スバル・サンバー
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サンバー(Sambar)は、富士重工業の生産する軽自動車のうち、軽トラックとその派生形バン・ワゴン車のペットネームである。
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[編集] 概要
爾来モデルチェンジを繰り返しつつも、現行モデルに至るまでリアエンド床下にエンジンを搭載し、四輪独立懸架を用いている。積空差の大きい軽トラックにとっては、荷台の床下にあるエンジンは格好のバラスト役を果たすことから、空車時でも十全なトラクションが確保され、安定した走行、登坂能力を得ている。また一貫してキャブオーバー方式を用い、セミキャブオーバー方式の軽トラックが増加する中で荷台長の大きさを長所としている。
- サンバーは軽自動車専門の宅配便である「赤帽」で標準車として広く用いられているが、赤帽で使用されているモデルの大半はエンジンを常に酷使し長距離を走る為、耐久性重視の一般に販売していないカスタム化されたエンジンを搭載しており、20万km以上の走行でも特定のメンテナンスをするだけで走れる様に設計されている。なお、赤帽仕様車のエンジンはヘッドカバーに赤チヂミ塗装が施されており、一般のエンジンとは区別されている(ただし出力等のスペックに関しては一般のエンジンと同様)。その他、赤帽仕様オリジナルの装備もいくつか設定されている。
- 日本では珍しいスーパーチャージャー仕様も存在し、これは58PSを発生する。高速道路での走行も多い赤帽便用などに重用されている。スーパーチャージャーモデルは、軽トラックにしては大きな動力性能に加え、四輪独立懸架リアエンジン・リアドライブ(RR)形式の組み合わせを着目されて「農道のポルシェ」などと冗談混じりに評されることもあった(特に660cc化後は、ポルシェ911に似た排気音をたてる)。しかし、スズキ・エブリィ/キャリィ、ダイハツ・アトレー/ハイゼット等は後にセダン系と共通のインタークーラーターボエンジンに移行したのに対し、サンバーはエンジンルームの有効スペースの問題でインタークーラーの搭載ができず、水をあけられている(2006年現在)。
- スバルの軽トラということもあり、「走り」や「快適性」にこだわりが見える。昔から変わらないレイアウト、全車前輪ベンチレーテッド・ディスクブレーキ、4輪独立懸架、4気筒エンジンなどライバルに対しては「走り」や「積載時の凹凸路面での走破性や衝撃の少なさ」などの面では優位である。
- 2007年現在、スバルで使用されている最も古い商標であり、軽自動車の商標としてもダイハツ・ハイゼット(10代47年)に次いで2番目の長寿車種(6代46年)である。(国産自動車全体でも7番目に長寿)
[編集] 歴史
[編集] 初代(1961-1966年)
初代モデルはスバル360の開発者でもある富士重工業の百瀬晋六をチーフエンジニアとして、1961年に開発された。軽トラックとしては早い時期にキャブオーバーレイアウトを採用したモデルである。シャーシは一般的な梯子形フレームを用いているが、ドライブトレーンやサスペンションレイアウトは既存のスバル360の基本構成を流用し、リアエンジン方式、四輪独立懸架であった。デザインはバンパーからドア見切り線そしてホイールハウスに至るナックルラインが特徴で、その出っ張り具合から通称「クチビルサンバー」と呼ばれる。当初は低床2方開のみだったが、すぐに3ドアのライトバン、さらに二段広床式荷台(エンジンフードと面一のパネルをキャビン背後まで張り、高床3方開にした仕様。もともとの荷台部分は鍵付ロッカーとなる)など、バリエーションを広げる。日本車には珍しく、バックギアの位置が1速の横(左斜め上)にある。バックギアに入れ込む操作は独特のものがあり、初心者は練習する必要がある(不慣れな者が運転すると駐車場に入れることができなくなる)。なお、550cc化後の車両では他の日本車同様、バックギアの位置は4速の右になっている。リヤエンジンに低床2方開と、応用車種としてのワンボックスバンという展開は、似たようなレイアウトのフォルクスワーゲンタイプIIや競合車種であるくろがねベビーを意識していたのは明らかだ。1966年にはやはりサンバーとまったく同じレイアウトのマツダ・ボンゴが登場することになる。
