放送
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放送(ほうそう)とは、公衆に向けて、音声や映像などの情報(報道、教養、娯楽など)を電気通信技術を用いて送信することである。
車内放送や駅自動放送などの構内放送は公衆伝達 (Public Address, PA) と呼ばれる。
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[編集] 法令による区分
日本では根拠となる法律により以下のように区分される。一般に「放送」という場合、放送法に基づく放送を指す。
- 放送
- 公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信(放送法第二条第一号)
- 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信(著作権法第2条第8号)
- 有線放送
- 公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う有線電気通信の送信(著作権法第2条9の2号)
- 有線ラジオ放送 - 「有線ラジオ放送」を参照。
- 有線テレビジョン放送(ケーブルテレビ)
- 有線放送(公衆によって直接受信されることを目的とする有線電気通信の送信をいう。(略))であって、有線ラジオ放送業務の運用の規正に関する法律(昭和26年法律第135号)第2条に規定する有線ラジオ放送以外のもの (有線テレビジョン放送法第2条)
- 電気通信役務利用放送
- 公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信であって、その全部又は一部を電気通信事業を営む者が提供する電気通信役務を利用して行うもの(電気通信役務利用放送法第2条)
[編集] 放送の地位
新聞・雑誌などの他のメディアと比較して、放送には特殊な位置づけが与えられている。その理由の1つは「電波の有限性(利用出来る電波の周波数域は限られている)」というものがあげられる。
また、放送は音声(テレビであれば映像も含まれる)で情報を伝えるメディアであり、生放送・生中継が出来ることから即効性もある。それゆえ、放送は他のメディアに比較し国民の思想・世論・人格形成などに与える影響が特に強いと考えられている。そこで、放送の中立性をはじめとして青少年の健全育成に配慮し、公共の福祉の為にこれを活用する必要があるとされる。
そういった理由から、現在日本における放送事業は総務省の管轄下にある免許事業(許認可事項)であり、勝手に放送事業を行ってはならないとされている。ちなみにアメリカでは届け出制。但し最近では、放送技術や受・送信機技術の向上、衛星放送・ケーブルテレビの普及等により、「電波の有限性」が規制根拠たりうるのかを疑問視する声もある。
[編集] 事業者の区分
放送大学学園は実質的に政府の支配下にある上、運営資金の過半は政府から拠出されているため、国営放送に分類されることもある
[編集] 放送系
- 放送系 - 同一の放送番組の放送を同時に行うことのできる放送局の総体 (放送法第2条の2第2項第3号)
[編集] 放送対象地域
同一の放送番組の放送を同時に受信できることが相当と認められる一定の区域(放送法第2条の2第2項第2号)。放送普及基本計画(昭和63年郵政省告示第660号)により放送系毎に定められる。
放送法第2条の2第6項に於いて、「放送事業者は、その行う放送に係る放送対象地域において、当該放送があまねく受信できるように努めるものとする」と規定されている。 飛地、地形上の制約、物理的制約その他によりこの規定を達成していない主な放送事業者は次の通り(† は平成新局)
- テレビ北海道†(帯広・釧路・網走エリアの全域と旭川エリアの一部地域おいて視聴不可)
- FM NORTH WAVE†(網走エリア全域と札幌・函館・室蘭・旭川・帯広・釧路エリアの各一部地域で聴取不可)
- ふくしまFM†(会津地方西部で聴取不可)
- TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、NHK放送センターのラジオ放送(第1・第2・FM)、TOKYO FM(小笠原諸島で聴取不可)
- J-WAVE(南方諸島 (東京島嶼部) で聴取不可)
- MBSラジオ、ABCラジオ、ラジオ大阪(北近畿と紀伊半島で聴取不可、ただし夜間は聴取でき、地元局も放送している番組は聴取できるため、不便になるようなことは少ない)
- エフエム長崎(長崎市東部・西海市・対馬市・壱岐市・五島市などで聴取不可)
- エフエム鹿児島†(薩南諸島で聴取不可)
- NHK沖縄放送局(ラジオ第2・FM テレビ放送の中継局はあるが、首都圏広域放送を流している)、琉球放送(テレビのみ)、沖縄テレビ(大東諸島で視聴不可 なお、NHK沖縄放送局の総合・教育テレビの地上デジタル放送中継局が2009年に設置が予定されている。)
- 琉球朝日放送†、エフエム沖縄(先島諸島と大東諸島で視聴不可)
