往来妨害罪
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往来妨害罪(おうらいぼうがいざい)とは、公共の交通に対する妨害行為によって成立する犯罪。刑法124条から129条(第二編 罪 第十一章 「往来を妨害する罪」)によって規定されている。
目次 |
[編集] 内容
[編集] 往来妨害
- 刑法第124条によって規定され、陸路や橋梁を破壊する、又は運河を封鎖して往来を妨害する行為を指す。法定刑は2年以下の懲役又は20万円以下の罰金。
- 係る行為によって人を死傷に至らしめた場合は傷害罪と比較して重い刑に処す。
- 「陸路」の意味は二通り存在し、鉄道線路を含む(=地上交通の意味)か、含まない(=道路交通の意味)かは明記されていない。一般には後者の意味合いで使われる。
[編集] 往来危険
- 刑法第125条によって規定され、鉄道施設又はその標識を破壊又はその他の方法で、危険な状態に陥れる行為又は、船舶の運航に関わる設備を破壊し、危険な状態に陥れる行為を指す。法定刑は2年以上の有期懲役。
[編集] 汽車電車転覆
- 刑法第126条によって規定され、人の乗る列車を転覆・脱線などで破壊する行為、人の乗る船舶を転覆・沈没させる行為を指す。法定刑は無期懲役又は3年以上の有期懲役。
- 前項にて人を死に至らしめた場合は死刑又は無期懲役とする。
[編集] 問題点
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鉄道線路に侵入し列車を妨害したならば往来危険容疑によって処罰されるとされるが、「侵入」そのものが罪なのか「列車妨害」に及んだ(当該列車を運行不能にし、ダイヤを乱す)時点での犯罪成立なのかは曖昧である。往来妨害罪が適応されるのかも曖昧で、逮捕か厳重注意処分(管轄区域の署長宛ての始末書)かの判断は、現状では当該区間の線路を管轄する駅の駅長又は助役に委ねられ(被害者としての被害届を出すか否か)、警察官によって処罰が下されている。
侵入そのものとしては、近道をするためや、踏切や道路がなく線路を辿らないと目的地に到達できないので線路上を歩いた、踏切以外の場所を横切った、写真の撮影の為に立ち入った等、はたまた電車の車内から定期券を落としたとして線路上を歩いた等が挙げられる(鉄道ファンによる線路内への立ち入り問題の例としては、紀勢本線で勝手に線路上に降りた例や、321系の試運転の日に撮影の為にJR京都線に侵入してダイヤを乱し、車内放送で「カメラマンが線路に立入った為に運転を見合わせております。」とアナウンスされた例などがある)。これらについては明確な法規定が無く、鉄道ファンの撮影目的と云った悪質な物を除き、全てを犯罪扱いする訳にもいかないのが現状である。
[編集] 条文
- 第十一章 往来を妨害する罪
(往来妨害及び同致死傷)
第百二十四条 陸路、水路又は橋を損壊し、又は閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(往来危険)
第百二十五条 鉄道若しくはその標識を損壊し、又はその他の方法により、汽車又は電車の往来の 危険を生じさせた者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 灯台若しくは浮標を損壊し、又はその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。
(汽車転覆等及び同致死)
第百二十六条 現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。
3 前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
(往来危険による汽車転覆等)
第百二十七条 第百二十五条の罪を犯し、よって汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。
(未遂罪)
第百二十八条 第百二十四条第一項、第百二十五条並びに第百二十六条第一項及び第二項の罪の未遂は、罰する。
(過失往来危険)
第百二十九条 過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。
2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
[編集] 関連項目
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