ミスター高橋
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ミスター高橋(ミスターたかはし)は、日本の作家、小説家、元新日本プロレスレフェリー。本名:高橋輝男(たかはし てるお)。ニックネームは『ピーター』。
[編集] 概要
1941年、神奈川県横浜市に生まれる。元プロレスラー山本小鉄とは幼馴染。柔道三段、パワーリフティングヘビー級初代日本選手権者。プロレスラーとしてもアジア各地を転戦する。 1972年、レフェリー兼外国人レスラー担当として、草創期の新日本プロレスに入団。以来25年余にわたりメインレフェリーとしてアントニオ猪木らの試合を2万試合以上裁き、一時期はマッチメイカー、審判部長も務める。1998年、現役レフェリーを引退。のちに高校の体育教師となる。2000年前後からプロレス界の裏話を纏めた本(暴露本)を執筆している。最初は裏話を書いた程度だったが、次第に一般には知られていない(教えないようにしていた)内容まで書き、大きな波紋を投げかけた。
近年ではプロレスの裏側を題材にした小説『東京デンジャラスボーイ』シリーズなどを著している。
[編集] 暴露本についての評価など
著書『流血の魔術 最強の演技 ~すべてのプロレスはショーである~』(講談社)で、日本中のプロレスファンに衝撃を与えた。内容は過去のプロレスの試合などの裏話と(著者自身の推測も含む)、今後のプロレスのあり方についての著者自身の意見に二分される。プロレスの試合は原則としてすべて勝敗が事前に決定していること、レスラーにとって大切なのは強さではなく上手さであること、各レスラーの「最強」「凶悪」などといったイメージは作られたもの(演出)であること、流血場面はレフェリーやレスラー本人がカミソリで切っていることなどを、具体的なエピソードを挙げながら次々と暴露。プロレスファンが心の拠り所にしていた部分(あるいは、うすうす気づいていた部分)が全て種明かしされてしまった、とされる。このことがプロレスの人気低下に拍車をかけたとみる見解も存在する。
高橋の暴露本に対する批判的評価もあり、その一部を列記する。
- レフェリーとして現場を生で見てきた割には、過去の試合についての事実誤認が多いと評する者もいる。プロレスに詳しいファンが読めばわかるような初歩的なミスもあるとされる。また、自分自身の憶測に過ぎない事をさも本人が証言したかのように書いている部分も多い。
- 藤波辰爾に対しては、「悪いが強さという点では藤波さんは上には来ない。おそらく入門1年目の若手にも勝てないのではないか」といった形で、悪し様に書いている。猪木はともかく、藤波に対しては強い嫌悪感を抱いているのではないかとする見方もある。ただし前記のような「レスラーの強さ」に拘るのは皮相的であり、高橋が藤波の「試合運びのうまさ」についてたびたび記述していることから、必ずしも藤波ばかりを悪し様に書いているわけではない。高橋の著書「流血・・・」における最大の暴露の一つは「プロレスラーにとって最も大切なのは、強さではなく上手さ」という部分だからである。そう考えればむしろ高橋は藤波をほめていると見ることも可能である。また高橋は猪木の「弱さ」についても多く紙幅を割いている。
- 独善性を感じさせる主張が多い。「プロレスはすべて事前に仕掛けが仕組まれた見せ物である」ということを公開することによって、プロレスはスポーツではなくエンターテインメントとして再出発するべきだという(WWEを念頭に置いた主張と考えられる)。しかし、最近はともかく、新日本プロレスをはじめとして従来の日本のプロレスは、いかにも真剣勝負に見せて緊張感を生み出しているところに醍醐味があった。日本のプロレスは、ショー路線やシュートスタイルなど色々あるから楽しいという見解があり、新日本プロレスまでがそうなる必要はないという意見もある。また、「エンターテイメント性」が大事と主張しつつも、著書の末尾ではスポーツライクなスタイルのプロレスリング・ノアを賞賛していることから、論旨にいささかの矛盾があるという批判がある。
- 出版の動機は、高橋が「警備会社を作り、引退したレスラーの受け皿とする。新日本が全面的にバックアップする」という約束で退社したにも関わらず、その約束を反故にされた恨みということが噂されている(高橋本人は否定している)。また、気心の知れたレスラーに「私の本に対して反論しないか。そして一般誌上で論戦を繰り広げる。そうすれば私の本ももっと売れる。もちろん謝礼は出す。」と話を持ちかけていたことも一部で表面化した。また、新間寿が「高橋に何度も『公開討論会をやろう』と言っているのに返事をよこさない」と証言している。
- この本がプロレス業界に及ぼした影響は大きかったが、業界、プロレス雑誌、スポーツ新聞は軒並み黙殺した。例外的に現役選手ではウルティモ・ドラゴンが内容に疑義を呈する発言を出し、紙のプロレスRADICALが高橋本人に取材を行っている。また新間寿やターザン山本は一時期、高橋の本に対して頻繁に反論や批判を繰り返した。高橋の幼馴染だった山本小鉄は「リングの魂を金に替えたヤツを友人と思わない」と発言した。
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