など、平成新局の殆どが規定を達成できていない。また、平成新局は資金面が乏しいことから2006年以降の地上デジタル放送の中継局整備であまり多く設置することが出来ず、CS再送信やIP放送に任せてしまおうと検討する放送局がある。逆に放送対象地域外に電波が飛んでいる場合がある。(IP放送の場合方式によれば全国からの受信を可能にしてしまうおそれがある)。デジタル放送の電界強度次第ではアナログでは難視聴状態でもデジタルでは鮮明に受信できる可能性も地域によって出てくる。
- コミュニティ放送 - 市町村単位(特別区及び政令指定都市は区単位)で割り当て。最近は平成の大合併により放送対象地域の面積が広大になってしまい、放送法第二条の二第六項を達成できない放送事業者が発生している。
- ローカル放送 - 県域放送の他に広域放送が存在する。また、外国語放送を行う放送局(MegaNetの4局)の放送対象地域は、一般放送事業者の行う超短波放送のうちの外国語放送を行う放送局の放送対象地域(平成7年郵政省告示第52号)によって市区町村または空港等の施設単位で割り当てられている。放送大学学園の地上波放送も外国語放送と同様に市区町村・施設単位で割り当てられている。
- 全国放送
- 国際放送
[編集] 放送区域
一の放送局の放送に係る区域。一般的にいえば、標準の受信設備で放送を良好に受信する事が出来るであろうと想定される区域(強・中電界地域)の事であり、地上波電界強度により機械的に定まる。放送対象地域が放送系毎に定められるのに対し、放送区域は無線局(送信所)毎に定められる。例えば地上アナログテレビジョン放送の場合、地上4メートルの高さにおいて電界強度が毎メートル3ミリボルト(3mV/m)、言い換えれば70dBu以上である区域、地上デジタルテレビジョン放送の場合、地上10メートルの高さにおいて地上波電界強度が毎メートル1ミリボルト(1mV/m)、言い換えれば60dBu以上である区域(放送エリアのめやすのエリア内)が放送区域である(もう少しわかりやすく言うとUHFテレビ放送の場合アナログ放送は地上4メートルの高さ、デジタル放送は地上10メートルの高さで14〜20素子程度のUHF八木・宇田アンテナを設置した場合の受信できる範囲。移動体端末で1セグメント放送受信の場合、地上10メートル未満の高さでの受信になってしまうため放送区域内でも受信時に電界強度が弱い場合は受信できない、実際にはエリアは広いことが多いため逆に放送区域外でも環境によっては受信が容易な場合も多い)。地上波のFM放送・テレビ放送の場合、パラスタックアンテナ(大型でアンテナの設置・維持管理が困難である欠点があったが、最近は設置・維持管理を容易にしようと小型で遠距離受信可能なアンテナ(マスプロ電工の「LS14TMH(東・名・阪専用)」など)が発売されている)をアナログ放送は地上4メートルを超える高さ、デジタル放送は地上10メートルを超える高さに設置することによって放送区域外(弱電界地域)でも良好に受信できる場合がある。場合によってはアンテナと受信機の間に受信ブースターを取り付ける。
[編集] 免許
放送局(放送試験局、放送衛星局、放送試験衛星局及び放送を行う実用化試験局(電気通信業務を行うことを目的とするものを除く)を含む)の免許は無線局免許手続規則(昭和25年電波監理委員会規則第15号)に基づき、以下の区分ごとに行われる。
- 放送の区分
- 国内放送
- 受託国内放送
- 国際放送
- 中継国際放送
- 受託協会国際放送
- 受託内外放送
- 「デジタル放送」または「それ以外の放送」の区分
- 放送の種別による区分
- 中波放送
- 短波放送
- 超短波放送
- 標準テレビジョン放送
- 高精細度テレビジョン放送を含むテレビジョン放送
- 高精細度テレビジョン放送
- データ放送
- その他の放送
- 「受信障害対策中継放送」、「衛星補助放送」または「それ以外の放送」の区分
- 「有料放送を含む放送」または「それ以外の放送」の区分
[編集] 放送局の外資規制
放送が影響力の大きいメディアであることをかんがみ、放送局への外資規制が設けられている。
- 地上放送 - 外国人が業務を執行する役員に就任すること及び5分の1以上の議決権を保有することを制限(電波法第5条第4項)。
- 委託放送 - 外国人が業務を執行する役員に就任すること及び5分の1以上の議決権を保有することを制限(放送法第52条の13第1項)。
- 受託放送 - 外国人が代表者に就任すること、役員のうち3分の1以上を占めること及び3分の1以上の議決権を保有することを制限(電波法第5条第1項、通常の無線局と同じ規制)。
なお、これに抵触した場合、改善命令や電波法第75条により免許の取消し(委託放送の場合は、放送法第52条の23に基づく認定の取消し)の処分を受ける。
これを防ぐための放送事業者の防衛措置として、外国人からの株式の名義書換請求を拒否することを認めている(放送法第52条の8、委託放送については同法第52条の12)。
[編集] 「放送」と「放映」の違い
NHK放送文化研究所の見解によると、「放映」はテレビ放送を指す場合と映画を放送する場合とがあり、その範囲がはっきりせず、大抵の場合は「テレビで放送する」という言い方で表現できる。このため、放送では原則として「放送」を使い「放映」は使わないとのことである。