年次有給休暇
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年次有給休暇(ねんじゆうきゅうきゅうか)とは、労働基準法(第39条)で定められた制度で、労働者に与えられる休暇のことであり、その休暇について使用者は賃金を払わなくてはならない。
有給休暇、年休、有休などといわれることが多い。
将来的にはホワイトカラーエグゼンプション対象労働者に対する適用が注目される制度と云われている。
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目次 |
[編集] 概説
- 就業規則などで定められた本来の休日以外に有給で取得できる休暇である。
- 1936年のILO52条条約によって定められたが、日本で導入されたのは戦後の1947年に定められた労働基準法による。なお、制定当初は当時のILO52条条約の定められた最低日数の6日を最低日数としていたが、同条約他国際条約等での日数引き上げに対応して1988年に最低10日に引き上げられた。
- 日本の厚生労働省の「平成16年就労条件総合調査の概況」によれば、1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数を除いたもの)は、労働者1人あたり平均18.0日であるが、そのうち実際に労働者が取得した日数はその半分以下である8.5日であった。これは日本の企業風土が休暇消化を容易にするだけの人員配置を行っていないことに加えて、近年のリストラが労働者に有給休暇の取得をためらわせる心理的要因になっているからだと言われている。
[編集] 日数
- 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
- さらに1年の継続勤務するごとに有給休暇は勤続2年6ヶ月目まで1労働日ずつ加算され、勤続3年6ヶ月目からは2労働日ずつ加算される。20労働日になるとそれ以上は加算されない。
- 1週間の所定労働日数が4日以下かつ所定労働時間が30時間未満の労働者、あるいは、認定職業訓練を受ける未成年の労働者については、上記と別の規定があり、それに従い有給休暇が与えられる。
[編集] 労働者の年次有給休暇の請求、使用者の時季変更権
使用者は、有給休暇を労働者の請求する時季(法文上「時期」ではなく「時季」)に与えなければならないのが原則である。例外的に事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季にこれを与えることができる(このことは労働基準法第39条第4項に規定されている)。また有給休暇の請求は2年間に渡り有効で、労働者が与えられた年にとらなかった場合、翌年にとることができる。このように、使用者側に事前時期変更権が存在するため、一旦有給休暇を許可した場合、後から取り消すことはできない。
有給休暇の権利の性質は、形成権といわれるもので一方的な意思表示で当然に成立するものであり、本来は使用者が「許可」や「承認」して成立するようなものではない。しかしながら使用者が時季変更権を行使した場合は、労働者は請求した時季の年次有給休暇が「許可」や「承認」されないこととあまりかわりはない。
[編集] 年次有給休暇の計画的付与
労使協定により年次有給休暇の日数のうち5日を超える部分を労働者の請求する時季によらず、計画的に付与することができる。これを年次有給休暇の計画的付与、計画年休などという。
[編集] 年次有給休暇の買取予約禁止
法律で付与されるべき年次有給休暇について、事前に買取の予約をすることによってその日数を減じないし与えないことは禁止されている。なお、労働者が年次有給休暇権を行使せず、その後時効、退職等の理由でこれが消滅するような場合、残日数に応じて調整的に金銭の給付をすることは、事前の買取と異なるため、必ずしも禁止されていない。
[編集] 離職時との関係
退職時においての年次有給休暇は、退職日までに取得が可能であり、使用者(それに相当する管理者)による退職日を越える時季変更は許されない。休暇を消化するのが退職日以降になってしまう場合は、退職日まで有効とし、他は無効となる。ただし、法律で付与されるべき分を超える休暇に相当する分の買取、あるいは、残日数に応じた金銭の調整的給付を事後に行うことは可能である。
解雇においても同様であるが、退職と違い、労働者の予期せぬところで行われる。そのため、最悪の場合、解雇予告が行われると、最短で30日後に解雇となるため、年次有給休暇の未消化分が30日を越える場合は、その分が無効になり、30日分の解雇予告手当てを支給した場合は、年次有給休暇はすべて無効となるため、法律上の保護や改善の議論を呼んでいる。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 有給休暇取得マニュアル(パート・アルバイト・派遣社員の有給休暇を解説)
- 有給休暇って本当に取ってもいいの?(マンガで有給休暇に関するビジネスマナーを紹介)
- 厚生労働省・平成16年就労条件総合調査結果の概況