ヴィブラフォン
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ヴィブラフォンは、ヴァイブラフォンないし略してヴァイブともいい、鉄琴の一種の打楽器である。
通常の鉄琴や木琴と同様、ピアノの鍵盤の順番に並べて置かれた音板をばち(マレット)で叩いて音を出す。普通用いられる鉄琴よりも大きく低い音の出る音板が用いられ、マリンバ同様の音板の下に共鳴管を並べる。共鳴管の上端に丸いはねを設置し、このはねを電気モーターによって回転させる。はねが回転しながら管の上端を閉じたり開いたりすることによって、振動の共鳴管への伝わり方が増減する。それによって共鳴管の共鳴量が変化し、音量が増減を繰り返す。それによって音のふるえ(ヴィブラート)を起こすのである。楽器の名称はここから来ている。
はねの回転の速度は変化させることができ、また、停止して演奏することもある。 音の余韻をコントロールするダンパーペダルによってロングトーンを演奏する事が可能で、マリンバや木琴と大きく異なる機能である。ヴィブラフォンがVibraphoneと呼ばれるのは、このロングトーンによる残響・共振(ヴァイブレーション)に起因するとも言われている。 ダンパーペダルを踏むと装置が離れ、離すと装置が音板に触れ、残響を停めるのである。
音色の変化ははねの回転速度の他に、マレットの材質(特に堅さ)や大きさ、叩く位置などによって得られる。はねの回転速度を遅くし大きめでややソフトなヘッドを持つマレットと、ハーフダンプリングを多用したミルト・ジャクソンの奏法などが知られる。
マレットは主として毛糸巻きのものが使われる。また、近年はダンパーペダルとマレットを使ったミュートを組み合わせたダンプリング(Dampening and/or Pedaling Techniques)が普及している。この奏法はゲイリー・バートンによって世界中に広められた。
ヴィブラートを使った奏者の代表としては、ライオネル・ハンプトン、ミルト・ジャクソン、国内では大井貴司等が広く知られている。ノン・ヴィブラート奏者の代表としては、ゲイリー・バートン、デイビッド・フリードマン、国内では赤松敏弘等が広く知られている。
ヴィブラートを使う奏者は左右に1本ずつのマレットを使う2マレット・スタイルが多く、ノン・ヴィブラートの奏者は片手に2本ずつの4マレット・スタイルが多いのも特徴と言える。
音域はF2-f5までの3オクターブだが、c2-c6の4オクターブのタイプもヤマハ、斉藤楽器、マーコン、ベルジュローが製造している。このタイプはオーケストラの中に滅多に現れないが、それでもハンス・ヴェルナー・ヘンツェのように4オクターブタイプを指定する作曲家もいる。
尚、Vibraharpというネーミングは足元のペダルの部分にハープの飾りを施した物があった為そのように呼ばれた時期があり(初期のムッサー社のカタログ等)、70年代にはビブラートを使わない奏者がアルバムクレジットに用いた事もある。 日本語の場合はviの発音表記の違いから、ヴィブラフォン、ヴァイブラフォン、ビブラフォン、ヴァイブ、バイブ、と表記が様々であるが統一はされていない。(一部吹奏楽関係等ではビブラと呼ばれている事もあるが正式な呼び名、印刷物には使われていない)
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[編集] 譜面上の略記
- Vib. Vibr. Vibraph. (Vibes) 等
略記に関してはヴィブラスラップと類似しているので注意が必要。
[編集] 歴史
1921年頃にアメリカの楽器メーカー、ディーガン社が開発した楽器がヴィブラフォンの誕生とされ、その直後に後の世界のスタンダード機種となる同じアメリカの楽器メーカー、ムッサー社も製造を始めた。
