動物愛護団体
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動物愛護団体(どうぶつあいごだんたい)は、主としてコンパニオンアニマルとして家庭で飼育されている動物の虐待や遺棄の防止や、適正な飼育・取り扱いの普及啓発を推進するための団体で、全国的なものからローカルのものまでさまざまな団体が多数活動している。日本国内では日本動物愛護協会・日本動物福祉協会・日本愛玩動物協会などのように公益団体となっているものの他に、市民等有志の持ち寄りによるもののような小さいグループまで、組織的に大小様々な任意団体あるいはNPO法人が各地にある。
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[編集] 概要
活動の具体的な内容は、捨て犬、捨て猫の保護ならびに飼い主探しや、飼い主に飼えなくなったとして保健所、動物管理センターに連れてこられた犬猫、もしくは捕獲された犬の殺処分を減らす運動、地域猫活動などさまざまである。
一度は飼い主から不用とされ捨てられた個体の生存を社会的に受け入れさせるため、動物を一時収容し、家庭動物としての訓練を行ったり、病気や怪我の治療、不妊去勢手術、ワクチン接種などを行った上で飼い主を募集する施設をアニマルシェルターと呼び、日本ではまだまだ認知度が低いが、欧米では、動物の入手先として大きなウェイトを占める。
研究機関の動物実験への反対、動物園、サーカス、闘牛、ロデオなど、見世物としての動物の虐待への反対、ベジタリアンになる、など産業動物を対象とした活動は、動物愛護と呼ばれることもあるが、厳密には動物の権利運動(アニマルライツとも)として区別される。
また、それら産業動物を利用することは否定せず、飼育状況の改善などを求める運動を動物の福祉運動(アニマルウェルフェアとも)と呼ぶ。これらでは例えばと畜場へと家畜を運搬する場合に、不衛生な環境やストレスを与える要素を減らすなどの運動である。
[編集] 動物保護と環境保全
動物個体の権利・福祉を目的とする団体と、生態系や生物群集・個体群の保全を目的とする自然保護や環境保全の活動は似て非なるところがあり、むしろ主張や方針が対立することもある。前者は個々の動物の生存・権利・福祉を最重要視するあまり、生態系全体を省みることがない場合である。
生態系や生物群集・個体群の保全には、個体の生存・権利・福祉をある程度犠牲にしなければ成り立たないことがあり、生態系維持のためには、生態系を撹乱する外来種(ブラックバス等)や異常増加した野生鳥獣(シカ等)を防除せねばならないが、中にはこの外来種個体の保護を訴える団体も無くはない。
例えば奄美大島にハブ駆除のために放されたインドマングースはアマミノクロウサギをはじめとする固有種の個体群の脅威であり絶滅の縁に追いやっているため、駆除事業が展開されているが、動物愛護団体にはインドマングースの個体の生存権を主張し、駆除事業の中止を求める団体もある。自然保護、環境保全の立場においては奄美大島の生態系に適合しないインドマングースの存在がアマミノクロウサギなどの固有種の存続を脅かすことを回避すべき問題点とし、そのためにはインドマングースの個体の命を断つことによる排除はやむをえないと判断することが多いのに対して、しばしば動物愛護の立場においては人間が恣意的直接行動によりインドマングースという動物個体の生命を脅かす行為を止めるべき悪とみなす考えが存在するためである。
同種の問題では野良猫の場合に於いて対馬のツシマヤマネコや西表島のイリオモテヤマネコとの交雑問題やネコ固有の感染症の媒介者としての問題も指摘されるが、この過程で捕獲された野良猫の扱いを非難する団体も見られる(→野良猫・野猫)。
ただ、これらでは一般には「動物愛護団体」と一括りにされてはいても、実際には上に述べたとおり動物の権利運動であったりするなど、他の運動と混同されている場合もあり、こと市民間の持ち寄りなどによる小規模な団体では活動家自身が自身の活動の種類を明確にできていない様子すら見られる。本来なら必ずしも自然保護と動物愛護は相反せず、例えば野良猫の例を取れば個体保護に捕獲と離れた地域での里親探しによってヤマネコから隔離することで、環境保護にも繋がると考えられる。