格式
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格式(きゃくしき)とは、律令の補完の為に出された法令あるいはそれらを纏めた法令集の事を指す。格(きゃく)は律令の修正・補足のための法令(副法)を指し、式(しき/のり)は律令の施行細則を指した[1]。
ただし、中国と日本・朝鮮では、その運用方法が異なっていた。中国では律令編纂と同時にその不足を補う意味で編纂・施行が行われたのに対して、日本では律令編纂後に詔勅・太政官符の形式で追加された法令を後日纏めて編纂する形が取られた。また、格に関しても中国では唐の滅亡後は官人資格などを定めた限定的な法律に縮小されていくのに対して、日本では養老律令以後新規の律令が全く作られなくなったために格の占める比率が高くなり、律令による規定そのものを否定する法令(例:墾田永年私財法)さえも格の形式によって出されるようになった。このため、式が格の施行細則を規定する場合も見られるようになり、平安時代中期以後は律令法に基づいた律令政治という体裁を取りながらも実態は「格式政治」であったと言われている。また、朝鮮では律令そのものは唐の律令を受容しつつも格式によって国情に合わせた法体系に修正していった。
格の法典としての体裁は、個々の単行法令を事書きや発令日などを含めてほぼ原文のまま記載して関係官司ごとに配列している。また、式は行政法である令の施行細則のみならず後にこれを補うために設置された令外官設置の根拠法規(検非違使設置を定めた「検非違使式」など)としても用いられた。なお、式に準じたものとして例が挙げられる。
[編集] 補注
- ^ 唐の律令には律を「生刑定罪」・令を「設範立制」・格を「禁違正邪」・式を「軌物程事」と定義し、日本の弘仁格式の序文に「律は懲粛を以って宗とし、令は勧誡を以って本とし、格はすなわち時を図って制を立て、式はすなわち闕を補って遺を拾う、四者あいまって範を垂るるに足る」と記載されて以来こうした解釈が一般的であるが、同序文には重ねて「過去の法令の中で個々に発令されてきた単行法令の中で奉勅を得たもの及び事の旨がやや大きいために(今回の編纂に際して)改めて奉勅を得たものを格に置き、それ以外の恒例とするに足りるものを式に採り入れた」と記しているなど定義づけに混乱も見られる、このため同一の法令を「格」と呼んだり「式」と呼んだりする例も存在している。