国が燃える
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概要
『週刊ヤングジャンプ』で2002年49号より2005年9号まで連載された。
東北の小作農の息子として生まれた官僚・本多勇介を主人公に、満州国の建国から崩壊、入植者の引き上げまでを描く予定であったが、後述の問題が発生した影響で、昭和13年(1938年)以降がかなり端折られる展開となった(連載において物語は一応完結している)。
登場人物
- 本多勇介
- 小作農の息子として生まれたが学力を認められて、山形の豪農・本多家(モデルは本間家)の養子となる。帝国大学卒業後、農商務省に出仕(省の分割後は商工省に配置される)。石橋湛山に師事し、「小日本主義」に傾倒していたが、本多家の意向もあって満州への入植政策に関わっていく。
- 松前洋平
- 帝和財閥御曹司。破天荒な人物で典型的な本宮漫画の主人公タイプ。幼なじみの翔子(勇介の妻となる)への恋に敗れたのち、大陸浪人となり、蒋介石と関わっていく。伊達順之助がモチーフか。
- 石原莞爾
- ふとしたきっかけで勇介と知り合い、同郷ということで意気投合。個人的な付き合いをはじめる。良識派知的軍人として描かれている。
- 岸信介
- 商工省における勇介の先輩。
- 川島翔子
- 本多勇作の見合い相手、後に勇作と結婚し、子供も授かる。
- 川島家
- 大地主であり、小作争議に巻き込まれかけるが、勇介と翔子の機転により、農民との衝突を避ける。
- 呂 明花
- 中国(国民党)、日本、満州(溥儀近辺)をわたる不思議な女。一時勇介と恋仲になる。
- 川島忠俊
- 川島翔子の兄。海軍軍人。パイロット。物語中にドイツ留学。翔子と勇介の結婚が川島家の反対で、引き裂かれそうになった時、勇介と翔子の側に立ち、彼女らを結婚させることに成功する。
南京大虐殺問題
2004年43号掲載の第八十八話において、いわゆる南京大虐殺について取り上げ、日本兵の「中国人百人斬り」や、逃げ惑う一般市民を機関銃掃射するシーンが描かれた。また、資料(とされたであろう写真等)の矛盾点を修正して描いた為、一部の読者や右翼団体、保守政治家から激しい抗議を受け、右派系のネット掲示板、ブログなどでも非難の声が多数上がった。また、右翼の街宣車が三日間にわたり抗議の街頭宣伝を行った。
ヤングジャンプ編集部は、読者からの抗議以上に、「中国人百人斬り」の真偽が係争中であるという主張に基づいた保守政治家の圧力により、該当する描写の訂正・削除を行うことと「国が燃える」の休載を発表した。48号より52号まで一時休載となったのちに連載再開されたものの、休載直前から駆け足の展開となり、翌年1月には終了した。2004年11月11日、本誌上にて問題のシーンを含む二話(計21ページ)はコミックス版では削除されると発表したが、単行本の発行は2004年33号掲載分までを収録した8巻(2005年2月発行)で停止したままである。
ここで問題の一つとして取り上げられた修正された矛盾点とは、南京大虐殺がなかったとの立場を取る人々から、その矛盾を理由に「虐殺の存在や、日本軍が関与している証拠にはならない」と指摘されている部分。 具体例としては
- 資料写真では膝から足首へとゲートルが巻かれていた(通常はありえない)のを、作中では足首から膝へとゲートルを巻いた様に修正して描写した。
- 女性の衣服を脱がし『記念撮影』を行ったとされる写真で、(写真にはない)日本軍の制帽・肩章を追加している。さらに背景にある第三者の腕も削除している。
- ナレーションに田所耕三の(現在は虚偽であるとされている)証言を使用している。ちなみに「国が燃える」の中では、田所耕三の証言をさらに改竄しているとの指摘もある
など多数が指摘されている。詳細は南京大虐殺論争を参照のこと
- 2.には更に「資料写真では不鮮明な制服を明確に日本陸軍のものとして描写した」「背景に中国人風の男性(上記の「第三者の腕」がこの人物のものである)がいるのにそれを無視した」などが指摘されているが、この点については元の写真が不鮮明であったりトリミングされて流通している場合が多いなどの事情もあり、意図的な改変とは断定できない、とする意見もある。
この件に関して、2004年11月1日に出版流通対策協議会が毅然たる対応で出版するように全出版社に呼びかけた。また同年12月16日、日本ジャーナリスト会議が南京事件の研究者を招いて講義を行った。「国が燃えるの本質をつかみ、確信をもつことが重要」と訴えた。