匿名掲示板
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
![]() |
この項目または節は主として日本国内のものを扱った記述になっており、世界的な観点からの説明がされていません。この項目を日本中心にならないように加筆、訂正 するか、この項目のノートでこの問題について議論をしてください。 |
匿名掲示板(とくめいけいじばん)とは、ほとんどの投稿者が本名を名乗らず、意見や感想を投稿する電子掲示板のこと。仮名やペンネームに相当するハンドルネームを名乗って意見を交換する。このため、個人情報を秘匿して書き込むことができる。実名を名乗って書き込む電子掲示板に対する用語。世界の電子掲示板を見ると、国ごとに匿名が主流か否かが異なる。
目次 |
[編集] 概説
一部の電子掲示板では実名で書き込まない、ハンドルネームを使って書き込むという発想が定着しており、ネットワーク上で用いられる仮名の役割を果たすハンドルネームが、現実世界での実名に匹敵する一種のアイデンティティを生んでいると感じている人も少なからずいる。そのため、『匿名掲示板』とは特定ネットユーザーの書き込みを判別することが難しいハンドルネームを用いなくても書き込みをすることが可能な掲示板を意味する場合もある。日本国内の例を挙げると、「匿名」という名称から個人を特定できない「完全匿名」で書き込みが許されていた時代の2ちゃんねるを『匿名掲示板』と呼称していた人が、その名残として現在でも使用している場合が多い。
しかしながら、ネット上では複数のハンドルネームを使い分けることは可能であり、また便宜上異なるハンドルネームを使用しなければならない場合もあり、この世に一つしかない実名を使うことによって発生する現実世界のアイデンティティと異なるのは言うまでもない。
ごく僅かではあるが、記事投稿の際に名前欄が存在しないため、実名・ハンドルを問わず「名前」を使用することができない掲示板も存在する。このような掲示板では、発言者のアイデンティティが存在し得ない、対人としてのコミュニティは行われず対記事としてのコミュニティが行われるなど、既存のコミュニケーション手段とは異なった現象が発生する。匿名掲示板の考え方を推し進めたものであるといえる。
[編集] 歴史
以下、日本国内の状況を時系列にまとめると、パソコン通信時代の電子掲示板と言えば「草の根BBS」や「フォーラム」と呼ばれるものが主体であった。当時は、パソコン通信の利用者も少なく現実世界の延長線上として実名で何かを投稿するものが多く、それが慣例化していた。限られた閉鎖的な空間で、不特定多数の人間に自分の意見が観察されたりされるという懸念もないからという安心感があったのかもしれない。
1990年代半ばからグローバルな開かれた通信網のインターネットの発達により、パソコン通信は廃れ、同時にパソコン通信による実名で投稿するようなBBSや形式も廃れた。一般向けサービスが拡充されたことによって、インターネット利用者も莫大に増え、不特定多数の見ず知らずの人間と交流することも多くなった。そのため、ある掲示板で限られたメンバーのみしかいない場合、実名で書き込むのは難しいという人もいるし、またインターネットの特質上容易にその掲示板に書き込みもしやすいが、その書き込みが場の空気を読まずに書き込んだ場合、揉めやすく実名であるとその精神的被害も大きく、現実的な被害を生む可能性もある。そういった掲示板でのコミュニケーションの円滑を目的としたネットユーザーや、ちょっとした遊び心あるネットユーザーが増えた結果、現在のハンドルネームの常用の慣習が生まれ、現在の匿名掲示板というインターネットの文化が根付いた。
[編集] 匿名掲示板の意義
多発している銀行やクレジットカード会社の個人情報漏洩から個人情報保護の意識の高まりもあり、特に団体や組織のバックアップもないユーザーが実名で書き込んでやりとりをする場合、ネットは誰でもが見られるような状態で公開されている状態であるため個人を特定できてしまう可能性があるという懸念がネットユーザーの心理に働いているのではないかもしれない。例えばそれを示すように、個人情報である住所や電話番号や氏名などが書き込まれた場合、その情報が削除される掲示板は多い(ただし単に氏名のみの公開ではそれが悪戯であっても「どこの誰かが特定できない」と言う理由で削除されない場合もある)。実際問題、ある人の個人情報が掲示板上に書かれることによって、その人に対してイタズラをする人が後を絶たなかったりする。
