接遇
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接遇(せつぐう)とは、接客業務時における客に対する接客スキルのことをいう。
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[編集] 概要
接客業に従事する者は、「お客様」に対し、適切な態度、言葉遣いで接するよう消費者と雇用側から求められる。それらが不適切であれば、苦情の元となったり、利用客に逃げられたりし、最終的に売り上げの減収というかたちで自分達の不利益に繋がるからである。
一般に接客業務において、相手の立場や地位には一定の敬意を払って当たるものの、特にファーストフードやコンビニエンスストア・百貨店等の大衆が利用する種類の業務では、全ての人に均一なサービスを提供すると言う点で、敢えてそれらの立場や地位で差を設けない接客態度を取る業態も存在する。
[編集] クレームを招きやすい事例
クレームは客が商品やサービス内容に不満を抱いた時に発生するが、特に商品品質に問題が無い・接客態度の問題で発生した場合は、対応した従業員の態度以前に、その従業員を雇用する側の教育に疑いの目を向ける事態に発展するケースもある。こうなると幾ら商品品質が良くとも、その前駆段階で否定的に扱われるため、企業にとっては大きな損失となり得る。
以下に、よくある例を挙げる。
- 「です・ます」体が使えない
- 客が敬語で話しているのに、従業員が「・・・だよ」「・・・じゃないの」などという話し方をする場合である。とくに客と親しいわけでもない限り、適切な敬語を用いなければクレームの原因となり得る。
- 注意するときの言葉遣い
- 禁煙の場所でタバコを吸っている客に、いきなり「ここは禁煙だよ!」などと言った場合、注意していることは正当な行為なのであるが、客側が不快感を抱き、「その言葉遣いはなんだ!」と論点をすり替えて口論になり、トラブルがさらに大きくなる場合がある。
- このような場合、まず「です・ます」体を基調として喋り、推奨されるのは「恐れ入りますが」と声を掛け、それから「喫煙はご遠慮願います」という方法である。
- 無作法
- しばしば不注意や当人の性格的な理由によっても発生し得るが、顧客に対し無遠慮に振舞ったり、当然のように場に求められる作法にそぐわない場合は問題視される。
- 例えば口臭は当人には気付き難いものであるが、顧客と対面して接客する業態では不適切である。また食品や料理を提供する業態で、給仕する者が不潔感を催させる行動(頭を手でボリボリ掻いたり、洟をしゃくったりなど)も問題とされる。特に衛生さを強調すべき業態では、肩から上に手を上げる仕草をすべきではない(鼻の頭を掻くのや、顔に触れるも良くない)と言われている。
[編集] お客様は神様か?
よく、「お客様は神様である(客は崇拝すべきである)」といわれるが、実際は「お客様は王様である」というほうが近い。神様は無理な要求はしてこない。しかし、王様はそうではないのである。
また王のように振舞おうとする客は事実多い。幼稚な精神性で他の客に迷惑を掛ける客もある。だが王も人である以上、間違いを犯す事がある。それを諌めるのは廻りの人間の責任である。この場合は先に挙げた禁煙の例のように、如何に客の機嫌を損なう事無く諌められるかという技能が求められる。
特に周囲の客が不快感を催して台無しにならないよう、接客業に於いて従業員は、緩衝役として行動することが望まれる。
その一方で、企業側が客を選ぶ方針の経営もある。たとえば、企業が扱う分野の商品について知識がない者は客とみなさず説明も販売もしない、既存客の紹介者でない者へ商品の販売やサービスの提供をしない、客として礼儀がないと判断すれば取引はしない等の方針で経営している企業もある。
[編集] 接遇教習
接客業務の多い会社では、接遇教育に力をいれている。
銀行・百貨店・スーパー・航空・鉄道・官庁等で広く行われる。ただし、費用もかかるため、実施されているのは規模の大きい企業が中心である。通常、接遇教育を専門に行う企業に依頼するすることが多く、そこから講師を招いて行われる。これらの専門企業では、様々な業態で培われたマニュアルを調査、研究している。
この接遇教育では、社員同士でそれぞれ店員と客に扮して、役割演技をしたり、ビデオに録画した姿を見てお互いに批評しあったりという方法がポピュラーである。特に立ち振る舞いは、頭で解っていても行動に示し難い(照れや気恥ずかしさから、動作が抑制されてしまいがちである)ため、企業によっては新人研修などで合宿を行う所すら見られる。
業態によっては定期的に研修会・反省会を行うなどして、定期的・集中的に問題点を改善するところも見られる。