新聞奨学生
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新聞奨学生(しんぶんしょうがくせい)とは、新聞社の奨学金制度。学費の一部もしくは全部を新聞社が肩代わりする代わりに、学生が在学中に新聞配達を続けるものである。多くは、大学近辺の新聞販売店に斡旋される。
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[編集] 概要
毎月、給料が支給されるほか、寮の提供があるなど金銭面での苦労は無くなるが、夕刊配達の都合上、午後の講義が受講できなくなるなどのデメリットもある。体力や忍耐力に欠ける場合や、学業の内容によっては両立させることは非常に困難である。(極端な場合だと学業を全うできるのは全奨学生の10人にひとりとも言われる)。
各奨学会によって適応可能な学校・地域・労働条件・イベントなどが大きく異なる。夕刊の配達が課されない・新聞奨学生用の予備校が併設されている・海外研修旅行が全員にある・集金業務を免除されている・逆に勧誘業務まで強要される…といった大きな事から、各販売店毎に利用可能なシャワーが設置されている所もあったりと多岐にわたる。管理者などを除いた単なる作業員の場合、新聞販売店の業務そのものは、数ある職種の中でも楽な部類に位置する。
奨学金は、卒業まで働いていれば返済の義務は限度額を超えたもの以外基本的に発生しないが、事情があって中途退会などする場合は奨学会への一括返済が必要となる。
[編集] 指摘
各社とも奨学生制度を社会貢献として位置づけているが、読売新聞奨学生の過労死事件(読売新聞の項も参照)が発生したこともあり、労働環境は決して良好とは言えないことが多い。
新聞奨学生は経済苦の者がほとんどであり、現実的に一括返済は困難を極めるためこれに関しては日本国憲法及び労働基準法違反とされる強制労働の疑いがあるとされている。どこを選ぶかで、最後まで完遂できるか決まる事でもないが、大手には大手の問題があるし、中堅には中堅の問題もあるので一概には言えない。メリット・デメリットを見極めた上で決めるべきである。また、大手の中でも力関係が違ったりするので注意は必要だが、自分で配属先を選ぶことが出来ないどころか、奨学生希望者を一定の金額で販売所が「買い取る」制度もあるため、通学に際して配達の支障になるような遠くへの配属はないと思って良い。
奨学生のように細かいタイムスケジュールが要求される立場の場合は過酷であると言える。これは、集金作業などがエンドユーザにあたる購読者の都合にかなり影響されるためと、ブルーカラー業種の典型とも言える独特な職場が大半のためというのが理由である。(詳細については、販売店に勤める労働者や、新聞配達の記事を参照。)
[編集] 一例
一例として、1990年頃の朝日新聞名古屋本社配属の奨学生の生活を記す。
[編集] 朝
3時起床。前日に用意した折込広告の挟み込みを行い、朝刊の配達を行う。都心部では7時までに配達を終わらせればいい。汗まみれになるため、シャワーのあと自腹(食事手当ては出される)での食事を終え、学校に向かう。
[編集] 夕
16時までに配達店に戻り(この為、午後の講義には出席できない場合がある) 、19時までに夕刊の配達完了させる。
[編集] 夜
夕刊配達後、20時まで翌日朝用の折り込み広告の作成を終わらせる。月末の場合、それ以降24時程度(顧客の生活時間に合わせる)まで、集金業務を行う。
[編集] 朝
前述の通り3時起床。 休刊日を除き、休暇はない。店舗によっては勧誘まで行わされる場合がある。
[編集] 奨学会
- 朝日新聞奨学会(朝日新聞)
- 毎日新聞育英会(毎日新聞)
- 産経新聞奨学会(産経新聞)
- 日経育英奨学会(日本経済新聞)- 北海道地区:北海道新聞奨学会(北海道新聞) - 名古屋地区:中日新聞・中日奨学会(中日新聞)
- 東京新聞奨学会(東京新聞)
- 読売育英奨学会(読売新聞)