プロテオバクテリア
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?プロテオバクテリア | ||||||
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![]() 大腸菌 |
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分類 | ||||||
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学名 | ||||||
Proteobacteria Garrity et al. 2005 |
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綱 | ||||||
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プロテオバクテリア門(Proteobacteria)は真正細菌の巨大な分類群である。大腸菌、サルモネラ、ビブリオ、ヘリコバクターなど多種多様な病原体が含まれている。また、窒素固定に関わる細菌など、自由生活性のものも多く含まれている。この分類群は基本的にはrRNA配列によって定義されており、その形態の多様性から、ギリシャ神話で姿を変幻自在に変える神プロテウスにちなんで名付けられている。
目次 |
[編集] 特徴
プロテオバクテリアは、主としてリポ多糖(LPS)から成る外膜を持ち、グラム陰性である。鞭毛によって動き回るものが多いが、不動性のものや、滑走性のものもある。滑走性のものとして、粘液細菌という集合して多細胞性の子実体を形成する独特な細菌が挙げられる。代謝型も多様である。ほとんどのものは通性嫌気性または偏性嫌気性で従属栄養性だが、例外も多い。様々な互いに縁遠い属が光合成を行うことができ、それらは赤い色をしているので紅色細菌と呼ばれている。
[編集] 下位分類
プロテオバクテリアはやはりrRNA配列に基づいて5つに大別され、ギリシャ文字のアルファからイプシロンで呼ばれている。これらは綱として取り扱われる。ガンマプロテオバクテリアはベータプロテオバクテリアに対して側系統的であることに注意が必要である。
[編集] アルファプロテオバクテリア綱
アルファプロテオバクテリアには光合成性の属の大部分と、それ以外にC1化合物を代謝する属、植物や動物の共生体(リゾビウム目など)、危険な病原体であるリケッチアなどが含まれている。さらに真核細胞のミトコンドリアはこのグループの細菌に由来していると考えられている(細胞内共生説を参照)。
[編集] ベータプロテオバクテリア綱
ベータプロテオバクテリアは好気性や通性の細菌からなり、それらはたいてい非常に多様な化合物を分解できるが、さらに化学合成無機栄養性(アンモニア酸化をするニトロソモナスなど)や、光合成性(RhodocyclusやRubrivivax属)のものも含まれている。ベータプロテオバクテリアはアンモニアを酸化して植物にとって重要な亜硝酸を生じ、様々な植物の窒素固定に重要な役割を演じている。その多くは下水や土壌といった環境試料に見付かる。この綱の病原体としては淋病や髄膜脳炎を起こすナイセリア科のものや、バークホルデリア属のものがある。
[編集] ガンマプロテオバクテリア綱
ガンマプロテオバクテリアは、腸内細菌科、ビブリオ科、シュードモナス科といった、医学的、科学的に重要な細菌群を含んでいる。非常に多くの重要な病原体がこの綱に所属しており、例えばサルモネラ(腸炎・腸チフス)、エルシニア(ペスト)、ビブリオ(コレラ)、緑膿菌(院内感染や嚢胞性線維症患者における肺感染症)などがある。
[編集] デルタプロテオバクテリア綱
デルタプロテオバクテリアは好気性の群や、子実体を作る粘液細菌、そして既知の硫酸還元細菌(デスルフォビブリオ, Desulfobacter, Desulfococcus, Desulfonemaなど)や硫黄還元細菌(Desulfuromonasなど)の大部分とその他様々な生理条件(三価鉄還元性のGeobacterや栄養共生性のPelobacterやSyntrophus)を好む偏性嫌気性の群からなる。
[編集] イプシロンプロテオバクテリア綱
イプシロンプロテオバクテリアには、Wolinella、ヘリコバクター、カンピロバクターといった湾曲ないしらせん形をしたわずか数属のみが含まれる。全てが人や動物の消化管に棲息している共生体(牛のWolinella)ないし病原体(胃のヘリコバクターや十二指腸のカンピロバクター)である。
[編集] 参考文献
- Madigan, Michael; Martinko, John (editors) (2005).Brock Biology of Microorganisms, 11th ed., Prentice Hall. ISBN 0-13-144329-1.