労働基準監督署
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労働基準監督署(ろうどうきじゅんかんとくしょ)は厚生労働省の各都道府県労働局の管内に複数設置される出先機関で、都道府県労働局では厚生労働省の内局である労働基準局の指揮監督を受けつつ管内の労働基準監督署を指揮監督する。労働基準法に定められた監督行政機関として、労働条件及び労働者の保護に関する監督を行う。略して労基署あるいは監督署と呼ばれる。
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[編集] 概説
名称のとおり最低労働基準の遵守について事業者等を監督することを主たる業務とする機関である。その他、労働災害防止の指導や労災保険の給付、個別労働紛争の調停斡旋なども行っている。
業務の関連性からか、公共職業安定所(ハローワーク)に隣接して所在することが多い。
[編集] 組織
労基署長は原則として労働基準監督官試験に合格した労働基準監督官が務めることとされている。また例外として、国家公務員初級・中級試験に合格して都道府県労働局に採用された、概ね50歳以上の厚生労働事務官・厚生労働技官が労働基準監督官に任命されて労基署長を務めることも稀にある。
労基署長には、警察署長、税務署長のようにキャリアが就任することはない。その理由は、労基署長は管理者であると共に労基署の筆頭労働基準監督官でもあることから高度の専門的知識と経験が必要であること、組織が少人数であり多忙であるため「お客さん」としてキャリアを配置する余裕がないためである。
各労基署の職員数は相当の差があり、最大の労基署では職員数が100名以上、最少の労基署では職員数が6名である。
- 署長
- 次長(全ての方面制署と一部の課制署に置かれる。労働基準監督官が就任する。また一部の大規模署には2人の次長が置かれ、監督・安全衛生・業務担当と労災補償担当に分かれる。)
【方面制署(中~大規模の労基署)】 第○方面 (○は一から六の漢数字)
労基署の規模によって3~6人の方面主任監督官(課長級、全員労働基準監督官である)が置かれ、職名は第○方面主任監督官である。各方面主任監督官には部下の副主任監督官・監督係長・役職を持たない労働基準監督官などが配置される。各労働基準監督官は労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働基準関係法令を事業場が遵守しているか監督し、法令違反があり是正勧告に応じない、あるいは違反態様が重大・悪質な場合は刑事訴訟法に基づき捜査を行う。それぞれの各方面は課に相当し、各方面主任監督官の格付けは対等ではあるものの、第一方面主任監督官は監督・取締部門である各方面の指導・総合調整を行い、署長、次長に次ぐナンバー3の役職であり、事実上は次席以下の方面主任監督官の上司にあたる。
- 安全衛生課
- 労働災害、職業性疾病の防止、クレーン・ボイラーなどの検査を行う。課長は厚生労働技官あるいは労働基準監督官が就任する。中規模署では安全衛生課が置かれないこともあり、その場合は次席の方面主任監督官が安全衛生課長の業務を行う。課長以外に産業安全専門官・労働衛生専門官・放射線管理専門官・係長・主任・係員などが配置される。
- 業務課
- 庶務、庁舎管理、賃金構造基本統計調査、会計、労働者災害補償保険の保険金支払を行う。課長は厚生労働事務官が就任する。課長以外に係長・主任・係員が配置される。
- 労災課(注)
- 労働者災害補償保険の給付事務、労働保険料の徴収を行う。課長は厚生労働事務官が就任する。課長以外に給付調査官・適用指導官・係長・主任・係員などが配置される。また常勤職員以外にも多数の非常勤職員・臨時職員が配置されており、労基署の各方面・課の中では最も人数が多い。
- (注)労基署の規模によって「労災第一課」、「労災第二課」の2つの課に分かれていることもある。
各方面・課の業務は分かれているが、各方面と安全衛生課は密に連携をとりながら業務を行う。
【課制署(小~中規模の労基署)】
課制署は2あるいは3の課が置かれている。
3の課が置かれている労基署は
- 第一課
- 方面制署の各方面、業務課の所掌事務を行う。課長は労働基準監督官が就任する。ほとんどの3課制署には次長が置かれておらず、第一課長は、署長に次ぐナンバー2の役職である。
- 第二課
- 方面制署の安全衛生課の所掌事務を行う。課長は厚生労働技官あるいは労働基準監督官が就任する。
- 第三課
- 方面制署の労災課の所掌事務を行う。課長は厚生労働事務官が就任する。
2の課が置かれている労基署は
- 第一課
- 方面制署の各方面、安全衛生課(注)、業務課の所掌事務を行う。課長は労働基準監督官が就任する。2課制署には次長が置かれておらず、第一課長は、署長に次ぐナンバー2の役職である。
- 第二課
- 方面制署の労災課の所掌事務を行う。課長は厚生労働事務官あるいは厚生労働技官が就任する。
(注)各都道府県労働局によっては、第二課が方面制署の安全衛生課の所掌事務を行う労基署も存在する。
年々、厚生労働事務官・厚生労働技官は減員され、労働基準監督官だけは着実に増員されている状況である。しかし労基署の現場では増員されたはずの労働基準監督官が監督・取締部門の増員にあてられることはほとんどなく、主として事務部門の減員の補充にあてられているのが現状である。
