分子間力
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分子間力(ぶんしかんりょく)は、分子同士や高分子内の離れた部分の間に働く電磁気学的な力である。力の強い順に並べると、次のようになる。
- イオン間相互作用
- 水素結合
- 双極子相互作用
- ファンデルワールス力
これらの力は静電相互作用であるイオン間相互作用、水素結合、双極子相互作用と、電気力学的な相互作用であるロンドン分散力に分類できる。 静電相互作用は古典的にはクーロンの法則を用いて記述できる。3つの相互作用の違いは 電荷の量による。 イオン間相互作用は、整数量の電荷が関与するため最も強い。水素結合は電荷の一部だけが関与するため、1ケタ弱い。双極子相互作用はさらに小さな電荷によるため、さらに1ケタ弱い。 非常におおざっぱに捉えると、力の大きさは以下のようになるだろう。
イオン間相互作用 1000 水素結合 100 双極子相互作用 10 ロンドン分散力 1
目次 |
[編集] イオン間相互作用
イオン間相互作用とは、帯電したイオンの間で生じる相互作用である。同種の電荷は反発し、異なる電荷は引き合う。
[編集] 水素結合
水素結合は、窒素や酸素、塩素など電気陰性度の高い原子に水素が共有結合している場合に起こる。この場合、極性分子が生じる。水素原子は1よりも小さな正電荷に帯電し、その結果、付近の別の分子に含まれる酸素など負に帯電した原子と相互作用を起こすのである。この結果、2つの分子を結びつける安定した結合が生じる。重要な例として水分子を挙げる。
H2O---H-O-H
水素結合は自然界のいたるところに見つかる。水素結合のために、水は奇妙な性質(訳注:他の16属元素の水素化物と比較した場合の水の異常な沸点、氷の特別な結晶構造など)を帯びるようになり、地球上の生命が存続できる。 水素原子と窒素原子の間の水素結合によって、DNA分子内の2つのらせん構造同士が結び付いている。
[編集] 双極子相互作用
双極子相互作用は、永久双極子となっている2つの分子間で働く力である。1921年にウィリアム・ヘンドリック・ケーソム(Keesom)が最初に数学的に記述したことから、ケーソム相互作用とも呼ばれている。 双極子相互作用は、イオン間相互作用と同じ理由で生じるが、電荷の一部だけが影響を及ぼすため、力が弱い。双極子相互作用の例として塩化水素がある。
(+)(-) (+)(-) H-Cl-----H-Cl
[編集] ロンドン分散力
ロンドン分散力は、ファンデルワールス力とも呼ばれる。無極性の分子に一時的に生じた極性によって生ずる引力である。 分極化は、極性分子によって起こる場合がある。または、無極性の分子間において、負に帯電した電子雲同士の反発力によって生ずることもある。 前者の例は塩素の水溶液である。
(+)(-)(+) (-)(+) (永久双極子)H-O-H-----Cl-Cl(誘発双極子)
後者の例は塩素分子に見られる。
(+)(-) (+)(-) (誘発双極子)Cl-Cl------Cl-Cl(誘発双極子)
[編集] 分子間力と分子
分子間力は、化学結合よりも弱い結合力である。気体が冷却されて液体や固体になるのは、分子間力が存在するためである。水滴がガラスに付いたり接着剤がものをくっつけたりするときの力も分子間力であるから、単に分子の間の力に限定するのも好ましくはない。
分子間力は最初にオランダのファン・デル・ワールスによって、相転移の研究のために導入された。そのため、分子間力自体をファンデルワールス力と呼ぶこともある。