ヤップ州
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ヤップ州(Yap)はミクロネシア連邦に属する州で、西太平洋カロリン諸島にある島々。石の貨幣で有名であるヤップ島本島と、周辺の環礁、無人島群からなる。州都はヤップ島にあるコロニア(Colonia)。人口は約1万人。
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[編集] 地理
グアム島南西約800kmに位置し、約160,000平方kmに広がる4島と約130の環礁からなる。そのうち22島以外はすべて無人島である。サタワル島をはじめとする州の西側では伝統的な遠洋航海術(いわゆるスター・ナヴィゲーション)が現代まで継承されている、ヤップ島本島は79.5平方km。州全体では約102平方km。
[編集] 気候
11月~5月は北東から吹く貿易風の影響で雨が少なくなる。6月~10月は風が弱まり、湿度が上昇する。 年平均気温は28℃程度。年降水量は3000mm。
[編集] 経済
ほとんどが農業と漁業の自給である。タロイモの栽培も行われている。 コプラの生産や、衣服、バスケット、絵画・彫刻などの製造等の手工業が主産業。 近年では観光産業も発展し、スキューバダイビングなどを目当てに来る外国人対象のツアーが人気である。
[編集] 歴史
紀元前3500年以上前、インドネシア、フィリピン、ニューギニア、ソロモン諸島方面より木のカヌーで人類が航海し定住したとされている。古代ヤップ帝国の最盛期には人口5万人にもなったと言われる。
スペイン・ドイツ・日本・アメリカの占領統治を経て1986年に独立した。 日本統治時代(1914年~1945年)には日本語教育が行われた。その為、ある世代のヤップ人は日本語話者である。ただ、ヤップ人の対日感情はこの世代を含めて良いと言いうるものである。
[編集] 民族・言語
ヤップ語は東南アジアのマレー語などと関係が深いが、ニューギニアの影響も大きく受けている。ヤップ州の他の島々は風土の違いもあり(ヤップ島は火山島であるが、他の島々は珊瑚礁島である)、ヤップ本島とはまた違った文化を持つ。そのあたりの言語であるウリシ語(Ulithian)やウォレアイ語(Woleaian)などは、文化も含めてさらに南のチューク諸島のものに近い。
[編集] 石貨
巨大な石の貨幣(のようなもの)を用いていることで知られる。ただ、個々の石貨には(例えば1000ドル相当とか2000ドル相当というような)厳密に決められた価値が設定されているわけではないので、経済学的には石貨は貨幣とは見なさない。石貨の価値を決めるのは個々の石貨そのものの来歴であり、それを所有している者とそれを譲られる者の話し合いによって譲渡の条件が決定される。例えばこの石貨はサイズも大きく、西洋人が来る前からヤップにあったので極めて価値が高いから、あのパンの木の大木何本と交換しよう、というような条件である。であるから、石貨はむしろ極めて高価な骨董品と見なすべきである。
ヤップの石貨には、古代に石器で切り出してパラオから航海カヌーで運んで来たものと、19世紀にオキーフというアイルランド系アメリカ人が鉄器で切り出して機帆船で持ち込んだものがあり、前者のほうが価値が高いとされている。また1990年代に日本のNPO「アルバトロス・クラブ」がマウ・ピアイルックの協力を得てパラオから航海カヌーで石貨を運ぶ実験を行い、その時に運ばれた石貨をヤップの酋長に寄贈している。