株主総会
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株主総会(かぶぬしそうかい)とは、株式会社における最高の意思決定機関をいう。
日本では、会社法・第2編株式会社・第4章機関・第1節株主総会及び種類株主総会(第295条~328条)(旧商法・第2編会社・第4章株式会社・第3節会社の機関・第1款株主総会(第230条ノ10~第253条))で規定されている。
目次 |
[編集] 概説
1株以上(定款において1単元の株式数の定めがある場合には1単元以上)の株式を有する株主によって構成される。
決算期毎に、定時に開かれる定時株主総会と、合併など重大な決定事項の発生する際に臨時に開かれる臨時株主総会がある。
日本に多い3月期決算の会社の場合、6月下旬に定時株主総会が開催され、集中日と呼ばれる6月27日頃の特定の日に多くの会社の定時株主総会が開催される。これは、旧商法で決算日から3ヶ月以内に総会を開催しなければならず、かつ監査の日程等により6月後半になりがちであるという理由と、総会を特定の日に集中させることで、総会屋の出席をしにくくし、総会を円滑に進める(後述しゃんしゃん総会参照)目的があった。しかし、会社法では上記の3ヶ月要件が撤廃され後述の通り集中日開催の場合にその理由の説明義務が課されたため、今後は集中日以外の日の総会開催が期待される。また、近年では総会屋の活動が弱まったことや、株主総会を、会社をアピールする舞台としてとらえることが多くなったために、サラリーマンなどの一般個人株主にも出席しやすい土曜日や日曜日に定時株主総会を開く会社が多い。この様な会社は、特に株式を公開してから期間の短い、比較的新しい会社を中心に増加している。
2004年の例では、東京証券取引所に上場している3月期決算企業の64%が6月29日に株主総会を実施したが、集中日開催がピークに達した1995年の96%から大幅に減少し、実施日の分散化が進んでいることを示している。
なお、2006年5月に施行された会社法においては、同法が委任する法務省令(会社法施行規則)により、公開会社が株主総会の集中日(これも公開会社が開催するものの集中日に限る)に総会を開催したり、それ以外の会社であっても、定款の定めや全株主の同意なくして、過去に開催した場所と著しく離れた場所で総会を開催するなどの場合は、招集通知においてその理由を説明することを義務付けられている(会社法施行規則63条1号ロ、63条2号)。
[編集] 株主総会の権能
[編集] 日本
株主は実質的な会社の所有者であり、その株主からなる株主総会にあってはおよそ会社に関することであればいかなる事項についても決議できる(株主総会の万能機関性)とも思えるが(1950年(昭和25年)改正以前の商法はそのように規定していた)、企業取引における意思決定の迅速さの要請から、株主総会の決議事項は商法および定款の定める範囲に制限されることになった(旧商法第230条ノ10)。もっとも、株主において迅速な意思決定を放棄するのは自由であるから定款に定めることで会社の本質に反しない限りにおいてその権限を拡大させることもできる。
なお、会社法においては、同法施行前の株式会社に相当する会社(取締役会設置会社)については旧商法においての規定がそのまま引き継がれたが(295条2項)、同法施行前の有限会社に相当する会社(取締役会を設置しない会社または特例有限会社)については、株主総会の決議事項についての制限はない(b:会社法第295条1項)、。
[編集] 諸国
アメリカやドイツ、フランスの株式会社においても株主総会の権能については日本と同様である。
[編集] 招集手続
旧商法においては、原則として、取締役会の決議に基づいて代表取締役が招集するのが通常であったが、会社法においては(取締役会の設置自体が任意となったため)取締役が招集するとのみ規定されている(会社法第296条3項)。株主に出席の機会と準備の時間を与えるため、会日より2週間前に招集通知を発しなくてはならない(会社法第299条1項、旧商法第232条第1項)。
開催場所は、旧商法第233条の規定で、本店(本社)の所在する市区町村か、隣接する市区町村に限られていたが、会社法においてはどこでも開催可能になった(298条1項1号)(大阪に本社のある会社が東京で株主総会を開催することも可能。但し定款で開催場所を限定することも可能。)。ただし、上記のとおり、会社法施行規則の規定により、株主総会の開催場所につき理由説明を要する場合があるため注意が必要である。
6か月前より総株主の議決権の100分の3以上の株式を有する少数株主も会議の目的、招集の理由を書面で取締役に提出して招集請求ができる(会社法第297条1項、旧商法第237条)。なお、保有期間の要件は定款で短縮可能である。招集請求後に取締役が株主総会の招集を怠った場合は裁判所の許可を得て株主自ら総会を招集することもできる(会社法297条4項)
特に株主数の多い株式公開会社の場合、会場としては会社社内の施設(大会議室、本社工場の体育館など)や社内に広いスペースが取れない場合には、広いスペースが確保できる近在大型ホテルの宴会場、イベントホールなどで行われることが多い。
