ランチョンミート
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ランチョンミート(英:luncheon meat)は、肉の缶詰のひとつ。別名は「ソーセージミート」。
[編集] 概要
普通の肉類缶詰では、別途加熱調理した肉類を缶詰加工することが多いが、ランチョンミートの場合、生で充てんした肉類を加熱殺菌と同時に調理するのが特徴。
豚肉と牛肉(まれに鶏肉)とラード(豚脂)、肉に対しておよそ2.5%の食塩、香辛料や調味料を細断機(カッター)にかけ、加熱せずに長方体型の缶(ランチョンミート缶)に脱気充てんする。
密封された缶詰は、340g入り缶の場合、116℃、65分間の加熱殺菌を施される。
ランチョンとは昼食の意味で、この種の缶詰ソーセージがしばしば昼食のメニューに用いられたことからランチョンミートの名が定着した。
5ミリぐらいの厚さに切ってフライパンでそのまま焼いたり、野菜炒めの具として用いられる。また、アメリカのハワイでは焼いたランチョンミートを丸めた御飯にのせて海苔で巻いたおにぎり(スパムむすび)がある。
この種の商品で最も有名なブランドは「SPAM」(スパム)である。詳しくはスパムの項を参照されたし。
日本では、沖縄県で「ポーク」と呼ばれて多用される。ゴーヤーチャンプルーなどの惣菜にはランチョンミートが使われることが多い。戦後食糧難のころ、豚肉の代用品として米軍経由で広まったとされる。それ以来、朝食のおかずにもポーク卵が多用されるなど、現代沖縄料理では欠かすことのできない食材となった。沖縄県で販売されている製品は、デンマーク製のものが多いが、最近は地元産の缶詰も出てきている。本土では、沖縄食材店や高級スーパーマーケットなどの店頭には並んでいるが、食材としてはまだ定着していない。なお、ポーク卵は大衆食堂の定番メニューにもなっている。
中華料理が基本の香港でも、ランチョンミートは「午餐肉」(ンーツァーンヨッ)と呼ばれてよく食べられており、これを使ったご飯もの、麺類、サンドイッチ、マカロニなどのメニューが茶餐廳という喫茶レストランにある。
[編集] 市場動向
かつては米軍が元となって日本(特に沖縄)や韓国などのアジア諸国にも利用する地域が増えた同食品だが、現在では幾つかのバリエーションも存在し、それらの愛好者も少なからずある模様である。
なおランチョンミートの市場の上ではデンマークのTULIP社が追い上げを見せていて、沖縄県内でもチューリップ社の製品とホーメル社の製品が混在して販売されている。なおTULIPの製品では香辛料を増量したりチーズ片の入った製品も存在するなど、バリエーションに富んでいる。ホーメル社の製品は減塩タイプや七面鳥風味、スモーク風味等で対抗している。現在の沖縄の家庭向けランチョンミート市場では豚肉加工品の輸出で知られたデンマークにあるTULIP社製品の方が優勢の模様である。
この他、アジアを中心に、中国の上海市、広東省、北京市、天津市産のものも広く流通している。中国製のものには、大口径の円筒形の缶のものもある。