普通
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普通(ふつう)とは、特筆すべき属性を持たない状態の事。「特別」と対比される概念である。
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[編集] 用法
対象を評価する用語として使用される事が多い。文脈に応じて意味合いは変化し、必ずしも中立的ではない。
[編集] 使用例
- この場合の『普通』は、「そうする(そうである)事が望ましい」という肯定的な意味。
- 「彼女の兄は、素行の悪い妹と違って普通の人だった」
- 「こいつは一見すると普通の車だが、エンジンをレース用の物と入れ替えてあるんだ」
- この『普通』は、「何の変哲もない、良くも悪くもない」の中立的な意。
- 「せっかくの初デートに、そんな普通の格好で行くなんて、本気なの?」
- 「普通の連中に、私達の高度な発想が理解できるはずはない」
- これらは『普通』が内包する「目立たない」「特に優れてはいない」という側面を強調した、否定的な発言。
[編集] 類義語
- 通常
- 一般
- 数ある類義語の中でも、かなり意味が近い。
- 主流
- 大抵
- こちらは「多数派」である事が『普通』より強調されている。
- 標準
- 『普通』よりも「基準として望ましい」という事が強調されている。
- 平凡
- 並み
- 数は特に問題にせず、「優れている訳でも、劣っている訳でもない」という点が強調されている。
[編集] 対義語
- 異常(アブノーマル)
- 普通であるという事を肯定的に捉える者にとっての対義語である。
[編集] 「普通」に対する人々の認識
人それぞれである。「自分は普通でありたい」と願う者がいる一方で、「自分は普通と違っていたい」と望む者もいる。「普通の人が好き」な者もいれば、「普通じゃない人間との付き合いの方が楽しい」という者もいる。
何をもって「普通」とするかは、時代によって、文化によって、集団によって、状況によって、それぞれ異なる。2007年時点の日本において、高校生が携帯電話を所有する事は普通になったが、1990年代の中頃までは普通ではなかった。アメリカでは家の中で靴を脱がないのが普通だが、日本では普通脱ぐ。友人間の会話では『運動』がスポーツや筋力トレーニングを指すのに対し、物理学者同士の議論では「物体の動く様子」を指すのが普通である。ビジネスマンにとってのスーツの着用は、仕事中なら「普通」であるが、自宅のベッドで就寝する際だと「普通ではない」。
先述の通り、『普通』は肯定的な意味で使われる事がある。そのような場合、「普通ではない」とされた者の不満を煽る事があるので、『普通』の用法に慎重さが求められる事もある。英語圏で、ポリティカル・コレクトネスの一環として異性愛者を「ノーマル」ではなく「ストレート」と呼ぶようになったのも、その一例である。
『普通ではない者』は、時に攻撃の対象となる。調和を乱す、足を引っ張る、利益を損なうといった理由で、集団から排斥される。これは人間に限った話ではなく、他の動物にも見られる事象である。人間社会において、他の集団から見て理不尽にも思える排斥が、俗に「差別」と呼ばれる。逆に『普通ではない者』ものが賞賛の対象になる時もあり、その集団にとって望ましい結果を残した者、残しそうな者、または特に貢献はせずとも優秀な者などは、集団内で優遇される。この傾向も、人間社会だけの話ではない。
『普通』には厳密な定義が存在しない。それ故、自分の視野を基準にする者、他人の基準をそのまま受け入れ自分の基準とする者、どのようにも定義しない者など、さまざまな勢力が出来上がる。