ムスリム同胞団
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ムスリム同胞団( - どうほうだん、アラビア語 جماعة الإخوان المسلمي)は、エジプトのイスラム原理主義組織。事実上の最大野党。国家において、世俗法によってではなくイスラム法によって統治される、イスラム社会の確立を目標としている。
エジプト以外にも、アラブ各国にムスリム同胞団はあり、中東に広がる社会運動・宗教運動となっている。ハマスはアフマド・ヤースィーンが同胞団の闘争部門として結成したもの。
[編集] 概要
1928年、イスマイリアにおいて「イスラームのために奉仕するムスリムの同胞たち」として、ハサン・バンナーによって結成。1940年代に隆盛したが、ナセル政権の下で弾圧された。創設者のバンナーは1949年に秘密警察に暗殺されたほか、多くの指導者が投獄・処刑された。特に、西洋化を否定した過激派の先鋒サイイド・クトゥブ(1966年処刑)の思想(『クトゥブ主義』)は、その後のイスラム過激派の思想の原点となった。
この組織はイスラム主義の穏健派だがエジプトでは、宗教政党は禁止されているので、非合法化されている。そのため同胞団の団員は選挙の際無所属という形で立候補している。しかし、それでも歴代政権の下弾圧されてきた。一時はクトゥブ主義が広まりかけたが、同胞団はその排除に努める。その結果、サダト大統領を暗殺したジハード団、ルクソール事件を起こしたイスラム集団などの少数過激派が誕生してしまう。
しかし2005年11月~12月の選挙の際アメリカの中東民主化要求でホスニー・ムバーラク政権は弾圧をしなかった。その結果ムスリム同胞団系勢力は、民選の444議席(全454議席。残りの10議席は大統領任命)中88議席を獲得し、大躍進した。そのため与党国民民主党は議席が過半数を超えたものの、大きく減らしてしまった。