乱数放送
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
乱数放送(らんすうほうそう、暗号放送、英名:Numbers Station)とは、数字等の羅列を組み合わせた乱数を用いて作成された暗号により特定の相手に対して情報を伝達しようとする放送のこと。使用される乱数には発信者と受信者にのみ作成と解読を可能とするため、あらかじめ発信者の送信内容と意図に基づいて作成された乱数表が用いられ、主に非合法または秘匿性の高い情報等を伝達する手段として用いられる。数字の羅列を延々と読み上げることから「乱数放送」と呼ばれているが、通信内容が乱数によって暗号化された通信であり、意味のない乱数を放送しているわけではない。
暗号放送自体はごく一般的に各国で行われているが、日本周辺でも韓国、北朝鮮、中国等が現在も積極的に使用している。北朝鮮の有名な音声による「A3放送」(電波型式A3―つまりAMを用いていた為この名がある)は南北首脳会談が開催された2000年以来行われていないが、実際はCWによる放送のほうが活発、大規模で、こちらは現在も継続して観測されている。
近年では北朝鮮の平壌放送がこの乱数放送を用いて日本国内に潜伏するエージェントに向けた指令を送信していたという事例が話題となった。日本人拉致事件に関する指令もこの放送によって行われていた可能性が高いと見られている。
通常この放送には、送受信者間の距離の関係から、遠距離伝播が可能な短波帯が用いられる。電波型式は、AM、SSB、CWなど、用途、設備、利用者の通信技量などに応じて様々な型式が用いられる。大抵の場合、放送時刻と周波数は一週間、一ヶ月、一年間などを目途にスケジュールが決められている。
「放送」といわれる所以は、他国へ侵入しているエージェントへの秘匿通信が目的であること、かつ、エージェントが大がかりな送信設備を持つことができないという理由から、不特定多数が聴取可能な「放送」という形を取らざるをえないということが最大の理由である。したがって、エージェント個人に割り当てられている識別IDと、暗号化された伝文内容の組が送信される。つまり、複数存在するエージェントは、自分宛ての伝文であることを、識別IDにて判断しなければならない。双方向通信ができる場合とは、その運用形態は根本的に異なる。
大抵の場合、エージェントが聴取すべき送信者による放送であることを認識できるようにするため、特定のコード、もしくは音楽で放送が始まる。この音楽はその国特有の音楽の場合が多い。古来から伝わる民謡だったり、有名なポップスが使われることもある。つぎに、メッセージを受けとるべきエージェント個人を識別するために識別IDを送信し、その後に暗号化された伝文内容が、数字、アルファベットなどの羅列を用いて送信される。音声による放送の場合、男性または女性の声のどちらも用いられる。人の肉声の場合もあるが、電子的に合成された音声が多い。使用言語は英語、ロシア語、ドイツ語、北京語、朝鮮語などのものが知られている。
[編集] 関連事項
[編集] 外部リンク
- SpyNumbers 解説・録音有り、英文
- アジア放送研究会 アジアの暗号放送、和文
- Spy Numbers Station 解説・録音有り、和文
- Numbers Monitoring 録音有り、和文/英文