スパム
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スパム
- SPAM: アメリカのHormel Foodsが販売するランチョンミートの缶詰。本項で詳述。
- spam: 受信者の意図を無視して送られて来る無差別大量一括送信メール(別名「迷惑メール」)の事を「スパム」("spam") と言う。スパム (メール)を参照。ニュースグループへの大量のマルチポスト・クロスポストのこともこの意味でスパムと呼ぶことがある。
スパム (SPAM) とは、アメリカのHormel Foods Corporationが販売するハムに似たランチョンミートの缶詰である。
この畜肉製品は1937年に誕生以降、欧米では一般的な食品として普及した。なおこの商品名は当初Hormel Spiced Ham(スパイスド・ハム)があったがインパクトに欠けるということで公募され、最初のSPと最後のAMをくっつけたSPAMが採用された。
日本国内でも沖縄を始めとする在日米軍基地周辺では比較的有名である。沖縄にはHormel社出資の沖縄ホーメル社がある。沖縄の家庭料理「ポーク卵」は薄切りにしたスパムを焼き、卵を添えたもの。現在では沖縄家庭料理においてこのスパムをはじめとするランチョンミートは欠かせない食材となっている。
日本では、わしたショップ等の沖縄物産店、韓国物産店、大型スーパー、アメ横あたりで入手可能である。 近年では一般小売店でも販売されている事が多い。
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世界各地のスパム事情
以下に世界各地におけるスパムに関係した事象を上げる。
- 米ミネソタ州のオースティンではSPAM Jamの愛称で知られた地方祭典があり、この中でパレードや景気付けに打ち上げられる花火と並んで、調理されたスパムは人気がある。
- なおHormel Foodsが誕生したオースティンにはスパム博物館がある。
- 米ハワイ州とグァムはスパム消費が最も激しい地域として知られている。薄切りにして焼かれ、飯の塊に海苔で留められた寿司ネタの玉子に似たスパムむすびはハワイ州において多くの人に愛好されている。
- 環太平洋地域のサイパン・フィリピンを含む南太平洋諸島においても、スパムは一定の需要がある。
- 第二次世界大戦中、連合国軍(ソビエト連邦を含む)に広く供給されたスパムではあるが、特に日常的に食べさせられた英国軍の兵士は、食べ飽きたスパムに対して嫌悪感すら抱いたため、いまだに英国内ではスパムに対して否定的な感情も存在する。(下記参照)
- 韓国のブデ(部隊)チゲは、鍋の材料に米軍払い下げのスパムを使ったのが始まりという説がある。
- ソ連軍へのスパム普及に関しては、米国が提供したスパムの配給にニキータ・フルシチョフが少なからぬ貢献を果たしたという。
- 1997年にセイヴ・フェリスが食品のスパムをモチーフとした「SPAM」という曲を発表している。
- スパムのファンには、1992年にイグ・ノーベル賞栄養学賞が授与された。
沖縄とスパム
沖縄とスパムの関係は、主に第二次世界大戦以降の米軍占領下(第二次世界大戦以降1972年まで)に始まる。元々沖縄には、豚肉を好んで利用する食文化があった訳だが、大戦末期において沖縄全土で戦闘が行われた結果、これら豚肉が手に入りにくくなった。しかし終戦直後には米国から沖縄住民に配給物資としてスパムが提供された他、在沖縄米軍の内部で消費していたスパムの一部が(保管期限切れの払い下げや物資横流し等で)市場に出回ったため、沖縄住民達はこれを消費した。
この時代、沖縄文化(チャンプルー文化とも)は少ない物資で旺盛な変革を見せ、沖縄駐留米軍から貪欲なまでに文化を吸収、従来からの沖縄文化にアメリカ文化を加えた現在の沖縄文化の基盤を形成した。この状況下に於いて沖縄の楽器である三線(さんしん)は、業務用の大型スパム缶の空き缶を利用して製作された「カンカラ三線」なる物もあったと言う。今日ではこのカンカラ三線が学校教育の場で利用されているとも言う。
今日に於いてはスパムを含むランチョンミートは沖縄家庭料理に欠かせない味として愛好され、様々な調理法が発達している。また沖縄県内で飼育されたブタを加工して、「わしたポーク」の商品名で独自にランチョンミートの生産も行われている。それらに関してはランチョンミートの項を参照してもらいたい。
迷惑メールとスパム
このSPAMの商標をモンティ・パイソンの作品の中で、連呼するように使われてしまったことが由来と言われている。
これは同製品が比較的安価で賞味期限も長い事から、第二次世界大戦から朝鮮戦争・ベトナム戦争の時代を通して連合国軍や米軍内で標準的に食糧として利用された事に端を発すると言われている。この製品、決して不味い物ではない(それどころか愛好者も少なからずある人気商品である)のだが、非常に塩味が濃く、日常的に繰り返し食べていると流石に飽きてくる。しかし軍ではそればかりを供給してくる。しまいには兵士達は「昨日もスパム、今日もスパム、明日もスパム、来週になってもまだスパム…」等とぼやいたと言われている。
なおスパムの名誉のために言い添えるなら、第二次大戦を指揮した一人であるアイゼンハワー(元大統領)が同製品を「兵士の健康を維持し、飢えさせないよう戦った」と評して感謝状を贈っているという。
こうして軍役経験者らに「同じ味の繰り返し」の意味を指す隠語としても同商標が使われるようになってしまったという。なお初期の迷惑メール(当時はジャンクメールなる呼称も存在した)でも、一定の採取されたメールアドレスに同じ内容が繰り返し送信される傾向が強く、前出のモンティパイソンのコメディーに絡めて米国内のハッカーやコンピュータ技術者らが嫌味を込めてスパムメールと呼び始めたという。(ハッカー文化を参照されたし)
なおこの現象に対し、ホーメルフーズ側は「当社の商標はSPAMである」として、迷惑メールに関しては “spam” と小文字で表記する事を提案、自社サイト上で呼び掛けている。しかし同社は、商標名を社名や商品名に使用する事は容認しておらず、SpamArrest社(迷惑メール対策ソフトウェアを開発)を商標権侵害で訴えた。その一方、インターネット利用者の中にも「spamは食えない(面白みが無い)がSPAMはウマい!」等とする愛好者も現れるに至り、インターネット経由で愛好者を増やしたり、日本ではGeek(技術マニア)が秋葉原に行くついでに「アメ横でスパム缶を購入」が冗談用のスタイルとして派生している。
2004年4月1日には、技術情報関連ニュースサイトから個人情報が流出、7名にスパム(同製品)が宅配便で届けられるというニュース(勿論四月馬鹿のジョーク)が掲載されたりもしている。迷惑メールに関してのインターネット利用者らの反感は根強いが、本製品に関しては一定の(同情を含む)好意的な感情が存在する模様である。
関連項目
- レーション
- チャンプルー(代表的な沖縄料理で、今日ではランチョンミートが多用される)
- タコライス(沖縄料理だがタコが入っている訳ではなく、タコスが掛かっている)
- ブデ(部隊)チゲ(韓国のチゲ(鍋料理)の一種で、スパムなどのランチョンミートを必ず使用する)