ルートビア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ルートビア(root beer)とは、アルコールを含まない炭酸飲料の一種。商品としてのルートビアは、アメリカ合衆国において19世紀中頃に生まれたとされる。バニラや、桜などの樹皮、甘草の根、サルサパリラ(ユリ科の植物)の根、ナツメグ、アニス、糖蜜などのブレンドにより作られる。使用原料やその配分は厳密に決まっておらず、銘柄によって様々なアレンジが施されている。
目次 |
[編集] 歴史
かつてルートビアは、アメリカ合衆国において、家庭で作られる伝統的なハーブ飲料であった。2%前後の軽いアルコール分を含むこともあった。鎮咳消炎薬としても用いられた。商品として作られたルートビアは、1866年5月16日にチャールズ・エルマー・ハイアーが開発したものが最初とされる。ハイアーは1876年、フィラデルフィアにおける建国百年祭の展示で、ハーブや木の根、スパイスなどをブレンドした紅茶に入れるための粉末を発表した。1893年には、ハイアーは瓶詰めの炭酸飲料として、ルートビアを発売し始めた。
[編集] 各地のルートビア
[編集] アメリカ合衆国
アメリカ合衆国においてルートビアは、飲料市場3%のシェアを持っており、市民にとってなじみ深い飲み物であると言える。また、地ビールのように、地域独自の「地ルートビア」と呼ぶべきものも数多く販売されている。それほど一般的ではないが、自家製ルートビアも造られている。
地ルートビアや自家製ルートビアに使われる原材料としては、冒頭のものに加えて以下のようなものがある。
- スパイス類 - オールスパイス、コリアンダー、
- ハーブ類 - セイヨウネズ(ジュニパー)、トウリョクジュ(ウィンターグリーン)、甘松、ウメガサソウ、ホップ、クローバー、
- 木の皮など - カバノキ、シナモン、
- 木の根など - ショウガ、タンポポ、甘草
- その他 - メープルシロップ、ハチミツ
関連商品としては、ルートビア味のキャンディや、のど飴なども販売されている。また、ルートビアにアイスクリームを浮かべた「ルートビア・フロート」などのアレンジ飲料も広く飲まれている。
[編集] その他の地域
日本においては、アメリカによる長期にわたる占領の経験がある沖縄県や小笠原諸島ではよく飲まれるが(奄美諸島では未確認)、それ以外の地域ではあまり人気がない。リコリス菓子と同じ甘草の強い甘味と、湿布臭とも表現される独特の匂いが敬遠される理由のようだ。沖縄地域以外では輸入食品店や沖縄の商品を扱う店、物産展などごくわずか販売されるのみである。各地の米軍基地内の自動販売機には必ずと言っていいほど入っている為、施設開放イベント等で入場出来る機会がある際に入手する事も出来る。
沖縄県ではルートビアを扱うメーカー、A&Wの地元法人が経営するファーストフードチェーンが日本復帰前から展開されている。同チェーンでは店内での飲食の場合に限り、何杯でもお代わりして飲むことができる。かつて東京都や大阪府にもA&Wのチェーン店が現れたことがあったが、人気が出ず、すぐに撤退した。また、類似商品として、バニラを主原料にしたクリームソーダが各種メーカーから発売されている。こちらは、言われているような湿布臭はない。
東南アジアでは“Sarsaparilla”の呼称が一般的で、“Sarsi”、“SARS”(どちらもサーシ)、台湾では“沙士”(サース)と呼ぶが、過去に伝染病であるSARS(サース、重症急性呼吸器症候群)が流行したときに、この名称が混乱を拡大する原因にもなった。「沙士を飲むとSARSに罹りにくい」と言った冗談とも取れるうわさ話が当時の台湾で広がった。