[編集] 2代目(1966-1973年)
1966年登場。通称「ニューサンバー」。初代よりもすっきりとしたフロントマスクを採用し、デザインが洗練されている。オプションで前進6段・後進2段のオーバートップ付を選ぶこともできた。1968年には3段+オーバートップ付に変更される。1970年にはダミーグリルが装着され、エンジンもR-2用のリードバルブ付2サイクルに換装される。このモデルは通称「ババーンサンバー」と呼ばれる。インパネもR-2から流用したフルパッドの豪華なものになった。フロントドアの開き方がスーサイド式から通常の後ろ開きになったのもこのモデルから。さらに1972年に再度マイナーチェンジを受け、ダミーグリルが大型化。このモデルは通称「すとろんぐサンバー」と呼ばれるが、後期型R-2同様趣味の悪いデザインに変貌したために人気が一気に落ちた。
[編集] 3代目(1973-1982年)
1973年登場。宣伝コピーから「剛力サンバー」という通称で呼ばれる。初代以来の空冷エンジンから、前年にデビューしたレックスに搭載していた水冷エンジンに換装される。さらに1975年、長らく続いた2サイクルエンジンを捨て、4サイクル2気筒SOHCエンジンに積み替えられる。1976年、スバルにとって550cc規格は急だったため360cc用のボディにバンパーのみ延長させて、500ccのエンジンを積んだ。1977年、完全に新規格で550ccとなる。1980年には、より駆動力に優れた四輪駆動モデルが軽トラックおよび軽キャブバンとして初めて設定され、日常的に悪路や急勾配での走行を強いられる農業従事者から特に高い評価を受けた。以後競合他社も追随し、軽トラックや軽キャブバンにおける四輪駆動方式は常識化している。
[編集] 4代目(1982-1990年)
1982年登場。ワンボックスタイプが「サンバートライ」となる。軽トラックの4WDには超低速ギアのELが設定された。4輪独立懸架というサスペンションはこれまでどおりだがこの4代目からは4WD車のフロントサスペンションがこれまでのセミトレーリング式からマクファーソン・ストラット式(2WD車はセミトレーリングアーム式を継続)に変更された。タイヤは2WD全車が10インチ、4WD全車は12インチ(ただしブレーキは全車4輪ドラム)を採用する。
1987年のマイナーチェンジでは「サンバートライ」からハイルーフ下級モデル及び標準ルーフ車が「サンバーバン」として分離。スバルは4代目サンバーではワンボックスタイプ全てに「サンバートライ」の名を冠していたが、ここからは他社同様、RV志向のサンバートライと、純商用のサンバーバンという構成になる。また、トライの廉価版(RR駆動のFX)にはオートクラッチが用意されていた。ワンボックス軽自動車で2ペダル仕様はサンバーのみだったため、貴重な存在だったが、ほとんど市場に出回ることがなかった。 「サンバートライ」上位モデルに3バルブエンジン車(「サンバートラック」の上位モデルも)が登場。同時にフルタイム4WDが追加された。これに伴い4WD車は全てフロントブレーキがこれまでの2リーディング・ドラム式からベンチレーティッド・ディスク式(当時、軽トラおよび軽キャブバンとしては初搭載)に変更。なお、レックスに搭載されたEN05型4気筒SOHCエンジンの設定はなかった。
また、4代目をベースに1000cc3気筒SOHCエンジンを搭載したドミンゴが1983年に派生している。
[編集] 5代目(1990-1999年)
1990年登場。新規格で660ccとなる。サンバートライの上位グレードとして「ディアス」が登場したが、後にサンバートライに替わる正式名称としてサンバーディアスとなる。エンジンはレックス~ヴィヴィオと同じ4気筒「EN07」だが、スーパーチャージャー車はインタークーラーを省略し55psに落ち着いた。ブレーキは2WD車もフロント、ベンチレーテッド・ディスクブレーキに統一されフロントサスペンションは2WD車もマクファーソン・ストラット式に統一された。
また、1994年にドミンゴが同様のボディにフルモデルチェンジ。フロントノーズが再設計された先代とは異なり、まるっきりサンバーそっくりだった。
[編集] クラシック仕様
