岐の神
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岐の神(ちまたのかみ)または辻の神(つじのかみ)とは、日本の民間信仰において、疫病・災害などをもたらす悪神・悪霊が聚落に入るのを防ぐとされる神である。
岐(ちまた、巷とも書く)または辻(つじ)とは、道路が分岐・交叉する場所のことである。このような場所は、人だけでなく神も往来する場所と考えられた。神の中には悪神・悪霊もおり、これらの侵入を防ぐために祀られたのが岐の神である。このことから塞の神(さえのかみ)とも呼ばれる。
神話の中では、『古事記』の神産みの段において、黄泉から帰還したイザナギが禊をする際、脱ぎ捨てた褌から道俣神(ちまたのかみ)が化生したとしている。この神は、『日本書紀』や『古語拾遺』ではサルタヒコと同神としている。また、『古事記伝』では『延喜式』「道饗祭祝詞」の八衢比古(やちまたひこ)、八衢比売(やちまたひめ)と同神であるとしている。
『日本書紀』では、泉津平坂(よもつひらさか)で、イザナミから逃げるイザナギが「これ以上は来るな」と言って投げた杖から岐神(ふなどのかみ)、来名戸祖神(くなとのさえのかみ)が化生したとしている。『古事記』でも、上述のイザナギの禊の場面で、最初に投げた杖から衝立船戸神(つきたつふなどのかみ)が化生している。
後に、中国から伝来した道路の神である道祖神と習合した。そこから、道祖神もサルタヒコと同一視されるようになった。また、仏教の地蔵菩薩とも同一視された。