普通列車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
目次 |
[編集] JR
[編集] 概要
JRにおいては、特急料金・急行料金が不要な旅客列車を「普通列車」といい、各駅停車とは意味が異なり、すべての駅に停車するとは限らない。
普通列車のうち、通過駅が多い列車を旅客案内上、快速列車と呼ぶ。フリーきっぷなどで「普通列車(快速含む)」とあるのはこのためである。
特急・急行は乗車券の他に特別急行券または急行券が必要となるが、普通列車(快速列車を含む)は普通車の自由席であれば乗車券のみで乗ることができる。
また、特急・急行は定期乗車券(定期券)では乗車できないことが原則であるのに対して、普通列車は原則として定期券でも乗車可能である。但し、「ムーンライトシリーズ」と称される夜行快速列車群など全車座席指定制の普通列車など、定期券では乗車できないものもある。
[編集] 運行実態による使い分け
「普通」という列車種別は、通常、各駅停車と意味は同じだが、路線によっては、都市間輸送としての本線と、通勤路線(緩行線や電車線など)を分けている場合があり、「普通列車」は本線を走る列車、「各駅停車」は通勤路線を走る列車という使い分けがある。
例えば、「湘南電車」と通称されることがある東海道本線の下り「普通列車」は、品川を出ると次は川崎に停車するが、電車線である京浜東北線の「各駅停車」電車は、品川の次は大井町に停車する。品川 - 川崎間では、「普通列車」は大井町、大森、蒲田の3駅には停車しない(ホームも設けられていない)。
2004年10月16日のダイヤ改正前の常磐線の場合では、東京地下鉄千代田線に直通する常磐緩行線を運行する列車を「各駅停車」、上野駅~取手駅間の常磐快速線を運転する列車を「快速電車」といい、取手駅以遠の交流電化区間に乗り入れるいわゆる中距離電車を「普通列車」(普通電車)といった。これは、以前は「快速電車」とは別に、いわゆる中距離電車にも「快速列車」や、定期列車としても「通勤快速」が設定されていたことにも因る(通勤快速は2006年3月18日改正を以って廃止)。また、当時は快速電車と普通列車で停車駅が異なった(快速電車の方が普通列車より停車駅が多かった)こともあり、それを区別する意図もあった。なお、両者の停車駅は2004年3月13日に統一され、それに伴って同年10月16日以降は中距離電車も電車特定区間(上野~取手)では「快速」と称するようになった。特にこのような例での普通列車を「中距離普通列車」(俗称:中電)等ということがある。
短距離の路線や地下鉄などにみられる系統の区別がない路線では、全ての駅に停車する電車の名称は大抵各駅停車である。
なお、地域によっては普通列車でも特定の駅を通過する場合があり、極めて需要が少なく、通勤時間帯等にしか乗降が見込めない駅は、たとえ普通列車でも通過する場合がある。このような列車は、需要の少ない地方での路線にいくつか存在し、特に北海道の仮乗降場起源の駅などに多い。
たとえば、磐越西線の堂島駅、笈川駅、姥堂駅、会津豊川駅には、普通列車と言えども一日4本(休日は3本)しか停車せず、只見線の田子倉駅には、冬季期間は利用者が極端に少ないため普通列車を含む全部の列車が停車しない。またJR宝塚線の塚本駅には大阪駅始終点の新三田方面行き電車が外側線を走るため朝と夜の一部の電車が停車しない。
国鉄時代はホームの長さの関係から、気動車しか停車しない駅が存在した。
[編集] 日本のその他の鉄道
旅客列車の列車種別の一つであり、多くの場合各駅停車である。ただし、かつて存在した京成本線の博物館動物園駅や神戸電鉄有馬線の菊水山駅などJRと同様に駅施設などによりやむなく停車する列車が限られる場合には一部の普通列車が通過する場合もある。なお、駅の行き先表示板や列車の種別指示幕において「普通」と記載されていても案内では「各駅停車」と案内される場合もあり得る。(東武鉄道など)
なお、私鉄の場合、たいていの会社では上に記したとおり優等車両を保有しないことから、普通列車・各駅停車を「普通車」を称する場合がある。そのため、この場合いわゆる特別席のそれではなく、特別急行列車など優等列車に対しての普通列車という意味合いが社内で慣例的に用いられているとされる。
関西地区では慣例として「普通車」という表現が多く使われており、今でも南海電気鉄道や山陽電気鉄道では案内放送などで用いられている。
例えば、山陽電気鉄道では、各駅に停車する列車のことを「普通車」と呼ぶ。同社では、「各駅停車」・「普通」という表現は一切用いられず、「各駅停車」「普通」に代わる用語として用いられている。ただし文字表示では「普通」が使われ「各駅停車」・「普通車」は用いていない。ちなみに同社の優等列車には特急・S特急・直通特急があるが、いずれも、特急料金は設定されておらず、乗車券のみで利用できる。また、座席のランク付けも存在しない。
また、南海電気鉄道では、難波駅~岸里玉出駅間の複々線の西側2線を南海本線、東側2線を高野線が使用しているが、途中の今宮戎駅と萩ノ茶屋駅は、南海本線の列車が走る西側2線にホームがない。このため、両駅を通過する南海本線列車は「普通車」、両駅に停車する高野線列車は各駅停車と使い分けている。1968年までは、南海本線の列車にも東側2線を走り両駅に停車する「各駅停車」、1970年までは高野線の列車にも東側2線を走るが両駅を通過する「普通車」があった。
関東では京浜急行電鉄が「普通車」という表現を用いる場合がある。同社では優等列車としてウィング・快特・特急・急行があるが、定期列車として乗車制限を設けている「ウィング」以外は特別な料金が設定されておらず、ウィングも快特と同じ2100形電車を使用しているため、座席のランク付けも存在しない。