乗用ワゴンであるサンバーディアスシリーズには、1990年代の軽自動車における「クラシックカー風デザインブーム」の一となったディアスクラッシックが設定されている。そもそもは長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」向けに製作された特別仕様車が東京モーターショー(1993年)で展示され、この市販化を望む声が多かったことから設定されたモデルであるが、そのコンセプトを援用したヴィヴィオビストロがヒットした事により、他社でも多種のレトロ風モデルが発売されることになった。このクラシック仕様はのちにサンバートラックにも展開された。
[編集] 6代目(1999年-)
1999年登場。1998年度の軽自動車規格変更によって、ボディサイズが拡大した。
2002年マイナーチェンジ。フロントマスクのデザインを変更し、六連星エンブレムを再び装着した。
2005年まで筆頭株主だったゼネラルモータースの方針により、これを最後にスズキ・エブリィ/キャリィのOEMとなる事が濃厚であった。しかし、トラヴィックの失敗など、ゼネラルモータースとの協業は成功したとはいえず、富士重工業はゼネラルモータースグループから離脱して、現在、次期サンバーのプロジェクトが進行中である。
現在筆頭株主であるトヨタ自動車も同様に、傘下に別の軽メーカー(ダイハツ工業)を持っているが、多様なニーズにこたえるというトヨタの方針からか、スバルに普通車が多い為か、または富士重工自体が規模の大きい会社である為かスバルとトヨタ各社との軽統合は当分行わない方針である。
[編集] その他の特徴
リアエンジン車の特徴でエンジン位置が運転席から遠くエンジン音を置き去って走るため、静粛性は概して他社の軽トラックに勝ると言われる(特に4気筒エンジンを採用した5代目以降から)。搭載される4気筒エンジンは、同じくEN07を搭載する他車と比べても独特の音を発しており、エンジン音だけで「サンバー」とわかるほどである(特にAT車は3速の為に「引っ張る」ので強調される)。反面、トレッドの狭い軽自動車+横置きリアエンジンというスペースの制約を受けて、エンジン周りはややタイトなきらいがある。
また、一時期シフトショックの無いECVTのAT車がラインナップされていたが、貨物車としての信頼性や耐久性に難があるため、現在はトルクコンバータに置き換えられている。前述のスペースの問題および耐久性の問題により、昨今の軽自動車では一般的とされる4速ATは採用されておらず、スズキから供給される3速ATとなっている。NAエンジンのAT仕様の加速性能は4気筒のトルク不足ゆえに(ステラのNA・CVT仕様程ではないが)出足が遅く、MTを選択するのがベストと言える。AT車には小排気量車には珍しく「パワーモード」スイッチがあり、ONにすることでシフトアップする際の回転数が若干高くなる。
衝突安全基準の向上により、同種の他社の軽ワンボックス/軽トラックの多くがセミキャブオーバー型を採用しているのに対し、サンバーはワンボックス・トラックとも全てフルキャブオーバー型を採用している(スズキ・キャリィトラックは一部がフルキャブ型、ダイハツ・ハイゼットトラックは全てフルキャブ型)。このため、荷台(荷室長)を他社製品よりも大きく確保しており、ガラス屋や畳屋等が一般家庭に配達する際はサンバーでないと運べないというケースも少なくない。こうした理由も、赤帽等軽貨物事業者需要と併せてサンバーの『固定客』として根強い人気・需要があるといえる。
[編集] カスタムカー
サンバーをベースにしたカスタムカーが存在し、なかでもVWマイクロバス風(同車もリアエンジンである)に改造されたモデルは有名である[1]。これは5代目サンバーにフォルクスワーゲンタイプII風のフロントマスクを装着したモデルであり、スバルから新車で発売されているものではなく、ベース車を業者に持ち込み、キットを装着して2トーンカラーに塗り替えている。当然ベースのグレードや業者が多数存在するので同じワーゲンバス仕様でも異なるものが多く存在する。 また、メーカー系のスバルカスタマイズ工房がリリースした「サブロクサンバー web」も存在する。
一方、フィアット 500の外装を使い、中身はサンバーというクルマも存在し、エアコンやATが標準で装備されている。外部リンク
[編集] 登場する作品
- 『SIREN2』 異界に巻き込まれた主人公らが使用(3代目トラック)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- SUBARU-SAMBAR(スバル公式サイト)