人身売買
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人身売買(じんしんばいばい)とは、人間を誘拐などの強制手段や甘言によって誘い出し、移送し、金銭などによってこれを売り払う行為のこと。トラフィッキング(Trafficking)、人の密輸ともいわれ、また警視庁等はこれを人身取引と表現している。
その目的は、強制労働、性的搾取、臓器移植、国際条約に定義された薬物の生産や取引、養子などにある。人の移送が国境を越えて行われる場合も多い。1990年代以降、特に1996年の児童の商業的性的搾取に反対する世界会議以降、国際的な人身売買が国際問題として取り上げられることが多くなっている。 現代社会においては、おおむねどの国においても犯罪行為とされており、国際社会から忌み嫌われている。また、1949年に発効した国際連合の人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約によって禁止されている。
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[編集] 国際的な人身売買
国際的な人身売買者に関わる国は、送出国・中継国・受入国の三つに分類される。 送出国には政情不安、軍国主義、社会不安、内戦、自然災害、経済状況の変化、差別、周囲や家族からの圧力などの要因(プッシュ要因)があり、また受入国には、性関連のサービスおよび児童との性行為、非合法な臓器移植や実験、過酷な条件化の労働等に対する需要(プル要因)がある。このため非合法な人身取引がビジネスとして成立する。 日本は性的搾取を目的とした女性の移送目的国となっているとされ、諸外国、特にアメリカ合衆国や欧州連合から批判を浴びている。 警察庁の人身取引被害者統計によれば、メコン河流域のタイ、ミャンマー、中国雲南省、ラオス、カンボジア、ベトナム、ウクライナなどからの移送が多いとされている。 略取の対象には、反抗する力のない貧困層、少数民族、災害の罹災者、移民などのマイノリティーや、子どもが選ばれやすい。これらの対象者は、出生届や身分を証明する書類もなく行政等の保護を受けづらいため、人身売買の対象とされやすい。 2005年のスマトラ島沖地震の際には、大災害の混乱に紛れ、人身売買を目的とした子どもの誘拐が多発した。
[編集] 関連資料
[編集] 人身売買禁止議定書
2000年、国際組織犯罪防止条約を補完する議定書として国際連合国連総会で採択、2003年に発行された条約。日本は2005年(平成17年)6月8日、国会で承認した。現在日本国内では、外国人労働者の観光ビザでの不法就労や、人身売買もどきや差別などが横行している。
[編集] 人身売買に関する年次報告書
アメリカ国務省が毎年発表している人身売買に関する報告書で、142の国と地域を、TIER1(基準を満たす)、TIER2・TIER2 WATCH LIST(基準は満たさないが努力中)、TIER3(基準を満たさず努力も不足)に分類している。TIER2 WATCH LISTとTIER3は監視対象国。2005年、日本はTIER2に分類されている。
日本では、アジア、中南米等からの女性・子どもらが性産業で働かされ、また、その主要な到着地の一つであることが指摘された。
[編集] 人身取引対策行動計画
2004年、日本が「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を経て発表した計画書。2005年6月、刑法を改正して、「人身売買罪」を新設した。