人格
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人格(じんかく)は、個人の心理面での特性。人柄。または人間の人としての主体。
日本では当初哲学的な概念として輸入され、明治時代に井上哲次郎が英語のPersonality/Person、ドイツ語のPersönlichkeit/Personに相当する漢語として造語したものである。発達心理学、教育学においては、人間の成長の過程において形成されていくものとみなされることが多い。
[編集] 哲学における人格概念
person(英)、Person(独)などは、ラテン語のpersonaに由来する。その語源には諸説あるが、ギリシャ語のπρόσωπον(prosopon:顔やモノの前面、仮面)であるとされることが多い。ラテン語ではさらに「〔演劇や実社会における〕役割」「〔法的主体または対象としての〕人」を意味した。キリスト教においてはテルトゥリアヌスによる神の「三位格・一実体(tres personae – una substantia)」定式において用いられ、ボエティウスにより、ペルソナとは「理性的本性をもつ個別的実体(naturae rationabilis individua substantia)」である、という定義が与えられた。イマヌエル・カントは人格性(Persönlichkeit)と人格(Person)を明確に区別し、『実践理性批判』『純粋理性批判』『人倫の形而上学』などの著書において哲学の中心概念にまで高めた。
[編集] 心理学における人格概念
心理学において人格という用語は,personalityの訳語として用いられるようになった。しかしながら,心理学においてはpersonalityという単語には価値的な意味が含まれていないのに対し,「人格者」という言葉にあるように価値が含まれていることが多く,心理学においても用語の用い方に混乱が生じている面がある。日本において「性格」「人格」と使い分けられている言葉であっても,英語ではpersonalityである場合がある。このように,日本語において性格と人格という用語は,ある種の慣用的な表現に過ぎない可能性もあるという点に留意する必要がある。
事故や病気等による外的要因を除いて、幼少期における経験や体験が、人間としての人格形成に大きく影響を与えていると思われる。幼児期に親の愛情を受けずに(ネグレクト等)育った子供は、表情(笑顔等)が少なくなったりする傾向がある。また、こういう環境で育った子供は、脳の発達具合にまで違いがみられる。また、幼少期に継続的な虐待(児童虐待)を受けた子供の中には、虐待を受けているのは自分ではない別の人物だと思い込み、自分自身の中に別の人格(正確には人格状態)を形成する場合もみうけられる。この状態が進行することによって起こる疾患が解離性同一性障害、いわゆる多重人格である。
[編集] 関連項目
ja:人格