微生物
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微生物(びせいぶつ)とは、肉眼でその存在が判別できず、顕微鏡などによって観察できる程度以下の大きさの生物を指す。微生物を研究する学問分野を微生物学と言う。
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[編集] 特徴
微生物とは、人間の肉眼ではその構造が判別できないような微小な生物を指す言葉である。体躯が微小であるとの理由のみで区分されたため、分類上は、極めて広範囲にわたる分類群を含む。むしろ、微生物でないのは、大型多細胞生物だけであり、植物界、それに動物界とクロミスタ界の中にしか存在しないとも言える。
微生物は原核生物(真正細菌、古細菌)のみならず真核生物(藻類、原生生物、菌類、粘菌)、ウイルスや、ワムシのようなごく小型の動物も含まれる。なお、菌類などでは、肉眼的なコロニーを作るものであっても、カビのように、その体の構成単位が顕微鏡的大きさであるものは、微生物として扱われる。
[編集] 関連する用語
また、プランクトンという用語は、本来は生物の大きさを規定する意味は含まないが、時として微生物とほぼ同じ意味に使われることがある。プランクトン図鑑には、往々にして、定着性の微小藻類や底生の原生動物が含まれている。
他方、微生物学では、ほとんど細菌類の意味に使われる傾向がある。
[編集] 大きさ
微生物の大きさの範囲は、はっきりと決まったものではない。たとえばゾウリムシは体長が0.1mmばかり、これは目をこらせば見える大きさである。同様の仲間には、1mmを越えるものも存在し、完全に肉眼で確認が可能である。しかし、その姿を知らないものが、それを動物的生物だと認識することはまず不可能だろう。事実、顕微鏡の発明までは、微生物が発見されることはなかった。
ロバート・フックは、自作の顕微鏡で細胞を観察しているが、微生物を観察することはできなかったようである。アントニー・ファン・レーウェンフックの手製、単レンズの顕微鏡観察によって最初に指摘された。彼は様々な微生物を観察し、その姿や大きさについてかなり正確に報告しているが、その報告を元に、微生物を観察できたものも少なかったようである。
カビの場合、大きいものは背丈が10cm、コロニーの直径はさらに大きなものがあるが、多くのものでは、その基本構造である菌糸や胞子形成部は1mm以下であり、やはりその構造を知るには顕微鏡が必要になる。
小さい方では、細菌の細胞は1-数µm、リケッチアなどにはさらにその数分の1のものがあり、細胞構造を保つ生物としてはこのあたりが最小であろう。
[編集] 分布
地球上のあらゆる生物圏に生息する。上空5000mから地下数km、あらゆる水圏や土壌から発見される。他の生物体内にも、寄生、共生、関係不明の多くの微生物が生息している。 微生物の中でも、一般的に生理活性が阻害されると思われる極端な温度、pH、NaCl濃度、有機溶媒そして圧力を好むものを、極限環境微生物という。