クラシック音楽では、アルバン・ベルクのオペラ『ヴォツェック』(1925年)の中で効果的に使用されたのが最初期の例である。
この楽器が最初にポピュラリティーを得たのは1930年代に録音された元ドラマーのライオネル・ハンプトンによる「Memories of You」からで、1947年に録音されたライオネル・ハンプトン・オールスターズの「スターダスト」はスイング・ジャズの傑作として有名。
1948年にアルバムデビューしたミルト・ジャクソンはハンプトンが齎したヴァイブラフォンの知名度を独特の音色(ゆったりしたビブラートを使ったもの)と雰囲気によってジャズのメイン・インストルメンツとして確立させた。1952年に参加したMJQ(モダンジャズクァルテット)での演奏は特に有名で世界中に今も多くのファンを持つ。また彼の演奏スタイルは後のヴィブラフォン奏者に多大な影響を残す。大きなヘッドを持つ独特のマレットを使った音色はジャズヴァイブの代名詞とされている。
1961年にアルバムデビューしたゲイリー・バートンは4本のマレットを使ったジャズヴァイブ奏法の創始者とされる。1967年よりジャズ&ロックの演奏で人気を博し、1970年代からはチック・コリア(p)とのデュエットや当時新人だったパット・メセニー(g)の自己のバンドへの起用など、コンテンポラリーなジャズヴァイブの開拓で知られる。1972年にコリアと録音した「クリスタル・サイレンス」の演奏はジャズに限らず現在でも世界中のマレット奏者に影響を与えている。
1940年代からジャズミュージシャンが中心となってヴィブラフォンの奏法開拓と普及に貢献しているが、近年になってクラシックのマリンバ奏者もヴィブラフォンをメイン・インストルメンツとして演奏の中で使うようになった。
[編集] 関連項目
[編集] ヴィブラフォン奏者
- ロイ・エアーズ [1] ROY AYERS -スタンダードからアシッドジャズまで
- ゲイリー・バートン GARY BURTON -世界を代表するヴァイブラフォン奏者
- デヴィッド・フリードマン[2] DAVID FRIEDMAN -Double Imageのヴァイビスト
- ライオネル・ハンプトン LIONEL HAMPTON -ジャズヴァイブの創始者
- ボビー・ハッチャーソン BOBBY HUTCHERSON -モーダル・ジャズヴァイブの革新者
- ミルト・ジャクソン MILT JACKSON -モダン・ジャズ・カルテットのヴァイヴ奏者
- ジョー・ロック[3] JOE LOCKE -NYを拠点に様々なシーンで活躍
- マイク・マイニエリ MIKE MAINIERI -ニューヨークを中心に活動するジャズ奏者
- デイヴ・サミュエルズ[4] DAVE SAMUELS -スパイロ・ジャイラのヴァイビスト
- 赤松敏弘 -日本を代表するヴァイブラフォン奏者
- 臼井麻意子[5] -サクラ・プロジェクトで活躍中のヴィブラフォン奏者
- 大井貴司[6] -日本が誇る世界的ヴィブラフォン奏者
- 香取良彦 -ジャズオーケストラを率いるヴァイブ奏者兼作曲家
- 齊藤易子[7] -北海道札幌市出身のマリンバ/ヴィブラフォン奏者。ドイツを中心に活躍中
- 宅間善之[8] -若手ヴァイブ奏者 父はさだまさしのサポートで有名な宅間久善
- 竹田直哉[9] -BeBop中心のヴィブラフォン奏者
- 出口辰治[10] -ラテン&スイングスタイルのヴァイブ奏者
- 浜田均[11] -ザ・フォース等の活躍で知られるヴァイブ奏者
- 藤井寛 -新主流派を代表するベテラン・ヴァイブ奏者
- 増田一郎 -ミルト・ジャクソンとも親交の深かったベテラン・ヴァイブ奏者
- 三村奈々恵 -世界的マリンバ/ヴィブラフォン奏者
- 山下真理[12] -中京地区を拠点に活躍中のマリンバ/ヴィブラフォン奏者
- 渡辺雅美(the fascinations)[13] -東京のクラブを中心に活躍するヴィブラフォン/マリンバ奏者