不逮捕特権
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不逮捕特権(ふたいほとっけん)は、逮捕されない特権。
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[編集] 概説
[編集] 国会議員
日本では現職国会議員の場合、国会の会期中のみ(例外的に参議院の緊急集会)に認められていて、その間は逮捕されることはないが、現行犯の場合はこの限りではない。但し、司法官憲が議院に逮捕許諾請求をして、所属議院において逮捕許諾決議案が可決された場合、逮捕できる(日本国憲法第50条、国会法第33条、第34条)。また会期前に逮捕された議員は所属議院から釈放の決議がなされた場合、会期中は釈放しなければならない。
このような不逮捕特権があるのは、官憲による不当な逮捕、勾留によって議員活動が制限されるのを防止するためである(明治の頃は、反体制派の議員を微罪に託けて逮捕する事が度々あったという)。また、例えばある法案に賛成(反対)する議員を何か理由をつけて逮捕、勾留させ表決に参加させないことで賛成(反対)投票の絶対数を意図的に少なくするという、適切な民主主義が反映されない表決を防止する目的もある。
司法当局が逮捕状発付相当と判断した場合、内閣に逮捕許諾請求書を提出する。閣議決定を経て所属議院に許諾を求め、議院運営委員会(秘密会)で審査し採決する。その後で本会議で議決となる。
大日本帝国憲法下でも上記のような国会議員の不逮捕特権(議会開会中の議員の逮捕には特別な勅令を要した)はあったが、内乱罪と外患罪は現行犯でなくても議院の許可なく逮捕が可能であった。
日本国憲法下での国会本会議における逮捕許諾に関する決議は18例、許諾例は16例である。
議決日 | 議院 | 議員 | 容疑 | 可否 | その後 |
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1948年11月12日 | 参議院 | 玉屋喜章 | 業務上横領 | 許諾 | |
1948年12月6日 | 衆議院 | 芦田均 | 収賄 | 許諾 | 無罪 |
1948年12月6日 | 衆議院 | 北浦圭太郎 | 贈賄 | 許諾 | |
1948年12月6日 | 衆議院 | 川橋豊治郎 | 贈賄 | 許諾 | |
1948年12月12日 | 衆議院 | 田中角栄 | 収賄 | 許諾 | 無罪 |
1954年2月23日 | 衆議院 | 有田二郎 | 贈賄 | 許諾 | |
1954年4月1日 | 衆議院 | 藤田義光 | 収賄 | 許諾 | |
1954年4月13日 | 衆議院 | 関谷勝利 | 収賄 | 許諾 | |
1954年4月13日 | 衆議院 | 岡田五郎 | 収賄 | 許諾 | |
1954年4月15日 | 参議院 | 加藤武徳 | 収賄 | 許諾 | |
1954年4月24日 | 衆議院 | 荒木万寿夫 | 収賄 | 不許諾 | 不起訴 |
1958年7月1日 | 衆議院 | 高石幸三郎 | 公職法違反 | 不許諾 | 不起訴 |
1967年12月22日 | 衆議院 | 関谷勝利 | 収賄 | 許諾 | |
1994年3月11日 | 衆議院 | 中村喜四郎 | あっせん収賄 | 許諾 | 懲役1年6ヶ月 |
1995年12月6日 | 衆議院 | 山口敏夫 | 背任 | 許諾 | 懲役3年6ヶ月 |
1997年1月29日 | 参議院 | 友部達夫 | 詐欺 | 許諾 | 懲役10年 |
2002年6月19日 | 衆議院 | 鈴木宗男 | 収賄 | 許諾 | |
2003年3月7日 | 衆議院 | 坂井隆憲 | 政治資金規正法違反 | 許諾 | 懲役2年8ヶ月 |
[編集] 外交官
外交官の場合、領事関係に関するウィーン条約によって認められている。