[編集] 決議方法(議決権行使)
[編集] 定足数など
各株主(議決権制限株主および当該会社自身を除く)は、1株または1単元株毎に1票を有し、通常は多数決によって議事を決する(b:会社法第308条、b:会社法第309条)。ただし、会社法が定める一定の事項については特別多数による決定(特別決議(会社法309条2項))または特殊決議が要求される(会社法309条3項4項)。なお特殊決議は会社法により初めて定められた決議方法である。
定足数 | 決議要件 | |
普通決議 (309条1項) |
「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」
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「出席した当該株主の議決権の過半数」
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役員(取締役・会計参与)解任の決議 (341条) |
「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」 ※定款で別段の定めをしうるが、3分の1以上でなければならない |
「出席した当該株主の議決権の過半数」 ※定款で別段の定めをしうるが、過半数を上回る場合でなければならない。 |
特別決議 (309条2項) (監査役の解任など) |
「出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数」 ※定款で別段の定めをしうるが、3分の2を上回る場合でなければならない。 |
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特殊決議 (309条3項) (公開会社が非公開会社に定款変更する場合など) |
規定なし | 「議決権を行使することができる株主の半数以上かつ当該株主の議決権の3分の2以上」
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特殊決議 (309条4項) (非公開会社において剰余金配当・残余財産分配等につき株主ごとに異なる取り扱いをする規定を置く場合) |
規定なし | 「総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上」
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[編集] 電磁的による議決権の行使
議決権行使の投票については2002年の商法改正で、インターネットによる投票も可能になり、2004年にはソニーや川崎重工業、NTT、NTTドコモ、日興コーディアルグループ、三井トラスト・ホールディングスなど14社が携帯電話による投票もできるようになった。
[編集] 総会屋
株主総会において株主としての地位を利用して不当な利益を得ようとする者をいう。会社から利益を与えられて、株主総会を短時間で終わらせる調整・根回し等に努める与党総会屋と、株主総会の妨害を予告して会社から利益を得ようとし、得られない場合には株主総会を妨害しようとする野党総会屋に分類される。
これらの総会屋の存在は、一般の株主の権利行使の妨げとなることが多く、利益供与の禁止(会社法970条、旧商法第294条ノ2)などにより、総会屋対策がなされている。
[編集] しゃんしゃん総会
総会屋対策の為、あるいは会社の方針を株主に非難されるのを避ける為、議事進行を故意に早める総会の俗称。総務部などの持ち株社員が総会の席の前面を陣取り、会社側の説明に大きな拍手や「賛成!」などの大きな声で議事を早く進める。他の株主の意見はかき消され、総会は1時間以内に終わることが多い。
この様な総会はオーナー会社に多く、オーナー以外の株主も株価の変動差益にしか興味を持たないため起こり得る日本独特のものであるが、株主総会の本来の意義からは大きく逸脱し形骸化しており問題視されている。
[編集] 株主総会における株主へのサービス
個人株主を重視する会社の株主総会においては、会社の企業活動のアピールのために、色々な特典を用意して、株主が参加してもらえるようなサービスを行なっている。主なサービスには以下のものがある。
- 会社説明会の開催
- 総会後、会社の事業内容について知識のあまりない個人株主に対して、事業活動や組織について噛み砕いて説明する場を設ける場合がある。とりわけ、一般消費者になじみ(接点)がない生産財・中間財メーカーなどが積極的に行っている。
- 懇親会の開催
- 総会後、飲食接待を行なう。その場で各役員が、各株主と直接対話する場合も多い。また、飲食業(外食産業)を営む会社では、会社の商品を試食してもらうために提供する場合もある。ゲームソフトの会社では総会中に同伴の子供が自社ソフトのプレイを楽しめるようになっていたり、終了後に新商品の試用ができるようになっていたりする。
- コンサート