実験音楽
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実験音楽(じっけんおんがく)とは、現代音楽の潮流を表す言葉。
[編集] アメリカ実験音楽
1960年代以降、主にアメリカ東海岸で発展した流派。現代音楽では作曲の技法に重点が置かれているのに対し、実験音楽は音楽的な行為の枠を問うのが特徴である。
実験音楽の代表的な音楽家としては、ジョン・ケージと、ソニック・アーツ・ユニオンを構成したロバート・アシュレイ・アルヴィン・ルシエ・ゴードン・ムンマ・デヴィッド・ベアマン、デヴィッド・チュードア、スティーブ・ライヒ、モートン・フェルドマンなどが挙げられる。
現代音楽の功績は作曲技法が主であるのに対して、実験音楽の楽曲の手法はあくまでも手段である点も重要だ。すなわち、偶然性の音楽やプロセス・ミュージックなどは特定の実験音楽家が採用した手法にすぎない。
多くの実験音楽家は他の分野の芸術家との交流も深く、それぞれの芸術活動に大きい影響を与えた。マルセル・デュシャンやマース・カニングハムなどは特に、交流のある実験音楽家なしに成立しなかった作品も存在する。
[編集] ヨーロッパのエクスペリメンタリズムの音楽
1980年代以後の前衛の停滞期において、新しい単純性や新ロマン主義、ポスト・ミニマルなどのマニエリスムの音楽の潮流に反発して新しい複雑性という前衛的・実験的な音楽の潮流がダルムシュタット夏季現代音楽講習会を中心に広まった。
ただし、今では新しい複雑性と言う用語は狭義となり、別名「新複雑主義」とも呼ばれる、ブライアン・ファーニホゥ、マイケル・フィニスィー、ジェームズ・ディロンなどの一派とその潮流を指すようになり、ヘルムート・ラッヘンマンやサルヴァトーレ・シャリーノなどポスト・セリエルやポスト構造主義の音楽や、ジェラール・グリゼー、トリスタン・ミュライユなどのスペクトル楽派の音楽とは別の用語として扱われることが多いため、これらを総称する意味で「(ヨーロッパの)エクスペリメンタリズムの音楽」という言葉が用いられる。
スペクトル音楽の支流と見られているホラティウ・ラドゥレスクはマスタークラスを開講する時に「ヨーロッパの前衛の歴史、アルス・ノヴァから現在まで」と副題をつけ、西洋音楽が進歩の歴史そのものであったことを強調している。ボグスワフ・シェッフェルも自作の題名に「エクスペリメンタ」と名づけているように、前衛の時代をよりよく生きた者ほど「エクスペンタリズム」という言葉から何かが生まれることを信じている。