フォルクスワーゲン・タイプ2
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タイプ2はフォルクスワーゲンが製造する商用区分の自動車である。フォルクスワーゲン社のトランスポルター(Transporter)の第1世代(T1)、第2世代(T2)、第3世代(T3)にあたる。狭義ではトランスポルターの第1世代、第2世代を指す。当項ではトランスポルター全世代を俯瞰(ふかん)し、T4、T5の乗用モデル(カラベル、マルチバン)貨物モデル(トランスポルター)や日本T4バナゴン、北米T4ユーロバンについても触れている。また、それぞれの詳細は個別記事に記載する。
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[編集] 概要
タイプ2とは「2型」の意味で、フォルクスワーゲン社での型式表現である。ドイツ語ではテュープツバイ(Typ 2)でタイプ2はその英語訳で英語国で業界やユーザーが使用する愛称の一つ。ドイツおよびその周辺国ではBulli(ブリ:ブルドッグの意)の愛称で親しまれている。
カタログ名称は貨物仕様がVW Transporter(トランスポルター)、多人数乗用仕様はVW kleinbus(クレインブス:英語ではマイクロバス)、貨物仕様だが座席の付け外しができ乗用にもなるものはKombi(コンビ:米国でのステーションワゴンに対応する呼称)。これら全体を含む名称として英語由来のタイプ2が用いられる。日本では「ワーゲンバス」といわれる。
フォルクスワーゲン社ではT1からT5までを連続したシリーズ車として取り扱っており、その総称にはTransporterが使用されている。T3発表時に、フォルクスワーゲン社自身が過去にさかのぼり、世代区分を行い、Transporter(独トランスポルター、英トランスポーター)の第1世代、第2世代、第3世代、略してT1、T2、T3と各世代に対してネーミングを行うようになり、T5になった現在も引き続き使用されている。
早くから世界各国に輸出され、またメキシコ、ブラジル、オーストラリア、南アフリカなど各地での生産も開始された。これらの国々では、コンビ(KombiやCombi)が名称とされ、メキシコではコンビとは公共交通機関であるある種の民営バスを指し示す用語となって一般に普及している。
1960年代後半の米国のヒッピームーブメントの時代には、すでにその時点で中古で手に入れやすくなっていた初期型T1が若者たちに愛用され、また箱型のボディはキャンバスとなり、派手な色使いによるサイケデリックなペインティングにピースマークなどが描かれ、現在につづくワーゲンバスのイメージの一つの原点となっている。
近年のフォルクスワーゲンのブランド戦略においては、フォルクスワーゲン乗用車とは異なる「フォルクスワーゲン商用車部門(Volkswagen Nutzfahrzeuge、略してVWN)」としての取り扱いとなっている。
[編集] 歴史
[編集] T1(1950-1967年)
1950年にタイプ1(ビートル)をベースとするリアエンジン・リアドライブの自動車として登場。エンジンは空冷水平対向4気筒OHVを搭載した。当初1200ccで最高出力は25ps(19kw)だったが40ps(25kw)まで向上しており、1962年には1500ccも追加された。
ドイツでの製造は1967年に終了したが、ブラジルでは1975年まで製造されていた。
[編集] T2(1968-1979年)
1968年登場。エンジンは1600ccで最高出力は48ps(35kw)となり、1971年には50ps(37kw)となる。
このモデルよりフロントディスクブレーキが設定されている。
ドイツでの製造は1979年に終了している。ブラジルでは現在でも引き続きKombi(コンビ)の名で製造されているが、2006年からはトータルフレックス(TotalFlex)とフォルクスワーゲンが呼ぶエンジン技術の水冷エンジンを搭載し、エタノール100%でもガソリン100%でもまたいずれの混合でも走行可能なフロント部にラジエターをつけた顔の車両となっている。
[編集] T3(1979-1992年)
