコノミスト」の株式を保有しているほか、フランスの経済紙「レ・エコ」を子会社に置き、ロシアの「ヴェドモスチ」紙と合弁事業を設立している。
ロンドン証券取引所の株価指数はFTSE 100と呼ばれ、FTSE社によって算出されているが、これはもともとFTとロンドン証券取引所(London Stock Exchange)の共同出資によって設立されたものだった。1995年に保有するFTSE株式を手放し、現在FTSEは独立企業となっている。