一線スルー
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一線スルー(いっせん―、もしくは一線スルー方式)は、鉄道の単線区間における行違い駅の線路配線と信号システムの一形態。
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概要
単線区間の駅や信号場で双方向の列車を行き違い(交換)させる際、従来は上り列車は上り主本線を、下り列車は下り主本線を走行していた。このため通過列車の速度を上げるには、上り主本線も下り主本線も同じように速度を上げることのできる両開き分岐(Y字分岐)を使うが、この分岐器では通過速度が25~90km/hに制限され、実際には制限速度45km/h前後の分岐器が設置されている駅が多い。そこで通過速度を上げる為、通過(スルー)する列車の走る線路を1線だけにし、その線路の分岐制限を上げることを言う。
通過列車の走る線路(上下主本線)は片開き分岐の直線側となることが多いが、駅前後に曲線制限などがある場合は曲線制限よりも分岐制限を上げる意味はなく、また線形上直線化が難しい場合もある。この場合は左右の分岐角の異なる振分け分岐の、分岐角の小さい側を上下主本線とすることもある。通過列車は分岐器制限の高い側を通行、待避する列車は分岐制限の低い側を通行する。交換列車がない場合は、停車列車でも分岐制限の高い側を通行するのが普通。従来は上り線には上り列車しか入れず、下り線には下り列車しか入れない信号システムの駅が多かったため、信号システムの改良が必要である。またこのような駅の場合はCTCでも上り線に入る列車は上り列車、下り線に入る列車は下り列車とみなしていたため、一線スルー化にあわせてどちらの線路にどの方向の列車が入っているかを識別する装置を設置する必要がある。
最近では片開き分岐器の直線側を制限速度無制限にする為、弾性分岐器が使用される例が多い。これは、一般の片開き分岐器の直線側制限速度は100km/hであり、20番両開き分岐器の制限速度90km/hと大差がない為である。なお、線路の配線(分岐器)は1線が直線となっていても、それが上下主本線ではなく、上り主本線と下り主本線がある場合は、1線スルーとは言わない。
例1
左側が1番線、右側が2番線である。列車の待ち合わせがない場合は、新津・新潟方面(下り)、五泉・津川方面(上り)とも1番線から発着する。また、快速「あがの」「SLばんえつ物語」などの通過列車も1番線を走行する。列車の行き違いがある場合は、時間帯に合わせて1番線・2番線を使い分けて入線させる。
例2
「以前の西佐川駅」の写真は、現在の写真を修整してY字分岐のイメージを再現している。西佐川駅の配線は、画面左から1番線(上り副本線)、2番線(上下本線)、3番線(下り副本線)となっていて、通票閉塞廃止時に2番線を通過線とする為、本線を2番線寄りに少し振って片開き分岐器を入れている。この結果、2番線の進入速度は従来の45km/hから、改修後は100km/hと大幅にアップした。尚、以前の進入速度45km/hというのは、通票閉塞を行っていた時代にタブレットの通過授受を行っていた時の速度でもある(四国ではタブレットキャッチャーを使用していたが、使用しない場合は、さらに速度制限を受ける)。
参考
一線スルー方式におけるプラットホームの形状・配置は問わないが、概ね島式ホーム(「プラットホーム」の記事における、配置の例 3-1′)が一般的な線路配置である。
JR東海でも、優等列車が高速で駅通過を行うための分岐器の改良を行っているが、両開き分岐器(Y字ポイント)を高速通過(110km/h)可能な型に取り換える方式を採用している。このため、通過列車でも駅構内は上下別線運行となっており、一線スルー方式は採用されていない。この改良は、高山本線で重点的に行われている。但し蘇原駅のように、一線スルーとなっている駅も存在する。
なおスピードアップの観点から、運転部門が一線スルー化を要請することもある。
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