宇宙条約
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月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約、通称宇宙条約(うちゅうじょうやく)は、宇宙空間とその利用について規定した最初の条約。宇宙空間における探査・利用の自由、領有の禁止、宇宙平和利用の原則、国家への責任集中原則などが定められている。宇宙憲章と呼ばれることもある。
1966年12月19日に国際連合総会第21回会期において採択、1967年10月10日に発効。
その後形成されていく宇宙法の基礎となった。
目次 |
[編集] 主な内容
[編集] 宇宙空間の探査・利用の自由
第1条で規定されている。天体を含む宇宙空間の探査および利用は「すべての国の利益のために」「国際法に従って」全人類が自由に行うことができる。
[編集] 領有の禁止
第2条で規定。天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も領有権を主張することはできない。
[編集] 平和利用の原則
第4条で規定。核兵器など大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せたり、宇宙空間に配備してはならない。
また、月その他の天体はもっぱら平和目的のために利用され、軍事利用は一切禁止される。
[編集] 国家への責任集中原則
第6条、7条で規定。宇宙活動を行うのが政府機関か非政府団体かに関わらず、自国によって行われる活動については国家が国際的責任を負う。打ち上げられた宇宙物体が他国に損害を与えた場合、打ち上げ国には無限の無過失責任が発生する。
[編集] 採択・発効
- 1966年12月19日 第21会期国際連合総会において採択。決議2222号
- 1967年1月27日 署名のため開放
- 1967年10月10日 効力発生
[編集] 日本
- 1967年1月27日 署名
- 7月19日 国会承認
- 10月10日 批准書寄託、効力発生
- 10月11日 公布(条約第19号)
[編集] 問題点
- 宇宙条約は宇宙空間に特別の地位を与えたものであるが、一方で地球における空域においては各国が領空主権を持つ。そのため空域と宇宙空間との境界が問題となっているが、これについて明確には定められていない。境界の確定方法をめぐっては学説が対立しているが、境界の確定は不要であるとする論もある。
- 「平和利用の原則」について、天体における軍事利用は明確に禁止されている一方、その他の宇宙空間における軍事利用については条約ではほぼ触れられていないに等しい。大量破壊兵器についても、第4条にて「地球を回る軌道に乗せないこと、宇宙空間に配備しないこと」となっているため、宇宙空間に到達するものの軌道にのらない大陸間弾道ミサイルについては条約の対象外となっている。これらの理由から、宇宙空間の軍事利用は、通常兵器の範囲で"非侵略"という目的であれば禁止されていないとする解釈が一般的である(なお、日本政府のように"非軍事"という独自の解釈を行っていた国家もある)[1]。
- さらに、禁止となっているはずの天体の軍事利用についてさえも、類似の南極条約とは異なり「軍事的性質の措置」の禁止が明文化されていないため、「平和的目的」であり条約にて明示的に禁止されていない範囲であれば可能であるという解釈が存在する[2]。
- 天体の領有禁止についても、国家の領有のみを禁止しているなど、曖昧な部分がある。この問題を解消するために1979年の月協定(月その他の天体における国家活動を律する協定)では天体の領有、天体における天然資源の所有が私人を含めて一切禁止された。しかし月協定については批准・署名国がきわめて少数にとどまり、現在でもルナエンバシー社などが月の所有権を主張している。
[編集] 脚注
- ^ 青木節子、「宇宙の軍事利用を規律する国際法の現状と課題」(PDF)、慶應義塾大学大学院、2005年4月。
- ^ 青木節子、「適法な宇宙の軍事利用決定基準としての国会決議の有用性」(PDF)、慶應義塾大学大学院、2005年4月。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
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