1979年登場。発売以前にFF化の噂がたえなかったが、労働組合の力のためRRが存続されたといわれている。型式は国際仕様となったVINに準拠し25となり(一部24)、そのため英国ではT25と呼ばれる。商用車ベースではあるが乗用仕様のモデルにカラベル(キャラベル船)の名前がつけられた。T3は当初空冷で販売され、後期モデルは水冷となった。日本ではヤナセが、カラベルの名称で乗用モデルを販売したが、1990年からフォルクスワーゲン社の直接販売を手がけるようになったフォルクスワーゲン アウディ 日本が、北米での名称バナゴン(Vanagon)の名で発売をおこないヤナセが撤退するまで競合した。バナゴンとはVan(バン)とWagon(ワゴン)の意味で、米国フォルクスワーゲン社でつけられた名前である。ドイツでの生産終了後、四輪駆動部分を担当していたオーストリアのスタイアー・ダイムラー・プフ社で四輪だけでなく二輪駆動の生産も継続され、LLE(Last Limited Edition)として限定販売された。
[編集] T4(1990-2003年)
1990年のドイツ再統一直前に発売。FF(フロントエンジンフロントドライブ)となりT4へモデルチェンジした。型式は70となり、2型ではなくなったが、欧州では引き続き同じシリーズとして取り扱われている。フォルクスワーゲン社がT1からT4、後述のT5までを取り扱う際のシリーズ全体の呼称は、Transporter(トランスポルター)が使用されている。前期モデル、後期モデルに分けられ、後期モデルでは乗用タイプに2800ccVR6エンジンを搭載しフロントノーズがわずかに長くなった。このエンジンは型番は別ものとされているが同時期のベンツV280にも使用されたもの。外見ではつり目タイプのヘッドライトで区別できる。
日本ではフォルクスワーゲン アウディ 日本はT4で唯一バナゴン(Vanagon)名を使用し乗用モデルのGL一種類のみでATモデルの一仕様のみで輸入販売したが後期型を発表せず1997年に輸入を終了した。日本ではこのタイミングでヨーロッパフォードとの共同開発車シャラン(フォードではギャラクシー)を発表しバナゴン後継として宣伝した。北米では、ユーロバン(EuroVan)として乗用モデルの一部およびキャンピングモデルのみが販売された。
[編集] T5(2003年-)
2003年にフルモデルチェンジをおこなった。T4を引き継いだデザインとなっている。販売車種としては、貨物モデルの「トランスポルター」、乗用モデルは「カラベル」「マルチバン」、キャンピングカーの「カリフォルニア」に分かれそれぞれ異なる車種としての取り扱いである。それぞれのモデルは細かい仕様レベルでのオーダーが可能となっておりバリエーションは大変幅広い。
たとえば、トランスポルターには、パネルバン仕様(カステンワーゲン)、貨物乗用共用仕様コンビ、ライトトラック仕様のプリッシェンワーゲン、多人数乗車シャトル、架装用シャーシモデルがある。ホイルベースの違いやルーフの高さなどからエンジンスペックまで細かい仕様が選択可能。
カラベルではエンジンはガソリンがV型6気筒3200ccと4気筒2000cc、ディーゼルが2500cc直噴ターボ(TDI)、1900ccTDIそれぞれ2つの出力で4種、全6種のバリエーションで設定されている。前輪駆動と四駆の4モーション。ホイルベースも3mと3.4mがある。
2003年の東京モーターショーでは右ハンドル・6速ATのオーストラリア仕様(マルチバン)が展示された。北米、日本では販売されていない。
[編集] 日本
日本では空冷ワーゲン車がブームとなりタイプ2も世界中から輸入されている。かなりの年月がすぎておりカスタムベース車としてこなれた価格となっていたタイプ2であったが、日本でのブーム再燃により特に米国でのタイプ2中古車の価格上昇を引き起こしている。
日本でのタイプ2ブームは同じRR駆動方式であるスバル・サンバーをベースにタイプ2を模したフロントマスクを装着したカスタムカー、ワーゲンバス仕様を日本で生み出すことになった。これは、世界のタイプ2好きにも知られるところとなっている。
[編集] 外部リンク
- フォルクスワーゲン商用車部門公式サイト:T5仕様のトランスポルター、カラベル、マルチバン、カリフォルニア
- フォルクスワーゲン・ブラジル:タイプ2ブラジル仕様
- フォルクスワーゲン・オーストラリア:オーストラリア仕様マルチバン