マクドナルド・コーヒー事件
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マクドナルド・コーヒー事件(-じけん)は、アメリカ合衆国ニューメキシコ州のマクドナルドで起きた事件と、その事件をめぐる裁判のこと。また、それらを包括した都市伝説も存在し、それも含めて事件とすることもある。
日本において「訴訟社会アメリカ」を語る際に良く用いられる例である。
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[編集] 事件の一部始終
1992年2月、ニューメキシコ州アルバカーキのマクドナルドで、Stella=Liebeck(当時79歳)とその孫がドライブ・スルーでテイクアウト用の朝食を購入した。リーベック婦人はその後、マクドナルドの駐車場で停車しているときにコーヒーを膝の間に挟み、ミルクとシュガーを入れるためにコーヒーの蓋を開けようとした。そのとき、誤ってカップが傾いてしまい、コーヒーがすべて女性の膝にこぼれた。
コーヒーは女性が着用していた服に染み込み、コーヒーの熱さに彼女は叫び声をあげた。運転していた孫は、最初はただコーヒーをこぼしただけと思っていたが、徐々にただ事ではないことに気付き、服を脱がせるなどの処置をして近くの病院へ向かった。直近の病院は満杯であったが、その次の病院は空いていたためリーベック婦人は収容され、第三度の火傷であると診察された。
[編集] 裁判とその判決
リーベック婦人は、自らの行為による自傷については認識していたが、しかし火傷の一因となったコーヒーの熱さは異常であり、この点についてマクドナルドは是正すべき義務があり、また治療費の一部を補償するべきであるとして訴訟を起こした。
評決の結果、
- 訴訟と同様のクレームが過去10年間に700件あったこと
- マクドナルドのコーヒーが客に提供される際の温度は華氏180~190度(摂氏約85度)だが、家庭用コーヒーメーカーのコーヒーは華氏158~168度(摂氏72度)であったこと
- コーヒーを渡す際、マクドナルドはなんら注意をせず、またカップの注意書きも見難いこと
を主な理由として、原告に20%、マクドナルドに80%の過失があるとした。その上で、填補賠償認定額20万ドルの80%にあたる16万ドルを本来の填補賠償額として、またマクドナルドのコーヒー売り上げ高の2日間分に相当する270万ドルを懲罰的損害賠償額として、それぞれ支払いを命じる評決が下された。
しかし、スコット判事は評決後手続で懲罰賠償額を填補賠償額の3倍に当たる48万ドルに減額を命じ、最終的にはマクドナルドが合計64万ドルの賠償金支払いを命じる判決が下された。
[編集] 都市伝説の真実
日本において、この事件は「コーヒーをこぼしただけで、裁判で3億円(当時の16万ドル+270万ドルの為替レートによる)賠償金を得た」というストーリーで知られており、訴訟大国アメリカを象徴するものとしてテレビ番組などで取り上げられた。しかし、原告が一方的に利となったかのような編成となることが多く、間違った印象を植えつけることにもなってしまった。
実際は、コーヒーをこぼしたリーベック婦人は皮膚移植手術を含む7日間の入院と、その後2年間の通院(このために娘は仕事を辞めて介護にあたった)、そして2千ドルの治療費を必要とした。治療が終わっても火傷は完全には癒えず、その痕が残った。
また、マクドナルドが裁判中に「10年間で700件というのは0に等しい」と発言するなど、裁判において陪審員の心象を損ねたこともマクドナルドの敗因と思われる。確かに、10年間に販売するコーヒーの数は、1日の売り上げが135万ドルという認定が正しいとすれば25億を超えるため、リスクマネジメントから考えれば700件は0に等しいというのは間違ってはいない。その上、他のコーヒーの温度に関する訴訟において、コーヒーの温度が高いほどドライブ中の保持温度が高くなり、ドライブ・スルーの本来の意義から言えば温度が高い場合の利点が大きいという結論も出ている。マクドナルドの敗因は、これらのことを理論立てて主張できなかったからとも思われる。
なお、当初この裁判はリーベック婦人とマクドナルドの間で争われていたが、そのときの婦人の要求額は2万ドルであった。マクドナルドは、このときリーベック婦人が求めていたコーヒーの熱さに対する対策と治療費の賠償のうち、治療費のみ3千ドルの賠償で済ませようとしたため、結局リーベック婦人は弁護士を雇い、結果として当初の額の32倍もの賠償をしなければならなくなったのである。
この事件の後、米国マクドナルドはコーヒーカップに「HOT! HOT! HOT!(熱い! 熱い! 熱い!)」と、またドライブ・スルーには「Coffee, tea, and hot chocolate are VERY HOT!(コーヒー、紅茶、ホットチョコレートはとても熱い!)」と、それぞれ表示するようになった。
[編集] 関連項目
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