ヤクスト川
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ヤクスト川(ヤクストがわ、Jagst)は、ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州を流れる川で、全長203km、激しく蛇行してネッカー川右岸に注ぐ支流である。
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[編集] 地理
[編集] 水源
この川の水源は、オスタルプ郡ウンターシュナイトハイムのヴァルクスハイム地区のやや南西に位置する。
ここからヤクスト川はヴュルテンベルク地方北部を流れ下る。最初南西方向に流れた後、シュヴェービッシェ・アルプの北東麓に位置するラウフハイムを頂点として小さく右回りに半円を描く。ヴェストハウゼンでは、コッハー川とわずか4.3kmの距離で並行に流れるが、その後再び離れる。エルヴァンゲンの3km上流に洪水防止のための水量調整用貯水湖ブーフ湖がある。ここから川はホーヘンローハー平野をめざして北西に流れる。平野に出ると、最後に大きく弧を描いて蛇行をし、西に向かって流れる。クライルスハイムとヘッセナウの間は、狭い谷になっており、一定の流れになりにくい場所であり、川は右に左に向きを変えて蛇行を繰り返し、その攻撃斜面(凹岸側)は大変急勾配になっている。そこでは珍しい動植物が、価値の高い、人の踏み込みにくいビオトープを生成している。デルツバッハからドゥッテンベルクまで急な南斜面では一部ブドウ畑になっている場所もある。ほとんどは階段状で耕地整理のできない土地である。細分された急斜面のブドウ畑は、近年急速に減少しており、貴重なビオトープが形成されている。ヤクストハウゼンではヤクスト川はコッハー川に1.6kmまで接近する。
この川はバート・フリードリッヒスハレのヤクストフェルト地区でネッカー川に合流する。ヤクスト川の河口はバート・ヴィンプフェンの町の上流1kmの地点でもある。
[編集] 近接する川
ネッカー川上流側(南側)にわずか数kmのバート・フリードリッヒスハレのコンッヘンドルフ地区にコッハー川がネッカー側に注ぐ河口がある。両者は、50km以上の間を、1.6から10kmほどの距離を保って並行に流れており、「Zwillingsflüsse (双子の川)」と呼ばれることがある。
[編集] 風景
どちらの川もその渓谷は、特にサイクリングツアーの愛好者にとっては、魅力に富んでおり、シュヴェービッシェ・アルプからシュペッサルト山地やオーデンヴァルトの中低山地への移行する箇所にあたる、地質学的にも興味深い場所である。これらのシュヴェービッシュ=フレンキッシェ台地(標高約400m程度)は中生代初期の三畳紀のムシェルカルク質の土地である。
[編集] 環境
[編集] 動物相
ヤクスト川に沿った渓谷の階段状の斜面の森にはアオサギの繁殖コロニーが見られる。人の侵入に繰り返し妨害され、コロニーの位置は移動している。
カワセミは巣穴を掘るのに切り立った川岸を必要とするため、ヤクスト川を営巣地にしている。
デルツバッハではシュバシコウが毎年産卵しているのが観察される。
ドイツに生息する2種類のÖstlichen Grille(コオロギの仲間、Modicogryllus frontalis)の一つがデルツバッハとクラウトハイムの間の斜面に生息している。
数種のコウモリがヤクスト渓谷におり、巣を作っていることが証明されている。Eptesicus serotinus、Pipistrellus pipistrellus、Myotis myotisなどがいる。
[編集] 植物相
ヤクスト渓谷中流域には夏の乾燥に適応した典型的な植物相が見られる。チャボアザミ(Carlina acaulis)、リンドウの仲間(Gentiana cruciata)、ハクサンチドリの仲間(Orchis mascula)、セイヨウオキナグサ(Pulsatilla vulgaris)がある。森の中ではママコナの仲間(Melampyrum arvense)もそれほど珍しくない。森の中や周辺でもっとよく見られるのは、アルム(Arum)、キバナイチゲ(Anemone ranunculoides)、ヤブイチゲ(Anemone nemorosa)、ヘレボルスの仲間(Helleborus foetidus)であり、ここはこれら植物の主な分布域の東端にあたる。ヘレボルスの仲間Helleborus orientalisのかなり大きなコロニーは森にとって外来種が定着した物。Leucojum vernumもおそらく在来種ではない。特徴的なのはトモシリソウの仲間(Cochlearia pyrenaica)である。これは、バーデン=ヴュルテンベルク州北部ではヤクスト渓谷にしかない植物である。Orchis pallensはおそらく20世紀の初めに、カラフトアツモリソウ(Cypripedium calceolus)は1980年代の終わりにヤクスト渓谷中流域では絶滅してしまった。Orchis pallensは、近くの上流域に生息している。ヤクスト川の流れが緩やかなところでは、コウホネの仲間(Nuphar lutea)が生息している。流れが平らな箇所では、川いっぱいにカヤツリグサの仲間(Schoenoplectus lacustris)が生育している。
[編集] 建造物
- ホーヘンローヘ=ランゲンブルク家の居城である、ランゲンブルク城
- ウンターレーゲンバッハ教会の地下礼拝堂
- ヤクストハウゼンにあるゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンの城、ゲッツェンベルク城
- シェーンタール・ツィスターツイーエンサー修道院
- クラウトハイム城
- キルヒベルク・アン・デア・ヤクストの旧市街
- ホーヘバッハのユダヤ人墓地
- デルツバッハのザンクト・ヴェンデル・ツム・シュタイン礼拝堂
- レオフェルス城趾
[編集] 町
- 上流域
- ラウフハイム (Lauchheim)
- ヴェストハウゼン (Westhausen)
- エルヴァンゲン (Ellwangen)
- ヤクストツェル (Jagstzell)
- 中流域
- クライルスハイム (Crailsheim)
- キルヒベルク (Kirchberg)
- ゲーラブロン (Gerabronn (Hohenlohe))
- デルツバッハ (Dörzbach)
- 下流域
- クラウトハイム (Krautheim)
- ヤクストハウゼン (Jagsthausen):ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンの故地。
- ヴィッデルン (Widdern):バーデン=ヴュルテンベルク州で2番目に小さな町。
- メックミュール (Möckmühl):北側からゼックアハ側が合流してくる。鉄道が通じている。
- ノイデナウ (Neudenau):河口まで10km。