労基署には、労働基準監督官、厚生労働事務官、厚生労働技官の3つの官名の職員が混在して配置され、これを三官制度と称している。
- 労働基準監督官は、国家公務員II・III種試験より上位に位置づけられている労働基準監督官試験を合格した司法警察員である。最終的に労基署長に就任することはほぼ約束されている。また昇進・昇任も厚生労働事務官・厚生労働技官に比べて相当早く、最短では29歳で労基署主任監督官・課長に就任する。局総務課の総務・人事係長、局企画室の企画係長、局監督課の監督係長の経験者は将来を嘱望されている労働基準監督官のエース的存在であり、その後局監察監督官や労基署長などのポストを務め、最終的には筆頭署長へ昇進していく。労基署内で厚生労働事務官・厚生労働技官と同一業務に就くことは少なく、検察官と検察事務官のような主従関係にあるわけではない。しかしながら労働基準監督官と厚生労働事務官・厚生労働技官はその処遇が明らかに異なるので、本音の部分では互いに距離を置いた関係のようである。また、上意下達の職場風土はなく部内では「独任官」とも称されているように、捜査を含めて業務は基本的に単独で行い上司からの命令を受けることは少ない。そのためか職務遂行能力は個人差が大きい。
- 厚生労働事務官は、国家公務員II・III種試験に合格して都道府県労働局に採用され、同一の都道府県労働局内で勤務していく。優秀な者は局総務課に若年時から配置され、優秀でない者は局総務課勤務経験がない傾向にある。局総務課の総務・人事・会計係長あるいは局企画室の企画係長の経験者は将来を嘱望されている事務官のエース的存在であり、その後労基署課長を経て、局企画室長補佐、局総務課長補佐、局人事計画官といったキーポストを務め、局課・室長へ昇進していく。中には労働基準監督官や厚生労働技官へ転官し、労働基準監督署長、安全衛生課長等を勤める者もいる。厚生労働事務官は庶務等の管理部門・労災補償部門・保険関係成立の適用部門・徴収部門の相互に異動し、場合によっては労働基準の相談・調査部門に配置されて労働基準監督官の業務の一部をこなすこともある。労災補償調査については患者の面接等により確認して障害の等級を定める事になり、医学的知識の習得が不可欠である。労働保険(労災・雇用)の保険料の徴収に関する事務を扱う厚生労働事務官は、所管の労働保険徴収法に国税徴収法の準用規定があり、滞納処分の一環として捜索・差押を令状なしで執行する権限を有する。徴収に従事する厚生労働事務官は、税務署とは異なって一人一人が独立した権限を持つ。補償部門も徴収部門も専門的な知識が必要である。ほとんどの都道府県労働局では国家公務員II種試験合格者とIII種試験合格者の昇進・昇任は全く変わらない為に、まずは経験年数が優先され、高校や専門学校卒業後直ぐに就職した厚生労働事務官と大学や転職組の厚生労働事務官では扱いが変わり、学歴ではなく勤続年数により先輩後輩の序列ができる。あくまで現場で何年もまれてきたかの経験が物をいう世界となっている。
- 厚生労働技官は、理工系の大学・高専・高校を卒業し、国家公務員II・III種試験に合格して都道府県労働局に採用され、同一の都道府県労働局内で勤務する。局安全衛生課(大規模な労働局では安全課・労働衛生課に分かれる。)と署安全衛生課のみに勤務することが多く、専門性は高いが、一方つぶしがきかなくなる(安全衛生以外の業務経験がないため、他の業務ができない)という問題もある。とりわけ局課長補佐級以降は、就任させるポストがないという事態になりがちである。そのような事態を防ぐために、近年では若年時から厚生労働事務官の業務である庶務会計・労災補償に積極的に配置するようにしているようであるが、そのため厚生労働技官の専門性が向上しない、厚生労働事務官に比べると慣れない業務への異動が多いといった不満も出ており、三官の中では「冷や飯」食いの立場にある。また労働基準監督官や厚生労働事務官は業務において海千山千の中小企業経営者や行政の立場から見て理不尽とも見える要求をする労働組合及び労働災害補償支援団体等を相手に苦労しているのに対して、厚生労働技官は主に大中企業の建設業及び製造業の安全担当者等を相手にしており苦労する機会が少ない。そのため対人折衝能力は高くなく、大上段に構える者もいる。近年はクレーンやボイラーの検査と言った主力業務も減少しており常に技官不要論が出ている。そのため近年は安全衛生指導を主力業務に据えている。技官独自の職務領域が減少していることから採用を中止して「労働基準監督官試験B(理工系)」合格者の労働基準監督官を安全衛生業務に充てようとする動きはあるが、依然として厚生労働技官の採用は続けられている。局課長補佐級までの昇進・昇任の速さは厚生労働事務官と基本的に同じである。中には労働基準監督官へ転官し、労働基準監督署長を勤める者もいる。
[編集] 労働基準監督署の序列
非公式のようではあるが、以下の労基署の序列がある。
- Aクラス署 四以上の方面を置く署(大規模署)、各都道府県労働局の筆頭署(大規模~中規模署)
- Bクラス署 三の方面を置く署(中規模署)
- Cクラス署 三の課を置く署(中規模~小規模署)
- Dクラス署 二の課を置く署(小規模署)
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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