リプレイ (小説)
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『リプレイ』はケン・グリムウッドにより1987年にアメリカで出版されたSF小説。記憶を持ったまま人生をやり直す男の話。1988年度の世界幻想文学大賞を受賞。
「記憶を持ったまま人生をやり直す」という発想は、ゲーテの『ファウスト』に影響を受けているものとおもわれる。実際、「リプレイ」においても「グレッチェン」という名前の娘が登場するが、これはファウストの恋人の名前(愛称がグレートヒェン)であり、作品内での人物の位置づけもある程度の類似性がある。ただ、「若返りと人生のやり直し」という基本設定は、時間を扱うSF作品ではごく一般的なものであり、オリジナル性を求める必要はないだろう。「グレッチェン」という名前も、ケン・グリムウッドがファウストに捧げたオマージュと思われる。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
リプレイは、ラジオ局ディレクターで経済的にも成功していない中年男のジェフ・ウィンストンが、1988年(43歳)に心臓発作で突然死を迎えた後、1963年(18歳)の時点までその後の25年間(ジェフが43歳になるまで)の人生を遡ってやり直し始めることから始まる。
彼は「未来の記憶」を存分に利用し、やり直しの人生(リプレイ)を謳歌するが、結局は同じ年・同じ時刻に死を迎え、人生のやり直しを強制再開させられる。このリプレイの繰り返しの中でジェフは自暴自棄と諦観に囚われるが、やがてリプレイ期間が次第に短くなり、究極の絶対死(リプレイの終了)が訪れることを知る。
果てしない人生を持ちながらも、やがては絶対死を迎えることを知った主人公は・・・
[編集] 登場人物
[編集] オリジナルの人生(リプレイ前)
- ジェフ・ウィンストン(主人公)
- ニューヨークにあるラジオ局のニュース部門担当ディレクター。1988年10月18日の午前1時06分に心臓発作で突然死する。
- リンダ・ウィンストン
- ジェフの妻。ジェフと恋愛結婚するが、子宮外妊娠をした後、子供を作れない身体になり、1988年時点ではジェフと疎遠になっている。
- ジュディ・ゴードン
- ジェフの学生時代の恋人。疎遠になり、その後は音信不通。
- マーティン・ベイリー
- ジェフの学生時代のルームメイトで親友。多額の慰謝料を伴う離婚の後に自殺。
- ※パメラ・フィリップス
- ジェフとは知り合っていない。二児の母。夫とは険悪ではないが、惰性で結婚生活が続いている。1988年10月18日の午前1時15分、ジェフの死亡から9分後に心臓発作で死亡。
[編集] リプレイ・1回目
- ジェフ・ウィンストン
- 巨大コングロマリット「未来社」の創業社長で経営者。
- ジュディ・ゴードン
- ジェフのリプレイ開始時点の恋人。リプレイ開始後、疎遠になりその後は消息不明。
- フランク・マードック
- ジェフの大学の上級生。やがて「未来社」創業時のパートナーとなる。
- リンダ
- ジェフのオリジナル人生の妻。今回のリプレイではジェフは接触に失敗し、そもそも付き合えず。他の男の妻となる。
- シャーラ・ベイカー
- ジェフの愛人。いわゆるベガス・ガールで、奔放な性格。
- ダイアン・ウィンストン
- 上流階級出身のジェフの妻。上流階級の思考に染まらないジェフとの関係は良好ではない。
- グレッチェン・ウィンストン
- ジェフとダイアンの娘。ピアノ演奏に天賦の才を持っている。
- ネルソン・ベネット
- 大統領暗殺犯。オリジナルの世界におけるオズワルドの役回り。
[編集] リプレイ・2回目
- ジェフ・ウィンストン
- 中堅の資産運用会社の経営者。堅実で健康的な生活を送る典型的な良きアメリカ人。
- ジュディ・ウィンストン
- ジェフの学生時代からの恋人で、そのまま結婚。性格は純真かつ温厚。ジェフの理想的な妻として堅実な人生を送る。子供が出来なかったため、ジェフに養子を取ることを提案する。
- エイプリル&ドゥエイン
- ジェフとジュディの養子。