その人の政治的思想や性的志向も知りうることが出来、それに尾ひれを付けて歪曲し、大げさに中傷や誹謗がされる場合もある。また一度流れ出た情報を止めることは難しいため(不可能とも言える)、未然にそういった被害から個人の身を守るためには一定の匿名性を確保されなければならないという声もある。
また匿名性が確保されているため、現実世界では言いづらい発言をすることも可能である。例えば企業犯罪や組織犯罪などの内部告発を行う、劣悪な労働環境を公にしやすいといった有益な利用が可能であるという面もあり、現実世界で行った場合、過激団体から狙われるような政治的な発言も自由に可能である。
なお、Yahoo!掲示板のように、実名を利用しない登録制の電子掲示板が「匿名掲示板」に含められる場合もある。
[編集] 問題
匿名掲示板は自分の本名ではない匿名でのやり取りが行われるだけに、自己の体裁やメンツを守る必要も無い為、一般社会ではあまり見る事は無い乱暴な表現が日常的に用いられるという特徴を持つ。目の敵にする特定の個人や有名人や団体、ないしは不特定多数を攻撃する目的で誹謗中傷やデマを書き込む人もいる。
また事実であると確信して書き込んだ内容であっても、実際は異なった事実である場合もある。明らかに間違っている事実でない限り、匿名掲示板で安易にそれが間違いであると指摘しても、余程の根拠がない限り間違った事実であるという認識が広まりにくい。また、匿名であるためその発言者はどこかに消えてしまい、反論することが出来ず間違った事実が事実として世間に広まる危険性もある。これはテレビや雑誌メディアでも共通して見られる問題でもある。(=嘘も百回言えば真実となる・真実に紛れれば嘘の信憑性は高まる)
現実世界でも過度な誹謗中傷でもしない限り法的な責任は問われない。これはネット上、特に匿名掲示板でも当てはまる。しかし、現実世界では社会的な責任を負わされるのに対し、匿名空間ではそのような社会的な制裁を回避することが出来る。そのため、誹謗中傷する罪悪感の希薄化を指摘する人もいる。
[編集] 具体的な匿名掲示板
代表的な匿名掲示板には、2ちゃんねるやふたば☆ちゃんねる、あやしいわーるど、16ch.net(以上、規模順)などがある。2ちゃんねるは、かつてIPログという投稿者のネット接続記録を取っておらず、投稿者の身元を特定できないという点で、まさしく完全なる匿名掲示板であった。それゆえ、それを逆手に取った犯罪まがいの悪用が絶えず、ついには売名目的での脅迫や名誉毀損が為されるなど社会問題にまで発展した。
そのためだけではないが、現在はIPアドレスのログを取得するようになり、犯罪予告や脅迫などが書き込まれた場合、警察が投稿者の身元を特定出来るようになった。したがって、現在の2ちゃんねるは、「完全匿名」ではない「疑似匿名」の掲示板であるとされる。しかしながら、現在でも犯行予告が書き込まれることがある。また、管理人ひろゆきは、名誉毀損とされた事案に関しては、IPログを開示しておらず、賠償金の支払いも拒否している(2006年11月現在)。これに対して、板倉宏日本大学大学院教授(刑法)は、「なぜ、これまで損害賠償を命じてきた裁判所が、強制執行を行わないのか不思議だ」と指摘している。[1]
なお、Yahoo!掲示板のような、実名を利用しない登録制の電子掲示板が「匿名掲示板」に含められる場合もある。
[編集] 政府の反応
ネットの匿名性が爆弾の製造法や集団自殺といった犯罪(爆破・襲撃などの予告といった、威力業務妨害行為もこれに含まれると思われる)を誘発しているとして、2005年6月、総務省はネットを実名で利用するように喚起する方針を取ろうとしている。主に、ネット犯罪の被害者・加害者になりやすい小学生・中学生が対象となっている。
しかし、投稿者が本当に実名で書かれているかどうかを確かめることは難しく、誰か有名人や嫌いな知り合いの名前を騙って陥れるような発言をすることもできる。また、虚構の名前であっても、赤の他人からそれが実名であるかを確かめる方法はなく、実質、実名であろうとなかろうと匿名のハンドルネームと同じではないかという批判もある。韓国のように、国民番号を用いてネットユーザー1人1人に個人を特定できるIDを与え、それを入力しないとどこにもアクセスできない・掲示板に書き込めないなどの措置をとっている国もある。そういうシステムを作るには民間や個人の力だけでは難しく、公的な管理監視が必要であるため、政府による精神的自由権への侵害となり得る。また世界全体で実施しない限り意味はなく、現実的な政策であるかは疑問視されている。