[編集] リプレイ・3回目
- ジェフ・ウィンストン
- 賭けで財産を確保した後はドラッグに溺れ、パリを中心に放蕩生活。ある事件を契機に隠遁生活に入る。
- シャーラ・ベイカー
- ジェフの愛人で同棲相手。
- パメラ・フィリップス
- スーパーヒットした映画のプロデューサー。ジェフと知り合い、当初は意見の相違があったが、後に恋人となる。
- ジュディ
- ジェフの学生時代の恋人。ジェフと再会時に息子シーンを紹介する。
- シーン
- ジュディの息子。パメラの映画に影響を受け、海洋生物学者を志す。
[編集] リプレイ・4回目
- ジェフ・ウィンストン
- 堅実な投資を行なう事業者。
- パメラ・ウィンストン(パメラ・フィリップス)
- 高校を首席で卒業した後、ジェフと結婚。
- スチュアート・マカウワン
- 殺人鬼であり、精神を病んでいる。
[編集] リプレイ・5回目
- ジェフ・ウィンストン
- 裕福な市民。新聞広告で「予言」をし、自らの特殊性を証明した後、自身の謎について学術的解明を要求する。
- パメラ(パメラ・フィリップス)
- ジェフのパートナー。
- ラッセル・ヘッジズ
- 国務省の役人。ジェフ達を軟禁し、情報の提供を強要。
[編集] リプレイ・6回目
- ジェフ・ウィンストン
- ルポタージュのベストセラー作家。ピュリッツァー賞を受賞している。
- リンダ・ウィンストン
- ジェフの良き妻であり、ジェフを心より愛している。
- パメラ・ロビンソン(パメラ・フィリップス)
- 芸術家。本姓がロビンソン、ペンネームには旧姓のフィリップスを利用。
- スティーブ・ロビンソン
- パメラの夫。医師。
- クリストファー&キンバリー
- パメラとロビンソン氏との間に生まれたの息子と娘。
[編集] リプレイ・7回目
- ジェフ・ウィンストン
- 隠遁生活を送る資産家。グライダーの卓越した操縦技術を持つ。
- リンダ・ウィンストン
- ジェフの元妻。子宮外妊娠後(リプレイ前)にジェフと不仲になっていた。リプレイ開始直後に離婚。
- パメラ・フィリップス
- 元主婦。夫のロビンソンと離婚。前夫との二人の子供と共に、ジェフと同棲生活中。
- クリストファー&キンバリー
- パメラとロビンソン氏との間に生まれたの息子と娘。
[編集] リプレイ・8回目
- ジェフ・ウィンストン
- 妻との離婚後、ひっそり暮らしている投資家。既婚女性と不倫関係にあり、パトロン的立場。
- パメラ・ロビンソン
- 主婦。ジェフと知り合った後、不倫関係。ジェフの援助で美術学校に通う。
- パメラ(・フィリップス)
- パメラ。
[編集] リプレイ・9回目以降
- ジェフ・ウィンストン
- ニューヨークにあるラジオ局のニュース部門担当ディレクター。1988年10月18日の午前1時06分に心臓発作で突然死する。そして・・・
[編集] 受賞歴
1988年度 世界幻想文学大賞(World Fantasy Award)
[編集] SF作品としての評価
本作品は幾つかの推奨読書リストに入ったことがある。
- 「現代ファンタジー:小説ベスト100(Modern Fantasy: The Hundred Best Novels)」 (1988年)
- "Locus"(1988年)、(読者投票によるSF小説部門ベスト作品)
- オーレル・ギルメットの ("Aurel Guillemette's") 「ベストSF作品 (The Best in Science Fiction), 1993年」
- デビット・プリングルの(David Pringle's)「SF作品への究極ガイド(Ultimate Guide to Science Fiction)」(1995年)
[編集] 関連項目
- ケン・グリムウッド
- 未来の想い出
- リプレイJ - 本作が原案となった日本の漫画作品
- 君といた未来のために~I'll be back~ - 本作が原作となった日本のテレビドラマ
- 青春アドベンチャー - 本作をラジオドラマ化したNHK-FMのラジオ番組
カテゴリ: アメリカ合衆国の小説 | SF小説